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【Chapter/29 アスナ】その1

 いつのことだったのかな……?


 私は少し前までは普通の小学六年生だった。普通の家庭で育って、友達もできて。ちょっと生意気な妹(でも、そこが可愛い)もいて。普通すぎてつまんなかったぐらいよ。あの時までは……。

 ある日、私は見知らぬ男たちに連れて行かれた。目が覚めた処は見知らぬ天井。面会施設のような所だった記憶があるわ。私は鉄パイプのイスに座っていた。両手には手錠がかけられていたの。そして、目の前には両親がいたわ。二人とも、申し訳なさそうな顔で俯いている。


「ねぇ……これはどういうこと? ねぇ、ママ? パパ? なんで私、こんなところにいるの? 手錠外してよ! 家に帰らせてよ! 明日は友達と遊びに行くんだよ? 着て行く服とか選ばないといけないんだよ? だから出して! ここから出してよ! ねぇ!」

「すまない……お前は軍事兵器のパイロットになるんだ。それ以外は私も知らない」とパパ。


 軍事兵器のパイロット? それって人型? ゴウガンナー?


「あなたは特殊兵士になるの。これも政府に強制されてることなのよ……。ごめんね……。私、アスナちゃんのお母さんで良かったわ」とママ。

「ちょ……何言ってるの! 冗談じゃないわ! 私は!」


 その時、近くにいた兵士が私の腕を掴み、注射を打った。睡眠薬らしく、私の意識は段々、遠のいていく。


「約束の金は?」

「ええ……人一人の命をお金に換算するのですから……。たっぷりと支払わさせていただきますよ」

「よかった……これで生活の足しになるわね」

「俺も仕事、早く見つけるよ」


 え……私、売られたの?


 私は両親に売られたことに気がついた。実の親よ? そんなことができるの? でも……私の家、結構貧しかったから考えられないことは無いわ。いいえ、そうしないと生きていけなかったかもしれない。そのために私を……売ったのね?

 そんな事の為に私の人生は壊れたの?

 でも、これで未練は無くなった……。大人なんて汚い者よ。自分勝手で都合や身分、立場を考えて行動する生物。だから、信じない。バカばっかの大人は信じない!


 絶対に信じない……。そう私は決めていた。


 あの人に出会うまでは……ね。




 オリンストの目の前に現れたのはイフリートだった。両肩にはかなりの大きさをした銀色のシールドを装備していた。追加装備であろうか。


「敵……あの赤いやつ!」

「アスナさん!」

「ナギサ、説得してくれ! 俺はそれまで時間を稼ぐ!」

「レーダーが使えなくなりますよ!」

「一対一なんだろ? だったら必要ないさ!」


 オリンストが両腕に光の剣を発生させて構えると、イフリートは胸部の粒子砲をオリンストに向けて放った。オリンストはそれをAフィールドで防ぐが、その威力に耐え切れずオリンストは跳ね飛ばされてしまう。


「ぐッ! グラディウス・アロー!」


 オリンストは左手にグラディウスアローを発生させてイフリートに向けて放つ。しかし、頭部を狙ったその矢は簡単に避けられてしまう。


「ごめんね……ショウとナギサ……。私には守りたいものがあるのよ!」

「もうやめてください! 私たちが戦う理由なんてどこにも無いじゃないですか! あの時は簡単に分かり合えたじゃないですか!」

「それがあるのよ、私には! 確かにあの時は分かり合えたかもしれない。でも、もう分かり合えたとしても、遅いの! 私は浸食現象で体がめちゃくちゃなの!」

「そんな……でも、あの時のように!」

「じゃあ、今やってよ……無理でしょ? だったら私はあなたのことなんか知らない! あんたなんか知らない!」

「そんなッ! アスナさんは!」

「聞こえない! 聞こえない! 聞こえないッ!」


 イフリートはオリンストに向かって突貫し、右手の刀を振りかざす。しかし、それは簡単に避けられてしまう。再度、イフリートはオリンストに切りかかる。Aフィールドで防いだオリンストだが、イフリートの押しに負けてしまい体勢を崩してしまう。その隙にイフリートの両肩のシールドが分離して、それをオリンストにぶつけた。体勢を立て直したオリンストは胸部を開き、粒子砲を放つ。しかし、これはイフリートの二枚のシールドによって防がれる。そしてオリンストの粒子砲は弾かれて、オリンストの右肩をかすめた。


「ビームを弾く! しかも、脳波コントロールできる!」

「くそッ!」


 オリンストは両手に光の剣を発生させてイフリートに切りかかるが、それもイフリートのシールドに阻まれてしまう。そして、その隙にイフリートは両腕の刀でオリンストの胸部を切り裂く。オリンストの胸部は粒子砲の発射口がむき出しになっている。


「戦わないで……戦わないでソウスケさんを守る術だってあります! だから……」

「オリンストを倒せば、ソウスケは出世して司令部のほうに入れるかもしれない……。そうしたらソウスケは死なない! 一生、幸せに暮らせるの!」

「あなたは!」

「私はどうなってもいい! ただ、ソウスケが幸せになれるって知っていただけで私は十分幸せよ。私は死んでもいいよ……。死んでしまうから!」

「ナギサ……もうやめろ。彼女は助からない」


 ショウは口を開いた。


「ショウ先輩! 何でそんなことを言えるのですか!」

「俺だって、殺したくないさ。でも……彼女の決意は変わらない」

「でも……でもッ!」

「黙ってろ! ラグナ・ブレードッ!」


 オリンストは右腕にラグナブレードを発生させてイフリートと向き合う。


「本気……なのね。だけど、私の想いは変わらない! オリンストを撃つ!」

「仕方が無い……俺にも守るものがある。ここで死ぬわけにはいかないんだ!」

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