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【Chapter/2 ペイン・バック】その2

 ショウは昼飯を済ませるとこの艦の艦長のところに行くことにした。とは言っても『栄養クン』だけだったのだが……。

どうやらショウが目覚めた所は『ダブリス級』と呼ばれる中枢帝国の新型艦の医務室だったらしい。あの巨人を追ってこちらに来たという。ちなみにあの巨人は中枢帝国の所有物だと聞いた。


 今のショウに分かることはこれぐらいだ。


 ショウはこの艦の艦長のいる艦橋に直々に呼び出しされた。

 途中、ナギサとすれ違った。ショウを横目で見てすぐに視線をはずす。その瞳はすこし申し訳なさそうだった。ショウは謝ろうと思ったが、そう決めたときにはもうナギサの姿はなかった。

 あれからショウは後悔している。理由はどうであれ、女の子の顔を平手で叩いた事は大罪だ。ただし、怒った理由は悪いとは思っていなかった。自分の事をなにも分かっていない奴にエラソーに説教されるのがそこはかとなくムカついたにのだ。

 ショウは艦橋の中に入った。中は普通の戦艦の艦橋とは違い、明るかった。それ以外は普通の戦艦とは少しも変わらない。


「あの〜艦長は……」

「ここだが」


 急に現れた五十代前半ぐらいの髭を生やした男性にショウは少しひるんだ。彼は手にコーヒーを持っている。ブラックのようだ。


「あなたが……俺を呼び出したのですか?」

「ああ、私は駆逐艦ダブリス級の艦長、ヘーデ・グラムスだ。よろしく。で、質問はあるか? 初めての事で頭がいっぱいだろう」


 どこか聞き覚えのある名前だったがショウはそれをあまり深く気にせずヘーデに聞いた。


「あの巨人はなんですか?」

「あれは君とナギサの『アテナ』だ」

「アテナ?」

「ん〜まぁ要するに君とナギサが操縦する巨大ロボット……てところか。こちらもアテナと呼ばれる存在がしっかりと把握していないんだよ。まぁ、君とナギサは鍵と鍵穴のようなものだ」


 ヘーデは天井を見上げため息をし、飲みかけのコーヒーを置き、話を続けた。


「現在、あの巨人はナギサの中にいる。鍵穴だけでは中の物は取り出せない、鍵があるからこそ中の物が取り出せる。その鍵が君だ……。あぁつまり、こちら側でもよく分からないものを持っている。それを敵さん方は欲しがっているということだな」

「で、そんな奴らを俺があの巨人を使って倒せと?」

「……そうだ」


 今まではすこし力の抜けた顔だったヘーデの顔に力が入った。


「いやです……て言ったら?」

「それは君の自由だ。しかし、戦わないと君はいずれ中枢帝国の奴らに殺されるだろう。秘密保持の為に」

「脅しですか?」

「警告だ。君が死んだら君を助けたお兄さんの努力が水の泡だ」

「わかりました。戦えば良いんでしょ、戦って戦って戦って、傷ついて傷ついて傷ついて、死ねばいいんでしょ!」


 ショウはヘーデを鋭い目で睨みつけた。


 また、兄貴のことを出しやがって!


 ショウはまた自分の事を知らない奴に干渉された。ショウにとって兄の存在を出されるのが嫌だったのだ。アスカはなんで自分の為に命を捨ててまで助けてくれたのか。どうせ、兄だからとかそういう風な理由であろうとショウは思っていた。

 俺がいなかったならもっと兄貴は幸せに暮らせてたんだ! 兄貴は俺よりも頭が良くて……カッコよくて……優しくて!


「死ぬ前提で戦う兵士などいらん」


 ヘーデは冷たく語る。


「なら、中枢帝国の奴らに殺されても良いです。どちらにしても俺には生きる意味はありませんから。あなた方が俺を必要としても……それは単なる大人の汚い事情なんでしょ?」


 ショウは開き直る。

 そうショウは言うと彼は艦橋から出て行った。早足で。その一歩一歩にはち切れそうな怒りを込めて。

 また、ショウはナギサとすれ違った。ナギサはショウを見て「ごめんなさい……」と呟いたが、それをショウは聞き流す。

 今はそんな気分ではなかったのだ。


 戻りたい《いつも》に……。




「ヘーデさん、私一人では無理なのですか……」


 ナギサはヘーデを見詰め言った。


「オリンストは君の中に入っている。それを呼び出すにはショウくんが必要だ……」

「私のせいで……」

 俯くナギサを見たヘーデはナギサの顔をそっと手で前を向かせ、優しい言葉で「彼もそのうち分かる」と呟いた。


 ナギサは涙をグッと堪える。

 私がいけないの。ナギサは後悔していた。

 あの時、何故アスカに契約を求めたのか。そして、なにがきっかけでオリンストの事を思い出したのか。

 もしかすればあの時、自分が記憶を取り戻していなかったならば二人の運命は変わっていたのかも知れない。……そうだ。

 私はオリンストのコアのはず。だから……。

 ナギサはその後の言葉が思い浮かばなかった。


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