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【Chapter/22 白銀と紅蓮】その2

 その時、オリンストの背中から白銀の光の翼が現れ二機を包み込んだ。ショウには何が起こったのか分からない。オリンストを動かそうとしても硬直したままで操縦できない。イフリートも同様だった。


「くそっ! 動かない! 動け動け動けよ!」

「ダメです! こちらからの信号を一切受け付けません!」

「そんな……」


 そして、ショウの目の前は純白に包まれる。




 一方、ダブリス級ではガレスがヒット・アンド・アウェイで突貫してくるため中々。攻守交替をすることができなかった。ヴァルキリー級もグリムゾン級の集中砲火を受けている。このままだと二隻とも沈んでしまう。そんな不安がダブリス級の艦橋内を通りすぎた時だった。ミナトは決意した。


「……流麗のダブリスを出して。私が乗る」

「やめろ。お前は……」


 ヘーデは呟く。しかし、ミナトは諦めない。


「……このままだとみんな死んでしまう」

「…………」


 そう、私が今戦わないとみんな死ぬ。私はずっと思ってた。ショウやナギサがアテナのコアで必死に戦ってきた。それを見ていた私は力があるのに戦っていないことに無常さを感じていたの。なんで私だけ? いつもそんなことを考えていた。いつも、いつも、いつも……。悲しみではない、申し訳なささでもない、ただ自分だけが傍観所という立場に腹立たしかったの。必死に戦っているのを見ている自分に。だから……変わらなきゃ。


「……それでもいいの?」

「ミナトちゃんは苦しんでいるの! 分かってあげて!」


 サユリは言った。


「わかった。流麗のダブリスを使う。ミナト……頼んだぞ」

「……了承」


 ダブリス級は変形を開始する。艦内重力は無くなり無重力空間へと変わる。そんな中、ミナトは艦橋内のど真ん中に浮いていた。そして。ミナトの瞳が水色に光る。それは変形完了の合図。現れたダブリスの顔面。


「……ダブリス級、変形完了。目標は敵アテナ。流麗のダブリス、目標の駆逐を開始するわ」


 ダブリスはガレスに狙いを定める。そして、次の瞬間ダブリスの全身からホーミングレーザーが放たれた。それはガレスのみならず周囲のグリムゾン級も巻き込むほど大量であった。回避できずに沈んだ敵艦は数知れない。しかし、駆逐の目標であったガレスにはかすりもせずにのうのうとダブリスの周りを飛翔している。


「……バイバイ、鳥さん。ソヒィスティケイティッド・クラッシャー」


 ダブリスの両腕から発生した黄緑色に輝く光の粒子はダブリスの両手を包み込む。そして、ダブリスは両腕を天に向かって挙げる。そうすると粒子は一点に集まり巨大な球体へと変化した。それをダブリスは両手でがっしりと掴みガレスに向けて構える。両手には球体から渦巻く粒子の流れが絡まっている。ダブリスの瞳は金色に輝く。


「……光れ、消えろ」


 ダブリスは黄緑色に輝く球体をガレスに向けて放った。速度はそれほど速くはなかったものの、その大きさはガレスの回避可能な距離を軽く越えていたのだ。必死にその光から逃げるガレスだが結局、逃げ切れずに光になる。


「……倒した」


 ミナトがそう呟くとダブリスは通常形態へと戻った。敵も主力のアテナを失ったのか撤退していく。


「ふう……何とか倒せたわね」

「……ありがと。サユリさん」

「どう致しまして」


 その時だった。中枢帝国が地球圏に戦艦を集結させたというニュースが流れたのは。それは異常な数の戦艦であった。


「司令部からの写真だ。おおよそ三百隻のグリムゾン級と五十発のクリーナを保持しているのが分かった」

「そんな……。どうするの、お父さん!」

「今すぐ地球に向かう。そうしなければ地球にクリーナが落とされてしまうのも時間の問題だ」

「でも、ショウやナギサちゃんはまだ戻っていないのよ!」

「彼らにも通信が戻り次第、電子メールで伝えておく」

「そんな……せめて二人がどのような状況に置かれているのかだけでも分かってから行きましょ!」

「現在は謎の妨害電波で彼らと通信ができない状態です。しかし、オリンストと紅いアテナの熱源は確認されています。おそらく……生きているでしょう。それに万が一、二人が命の危険に晒されているとしても見捨てて地球に向かう方が得策であると……」

「あんた! ショウはあたしたちの友達なのよ! 高校でだっていつも一緒だった! そんな親友を見捨てられると思っているの?」

「しかし、そちらの方が戦術的には……」

「この、理屈屋!」


 サユリは立ち上がりリョウ前に立ち、リョウの頬を平手打ちした。


「なにをするんですか!」

「あのー立て込んでいるとこ、申すわけないんですけどー」


 ヴァルキリー級から通信が来た。ヘーデは回線を開きそちらに耳を傾ける。声はミウだ。


「サユリちゃん、大丈夫よ。ショウ君なら絶対生きてる。あの子、見た目に関わらず結構タフなんだから」

「そーだよぅ! ナギサちゃんは可愛いから生きてる! 絶対にだよ!」

「ま、エミルもそう言っていることだし……ね」

「分かりました……そこまで言うのなら信じます」

「……なら話は早いわね。行きましょう、地球に」


 ミナトは言った。それは皆の気持ちを一つにする。

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