表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/146

【Chapter/35 電撃作戦!】その2

 彼女の気持ち……私にも分かる気がする。何千年もたった一人の大切な人を待っていられることが、少し羨ましかった。そんなに素敵な人に巡り会えたんだーってさ。

 イリヤは渚の手をギュッと握った。艦内には警報音が鳴っており、作業員が慌しく動き回っている。


「イリヤ、私のこと分かってくれてありがと」

「分かるっていうか、羨ましいの。そんなに素敵な人に出会えて」

「神名くん、優しかったから……。ずっと、好きだったから」

「渚のこと、応援しているからね。あなたは私が守る。だから、神名くんと幸せになってね、お願い」

「イリヤにはいないの?」

「私はそういうの、ずっと前に失ってしまったから……」

「行きましょ。出撃よ」

「うん!」


 イリヤは無邪気な顔で、渚に微笑んだ。イリヤにとって、渚は初めての友達だったのだ。彼女の人生の中では、そのようなものを作る時間さえなかったのだから……。

 イリヤはアグラヴァイのコックピットに入り、起動させる。鈍い起動音がハンガーに響く。


「発進する。第一アヌヴィス隊は私に続け!」




 敵はアヌヴィスが二十一機にアグラヴァイとマキナヴだ。その内、先行したアヌヴィスが三機、クシャトリア向かってマシンガンを構えて撃つ。クシャトリアは高速移動形態を解除し、脚部のバーニアの出力を上げて、マシンガンの炎を回避する。その回避運動が少しでも遅かったなら、今頃クシャトリアは蜂の巣になっていただろう。

 そう考えると、クロノは少し怖くなった。自分はこんなに危険なことをしているのだな、と再認識をしてしまう。


「ったく、腕が鈍っている……ッ! でもさ、こんな所で死んじまちゃあ、アスナに合わせる顔が無いってよ!」


 クシャトリアは横に一回転し、脚部のミサイルポッドの照準を三機のアヌヴィスに定めた。


「せめて二機には……当たれよ!」


 そして、クシャトリアのミサイルポッドが火を噴く。射出されたミサイル軍は三機のアヌヴィスに直撃。そのうちの一機は胸部を爆散させる。残りの二機は健在だが、まともに動けるものは無かった。

 クロノはそれを見て、右手の親指を軽く弾いた。


「ビンゴッ! ダブリス級、先行の部隊は撃破した。目標ポイント到着まであと何分だ、ソウスケ?」

「五分三十七秒! クシャトリアも戦艦の方の目も逸らしておいてくれ。こちらが粒子砲を撃つことに気づかれないように……な」

「ああ、分かった! おっと……敵さんは結構な戦力をお持ちのようで」

「何機いる?」

「肉眼では七機ぐらいかな? レーダーにはその倍の数だ」

「死ぬなよ……」

「それが、死亡フラグって言うんだぜッ! クシャトリア、回避行動を続行。出力を抑えて、それをブーストに使う!」


 クシャトリアは右翼を持ち上げて、アヌヴィスの砲撃を軽々と回避する。しかし、そこにアグラヴァイとマキナヴが現れた。アグラヴァイは大剣をクシャトリアに向かって振りかざすが、機動力のあるクシャトリアの前には通用せず、空振りに終わってしまう。

 クロノは後ろに気配を感じた。マキナヴの両腕が分離し、それぞれが一機のアテナのように飛び回り砲撃を開始する。ギリギリのところで回避を続けるクシャトリア。クロノの心臓の鼓動は高まるばかりだ。


「二対一……いや、それ以上だな。こいつが一騎当千なのかよ! そんなことができるほど、俺のクシャトリアはスペック高くないんだけどなぁッ!」

「クロノ! 作戦のフェイズ2だ。一分後にダブリスのソヒィスティケイティッド・クラッシャーを放つ。回避行動を優先して、その場から離脱」

「早いじゃないか、ソウスケ! こっちも背負う荷が、早く置けて楽になったぜ。クシャトリア、作戦領域から離脱する! 頼むからほおっておいてよ、お二人さん……」


 クシャトリアは近くの山脈の影に隠れた。クロノの願ったとおり、アグラヴァイとマキナヴは追ってこなかった。


「さて……俺の仕事は終わりだ。ったく、寿命が縮まるっての」

「お疲れ様です、クロノさん」

「アリューンか……回線は常時、開けとくんじゃなかったの?」

「そんなことしたら、艦長に怒られますよぉ」

「ははは、アリューンらしいよ。後はミナトちゃんが上手くやってくれたら、いいんだが……。まぁ、信用はしているよ」

「大丈夫ですよ。ミナトちゃんはああ見えて、すっごく仲間思いなんですから!」


 それを聞くと、クロノは微笑した。そして、操縦桿を再び、握り締めた。もう、新しい操縦桿の感触に慣れてしまっているようだ。そう考えると、クロノは自分自身の適応性の高さが妙に可笑しく思えてしまう。


「後は頼んだぞ……ミナト」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ