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【Chapter/17 生きるもの←→眠るもの】その2

 アグラヴァイは再びオリンストに向けて大剣を振りかざす。姿勢を低くしたオリンストはそのままアグラヴァイに突進する。


「こうなりゃ力押しだ!」

「後ろからもう一体が突貫してきます!」

「これを待ってた!」


 オリンストはアグラヴァイの体を蹴り飛ばすと両手に光の剣を発生させて突貫してきたガレスの両足の爪を切り裂く。そして、振りかざされたアグラヴァイの大剣を右手で受け流すと、勢いよくアグラヴァイの右肩を光の剣で切り裂いた。右腕を失ったアグラヴァイだが、まだ戦う気はあるらしい。


「どうするの? 私たち……」

「大丈夫だ! 俺たちがあのアテナを倒すんだよ! そうすれば死んだみんなに会わす顔ができる!」


 ショウの頭の中に声が聞こえてきた。ガレスのほうからは少年の声、アグラヴァイのほうからは少女の声だ。


「声が聞こえます……」

「ナギサ、今は余計なことに気を向けるな。俺たちにみんなの命がかかっているんだ!」

「はい……分かっています」

「行くぞ! グラディウス・アロー!」


 オリンストはアグラヴァイに向かってグラディウスアローで矢を放つ。しかし、それは難なく避けられてしまった。刹那、アグラヴァイの眼前に現れたオリンスト。


「こっちのほうが多く戦ってるんだよ!」


 オリンストの右手にはラグナブレードが。そして、オリンストはそれでアグラヴァイの左手首を切断する。


「後ろ!」


 オリンストに突貫してくるガレス。その存在を忘れていたショウ。このままゆくと直撃ラインなのは確実だ。しかし、逃れられそうも無い。

 その瞬間、ガレスの右翼をビームのような光迅が貫く。その主は分からない。ショウには考えている余裕は無かった。しかし、考えてしまう。


 いったい、誰が……。いや、今は戦いに集中するんだ!


「喰らえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


 ガレスの顔面をオリンストは拳で殴り、ガレスの顔を潰れさせる。次に攻撃を開始してきたアグラヴァイの胸部にめがけて、ラグナブレードを突き立てた。ラグナブレードはアグラヴァイの胸部を貫く。それをオリンストは抜く。致命傷を負ったアグラヴァイは一向に動こうとしない。

 パイロットを殺したからだ。僅かに見えるその傷口から見え隠れする鮮血の水滴と肉片がそれを物語っている。そして、アグラヴァイはガレスに抱えられて撤退していった。


「……やっぱり私たち人殺しなんですね」


 ナギサは呟いた。


「ナギサは悪るくないよ。俺がこれを操縦しているんだから……」


 そう言うとショウは無言で俯き涙を流す。

 こうしないと大切なものが守れないだなんて。でも、こうするしかなかったんだ……人殺しになるしか。守るって誓ったはずだ。なのに……迷っている自分がいる。


 兄貴、俺はどうすればいい?


 その問いかけに宇宙そらは沈黙をつらぬいていた。




「敵、撤退していきます!」


 サユリがそう言ったと同時にダブリス級の艦橋内の緊張感は一気に解けた。ガヘリスが単機で現れ、攻撃してきたがヴァルキリー級の的確な援護によりダブリス級は無傷で済んだ(勿論、Aフィールドのおかげでもあるが)


「ふぅ……」


 ヘーデは溜まっていた緊張感をため息に込めて吐き出した。


「やりましたね!」


 通信でミウが言った。


「ああ……。これでなんとか木星圏まで安全に航行できるでしょう。ヴァルキリー級の援護を感謝する」

「いえいえ。私自身、未熟者ですから」とミウは謙遜する。

「オリンストもなんとか敵を倒したからねー」


 エミルはモニターいっぱいに映り笑顔を作った。


「まぁ、ヴァルキリー級の援護があってこそでしたよ」

「ありがとうねーリョウさん」


 いつもと変わらないリョウにもエミルは笑顔で答える。




 ハンガーの中で血だらけになり運ばれる子供がいた。その子たちはあの時のカップルだった。まだ少女の方の瞳には温かみが残っている。しかし、少年の方は酷かった。どうやらプラグを外される前に死んでいたらしい。敵のアテナの近接武器にコックピットを一突きにされたと聞く。そのおかげでアグラヴァイは中破している。


 どうやら司令部は子供たちの命より試作量産型アテナの方が大切らしい。


 職員たちは彼の肉片や臓器を拾うのか、青色のバケツを持っている。それもそうだろう、誰も他人の肉片などが挟まっているコックピットになど乗りたくないだろう。


「次はあたしね……いやになる」


 バケツ一杯分にもなった少年の肉片や臓器を見て少女は呟いた。歳はちょうどアスナと同い年ぐらいでポニーテールの似合う青色の髪の毛をした少女。背は小さいが顔からして中学生には見える。


「戦場で恋の花なんか咲かせているから負けるのよ……バッカみたい」


 少女は冷酷な瞳でバケツの中を覗き込んでいる。


 本当にバカだ……でも私は違う。あんたたちとは!


 少女は中破しているアグラヴァイを見つめていた。小一時間、少女は微動だにしなかった。ただ、その機体を見つめて……そして、ニヤリと笑う。


 こんな国、ぶっ壊してやる……。

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