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【Chapter/14 第十七独立機動艦隊結成】その3

「ミウ・エレクトと……」

「ショウ・テンナが歌う〜『冥王超星ゴウガンナー!』です!」


 ノリノリなミウに対しショウはうつむいたままだ。舞台に立っている二人を皆、じっと見つめている。


 恥ずかしすぎる……。


 ショウがそう考えるのも無理は無い。舞台の上で、しかも大勢の人がいる前で歌った経験などショウにはない。それに加えてショウは女装をしている。これ以上と無い地獄だ。

 しかし、ショウは勇気を振り絞り口を大きく広げ……歌い始めた。


「あーあー二つのここーろ!」


 ミウもそれに続く。


「一つに重ねぇ……現れる巨人〜♪」

「超合体! ゴウガンナー! 撃て! シャイニング・ストライクぅ〜♪」

「戦え! ゴウガンナー!」

「撃て! ゴウガンナー!」

「人類を〜守るためー♪」

「現れた戦士その名は……」

「「ゴウガンナー!」」


 歌い終わったショウはふと目の前を見た。どうやらショウとミウが歌ったことでパーティーは盛り上がりを増したらしい。皆、熱気に包まれている。


 俺……こんなことができたんだ……。


「えー盛り上がっているところ申し訳ないのですが、大切なお知らせがあります!」


 ミウがそう言うと皆、黙り込みミウを見つめた。


「ダブリス級は現在、エンジン部が損傷しており航行できない状態にあります。しかし、我々のヴァルキリー級の推進力でダブリス級を引張っていくことは可能です。以後、ヴァルキリー級は諸国連合所属の星、木星の衛星『エウロパ』にてダブリス級の補修を行う予定。それから諸国連合の本部がある地球に向かいます。明日、午前十時よりヴァルキリー級は天皇星圏を離脱、エウロパに向かい出航いたします。勿論、ダブリス級を連れて。これよりダブリス級とヴァルキリー級は『第十七独立機動艦隊』として地球圏まで向かいます。以上が司令部からの言われたことです」


 ミウはそう言うと硬い表情からいつもの優しい表情に戻り、二曲目を歌い始めた。無論、ショウもそれに付き合わされた。しかし、ショウもノっている。自分に歌の才能があると勘違いしているのだ。


「俺の歌を聴けぇぇぇぇぇぇ!」


 ショウの歌は一時間続いた。その後、ショウの喉が力尽きてしまったのは言うまでもない。




 海王星圏の北東部に位置する巨大要塞『グリニデ』は中枢帝国からも難攻不落の要塞として名が通っている。そのハリネズミの針のようにある無数の砲台に寒冷な気候。それが敵の侵攻を拒み殲滅するシナリオ……のはずだった。そうそれは過去形。

 しかし、その要塞が今、陥落しようとしていたのだ。要塞にいる兵士たちは目を疑っていた。目の前にアテナがいる。しかも、三機も。無論、兵士たちはアテナの存在を知っている。しかし、その姿は報告書でしか見たことがなかった。その威力を文字でしか知らなかったのだ。


 三機のアテナはどれも報告書には無い。白銀のオリンスト、流麗のダブリスでもなくば、赤いヤツでも青いヤツでもない。その三機のうちの一機は鳥のように空を自由自在に飛びまわり戦艦を次々と撃墜している。

 遠くの方に強力な熱源を探知した。そして放たれた粒子砲。その大きさは要塞を丸々、飲み込むほどの大きさだ。その粒子砲は外れこそしたものの、その被害は大きく要塞の三分の一もの戦力を一瞬にして灰にした。

 土煙が舞う中、一機の熱源がこちらに向かっていく。そのアテナは両手に自分の二倍ほどの大きさの太刀を持つ。色は分からない。しかし、そのボディーは返り血のようにオイルで紅く染まっていた。


 そして、要塞は堕ちた。攻撃時間は約五分。難攻不落と呼ばれた要塞グリニデはその短い生涯を閉じた。




「うぐぇ……もうカンベン」


 ショウの喉は枯れていた。そして今、ショウは自室に寝転がっている。


「大丈夫かー」


 シュウスケはショウの右側でゲームをしている。


「お前こそ船酔いは大丈夫なのか?」

「医務室の人に超強力な酔い止めをもらったから大丈夫」

「そうか……」

「そういや、ショウ。お前さ……強くなったよな」

「へ?」

「だって、お前さ。前はもっと幼かったとか……ん〜。だって、普通自分の母親が死んだら悲しむし。兄貴が死んだときは大分、根に持っていたのに」

「んん、悲しいよ。でも、ここは戦場だ。人が死ぬのも当たり前なんだ。確かに悲しい。だけど、それを深く根に持っていたらみんなに迷惑かけてしまうし……。それに悲しんだら母さんに悪いからな」

「ふ〜ん」

「そろそろこの船、宇宙空間に戻るぞ」

「え、もうそんな時間?」

 シュウスケは自分の腕時計を見た。彼の腕時計はすでに十時を越えている。


 その時、ナギサが部屋に来た。彼女に瞳は虚ろだ。


「ショウ……頭が痛いんです……ああぁ!」


 ナギサはそう叫ぶと床に倒れこんだ。


「ナギサ! ナギサ!」


 しかし、ナギサの瞳は開こうとしない。

【次回予告】

 もう一人の自分。

 それが宇宙そらのどこかいる。

 そんな中、宇宙にまた閃光が翔ける。

 それは新たなアテナの……鼓動?

 次回【Chapter/15 風と焔と雷、そして……】

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