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【Chapter/18 エウロパの休日】

 前回の戦いから一週間後、ダブリス級は無事、木星の衛星エウロパに着艦した。エウロパは都市としても発展しており、様々な文化の発信地ともなっているらしい。


「ショウ! じゃあ、俺たちって休暇を貰えるのか!」

「ま、そういうことになるな……」


 シュウスケはウキウキしている。まぁ、ショウもそう思う気持ちが分からないではないが。狭いダブリス級の艦内にいるよりかはエウロパにいるほうが百倍マシだ。


「ショウ先輩! 一緒に来てください!」


 ナギサが走ってこちらに来た。まぁ、なにか裏でもあるのだろうが……。


「え? いいの?」

「荷物持ちに!」


 ストレートすぎる……。


「じゃっ、俺はミウさんたちと一緒にカラオケ行ってくる!」

「おいッ!」

「買出し係なんですよー。だからお願いします!」

「えー俺もカラオケ行きたいし……」

「ショウ変態」

「ぐぬぅ……分かったよ!」


 渋々、ショウは荷物持ち係になった。




 ここはエウロパの都市でも中心部の町。電気用品がたくさんある。しかし、何故ここにナギサが買出しに行くのかがショウには分からない。ナギサはショウと少し距離を離しながらショウの前を歩いている。周りには電化製品もあれば怪しげな店もある。そして、人も多い。


「んーなんだかイリア3の時とは大分、違う雰囲気だな……」


 周りにはコスプレをしている人たちも……。チャイナ服に制服、メイド服。ショウはメイド服を見た途端、あの時を思い出した。そして、一瞬だがもう一度着てみたいと思った自分がいたことにショウは気づき、恥ずかしくなる。


「ここですよ! 頼まれているのはミキサーにパン焼き機に……」

「それって全部、お菓子を作る機械……」

「そうですよ。ハマっているんですよ」

「買出しじゃないジャン……」

「悪いですか? ショウ変態」


 ナギサの笑顔にショウは戦慄を覚える。


「いいえ……」


 結局、大量の菓子製造機を買ってしまった。勿論、持つのはショウ。両手の紙袋は今にも底が抜けそうなほどであった。それよりも先にショウの両手がちぎれるか……どちらかだ。


「色々なゲームがあるなー」


 ショウの横手にはゲーム屋がある。それも一風変わったゲームばかり……。シュウスケがベットの下に隠していたゲームもあった。店頭の看板にはナギサによく似た美少女がこちらを見つめている……様な気がする。


「…………」


 しばらくその看板と見つめあっていたショウ。気がつくと前にナギサはいなかった。急いでショウはナギサを探そうとする。

 ナギサは見つかった。しかし、ナギサはしつこいナンパ師に絡まれている。ここは路地裏。ショウはナギサを助けに行こうとする。しかし、そのナンパ師と目が合ってしまった。手には刃物が。もはやナンパ師ではない。


「ショウ先輩! 助けてください!」

「…………」


 しかし、ショウは一目散に逃げていった。


「どうやら彼氏に見捨てられたようだなぁ」


 ナンパ師が歪んだ顔で言う。

 その刹那、ショウは再び現れた。手には先ほど見つめていた美少女の看板を持っている。


「ラグナ・ブレード……もどきぃぃぃぃぃぃぃぃ!」


 その看板はナンパ師の頭を貫き、そして気絶させた。


「先輩……」

「逃げるぞ!」


 キマった……。


 ショウとナギサは急いでその場を後にした。




「はぁ……楽しかったよなー」


 シュウスケはカラオケで歌いほうけたようで上機嫌だ。しかし、ショウとナギサは走って帰ってきたのかげっそりしている。特にショウは両手に荷物のいっぱい入った紙袋、背中には穴の開いた看板を背負っていた。


「なにがあった?」

「いろいろと……」


 ショウは屍のような目をしている。


「で、なんだこれは?」

「……お土産だ」


 そう言うとショウは看板をシュウスケに渡した。


「……」


 沈黙に落ちる。

 シュウスケが前を見たときにはショウの姿は無かった。



 今日はバレンタインだった。ショウはふと食堂で夕飯を食べている時に思い出した。確かにナギサたちの姿が見当たらない。隣にはシュウスケやリョウがいる。シュウスケは期待しているのか、目をパッチリ開けて目の前をただ見つめている。リョウは興味がないのか、夕飯のざるそばを淡々と食べている。


「シュウスケ、生きてるか?」


 ショウは隣のシュウスケに聞いた。


「当たり前田のクラッカー……普通に生きてる」

「チョコ貰えなくても死ぬなよ」

「タンカーを用意してくれ」

「あいよ……」

「ショウは期待しているのか?」

「……ちょっとだけな」


 そうこうしているうちにナギサとミウがこちらに来た。手には……チョコが。シュウスケの両手に力が入る。そして食堂にいる男性陣にチョコを渡す。どうやら手作りらしい。


「はい、ショウ君にシュウスケ君」


 ミウは二人にチョコの入った箱を渡す。中には可愛らしいハート型のチョコが入っていた。


「ありがとうございます……」

「ミウさぁぁぁぁぁぁん、結婚してくださーーーーーーい」

「シュウスケ、冗談はおよし……」


 時々、本気で言っているからコワい。


「シュウスケ先輩、はい」


 ナギサもシュウスケにチョコを渡した。板チョコだ。


「39《さんきゅ》!」


 シュウスケは返事をした。


「えーーーと、ショウ先輩のは……すみません。ありませんでした」

「え?」

「すみません……材料の都合で」

「そう……」


 なんか、かわいそうだな……。嫌いな相手でもこんなの見ると罪悪感を感じる。まぁ今日、助けてくれたわけだしあげるか。仕方ないですね。マナーですね、うん……。


 ナギサは落ち込んでいるショウを見て思った。そして、鞄の中から自分用にととっておいたチョコを取り出す。これは特別なもので食堂のおばちゃんから貰ったクリーム(途中で足りなくなった)を使ったやつだ。おばちゃん曰く《最高級のクリーム》らしい(まるっきり市販の物だが)。それを二つに割った。


「自分用にとっておいたんですけど……半分でよろしければ」

「いいの?」

「いいんです。なんだか、ショウ先輩が落ち込んでたから」

「じゃあ、いただきます」


 ショウはそのチョコが溶けないうちに口に運んだ。けっしておいしくはないその味。全然、甘くない薄い味。といっても苦くもない。


 しかし、おいしかった。


「おしいよ! うん!」

「ありがとうございます! 自信作なんですよ!」

「絶対、ホワイトデーに返すから」

「え?」

「そりゃ、マナーっていうか……男として、そのー」

「ありがとう…………ございます」


 男としてか……。これがホントのショウ先輩なのかも。


 ナギサはしばらくここいることにした。

 翌日、ショウとナギサは食中毒(おばちゃんのクリームが腐っていた)になって寝込んでしまう。しかし、今は誰も知らない……。

【次回予告】

 質より量とはこのことだ。

 迫りくる五十隻もの戦艦。

 そして、ガヘリスの粒子砲が牙を剥く。

 人を守ることに代償は必要なのだろうか?

 次回【Chapter/19 消滅都市】

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