【Chapter/25 蒼い星にて……】 その2
「で……なんでこんな所に行くんだよ」
「ショウ先輩に似合う服を探さなきゃいけないですし!」
「…………」
現在、ショウとナギサとシュウスケ、それにミナトとサユリを加えて市街地の洋服店にいた。ショウはいつもながら地味な服だ。
「あ、これいいかも!」
「これは女物だぞ……」
ナギサはフリルのついた短いスカートをショウに渡した。
「メイド服が似合ったんだからこれも大丈夫だろ」とシュウスケ。
「うるさい!」
ショウは茶化したシュウスケを殴る。
「まぁ……ここまでくると気持ち悪いの領域に入るわね」とサユリ。
「地味にダメージを食らったよ」
ずんと落ち込むショウ。
「……もう、男として見られなくなるわ。ま、それはそれで面白いからいいけど」とミナト。
「自分が男なのか分からなくなるよ……」
ショウは同意した。
「これはどうです? ……て、あれ?」
ナギサはショウを見失った。ショウは隙を突いて逃げ出したのだ。このままだと性別まで変えられそうな気がする。そう、ショウは考えた。そして、試着室の近くでナギサが遠くに行くのを待つ……。
「ったく……ソウスケってば」
ショウの耳に聞き覚えのある声が聞こえてきた。その時……!
「見つけましたよ!」
「うぐッ! やめろ離せって!」
ショウはナギサに捕まえられてもといた場所に連れ戻されてしまった。
「あれ? 誰かさっき……」
「どうした?」
「うんん。なんでもないって! さ、ここの近くに観覧車があるから行きましょ! ね、ね!」
アスナは後ろに気配がしたのだがそれは気のせいだと感じ、ソウスケを引張って観覧車のほうに向かった。ここの観覧車はカップルがよく乗るらしい。所謂、デートスポット。まぁ、二人とも付き合ってはいないのだが……。(アスナ曰くに荷物持ちのためにソウスケをつれてきたらしい)
そして、ソウスケとアスナは観覧車に乗った。段々、上がっていく。市街地が一望できるほどの高さにまで来たとき、ソウスケの隣に座っていたアスナは口を開いた。
「こんなこと……多分もうないね」
「……そんなことないよ」
「私……もう一回しか戦えないんでしょ? 後、一回戦ったらあの試作量産型に乗ってた女の子のように弾けて死んでしまう……」
「なら、もうアスナは戦わせない。僕が必ず守ってみせるから」
「ありがと……そう言ってくれると嬉しい。こんなやつに言われているのに……なんでだろ?
嬉しくなってくる。好きじゃないのに……嘘、大好き」
「ありがと。そんなこと言われるの初めてだよ」
「私、嘘つきだよね。好きなのにソウスケにちょっかいばかりかけて……自分の中では好き、好きと思っていても行動はその反対を行く。後で思うんだ……「嫌われてないかな? 嫌われてないかな?」って。いつもソウスケに気持ちを伝えられなかった。でも、やっと伝えられた。嬉しいよ」
「…………」
ソウスケは無言でアスナを抱いた。それが刹那であっても二人には関係ない。その刹那を永遠のように感じていたのだ。背景は暗くなり、夜の街に光が灯される。明るく優しい光。それさえも二人に近づくことはできなかった。
「今日からソウスケは奴隷じゃなくて彼氏ね……」
「俺って最初はそんな扱いだったの?」
「そうよ。そんな感じ」
「ひどいなぁ……。ま、主がこんなんだと奴隷も働き甲斐があるけどな」
「それ、どういう意味?」
「いいえ、何でもありませんよ。ご主人様」
「気持ち悪いからやめてよ……ソウスケらしくない」
「そっか……」
守らないといけない。この一戦艦の艦長の僕にできることなんて知れてる。だけど……彼女を見ているとできないことでもできそうな気がする。勿論、俺はアテナには乗れない。変わってやることもできない。だけど、乗らずに敵を倒すことはやれる気がする。オリンストさえ落とせば……。
「もう少し……こうしててもいい?」
「好きなだけどうぞ……」
【次回予告】
彼らに安らぐ場所は無いのだろうか?
戦い続ける少年と少女。
たどりつく処を知らず……。
いつ終わるのかも知らずに……。
次回【Chapter/26 僕たちの行方】