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【Chapter/13 ソラを翔ける少年と少女】その2

 ショウはオリンストを降り、甲板で一人海を見つめていた。あの後、クシャトリアはダブリス級に鹵獲されている。ダブリス級自体の損傷は激しく、メインエンジンもやられており航行できない状態にある。

 しかし、そんなことショウにとってはどうでもいいことだった。

 ショウはポケットの中から一枚の写真を取り出す。それはアスカとショウが肩を組んで笑っている写真だ。


「なにしているんですか?」


 声をかけてきたのはナギサだった。


「いや、ちょっと一人になりたくてね」

「そう……ですか」


 ナギサはそう言うと黙り込んだ。


「お〜い、ショウ!」


 シュウスケが遠くから声をかけてきた。


「なんだよ?」

「おいおい、親友と再会して一言目が「なんだよ?」はないだろー。な、ナギサちゃん?」

「は、はぁ……」


 ナギサは参った顔でシュウスケを見つめる。


「別にいいだろ? それで」

「ま、「なんだよ?」の一言に百以上の意味が詰まっているってことだろ?」

「ちげーよ」

「そーですか……じゃあ君は三日間、栄養クンで我慢しな」

「ど、どういうことだよ!」

「パイロットの君には栄養が必要だ、とヘーデさんが言ってたしね。ま、俺がなんとか言えばヘーデさんも聞いてくれるかもしれなかったのにね」

「やめろ! 栄養クンだけの食生活だけは……」


 ショウとシュウスケの言い合いをナギサは微笑ましそうに見ていた。


 友情か……。


 水平線は夕日で赤く染まっている。




 ショウは部屋に戻りじっと天井を見つめていた。


 これでよかったんだよな……兄貴。俺さ、やっと答えに辿りついたんだよ。

 ああ、これでいいんだ。俺は守りたいから戦う。理屈無しで。兄貴がそうしたように俺も大切なものを守る!


その時、部屋のドアが開いた。そこにはナギサがいる。


「ショウ先輩、ヘーデさんが艦橋に来いって言ってました。私も言われました……」

「へ? ヘーデさんが?」

「はい……なんなのかは分かりませんけど。一緒に行きません?」

「分かったよ、行こっか」


 ショウはそう言うとナギサと一緒に艦橋へ向かった。そして艦橋のドアを開けたその瞬間……

 クラッカーが弾ける音がした。目の前には「おかえりなさい!」と書かれた張り紙がある。そしてそこにはヘーデやシュウスケ、サユリ、ミナト、リョウの姿が。


「おかえり! この字、ミナトちゃんが書いたのよー! 上手いでしょ!」


 サユリは言った。そして、ミナトはvサインをする。


「……ブイ」


 しかし、無表情だった。


「「ただいま……」」


 二人は呟いた。


 俺の《いばしょ》はここにあるんだ……。そして大切な……守るべき人たちがここにいる。今まで気づかなかった。

 私が《生きる意味》がここにある……うれしい。守らなきゃいけないの。みんなを守るために今、私はここにいる。


 そして二人はニッコリと笑った。




 ここは太陽系の中でもトップシェアを誇る巨大軍事企業『エルヴィス・エレクトロニクス』の本社だ。本社は天王星にある。この企業は軍事を専門としているが戦争が起こるにつれて需要も高まり、現在は一国の財源を超えるような資産を持ち、多数の大型企業を集め『エルヴィス財団』と呼ばれるものも持っている。

 しかし、ここは本社ビルの地下七十八階。周りは薄暗く何もない。


「試作量産型の三機のアテナはどうなっている?」


 オールバックで腹が出ている彼こそエルヴィスエレクトロニクスの社長、アルベガス・ラグーン氏だ。彼は今年で六十七歳になる。


「はい、現在最終起動実験中です。三機とも順調にテストをクリアしています」


 それに答えたのは金髪の長髪で端正な顔立ちの男だった。彼は金髪の髪をなびかせ、アルベガスの方を向いた。


「渚の様子を見てきます」

「ああ、好きにしろ」


 そう言うと男は一番奥にある部屋のドアを開けた。そのまた奥にカードキーを差し込まないと入れない扉がある。男は無言でカードキーを差し込むとその部屋に入った。


「渚……調子はどうだ?」

「……さいあく」


 その部屋には鎖で両手足を繋がれ目隠しをされている少女の姿があった。衣を纏わぬ少女の黒髪は長い間、洗っていないのかフケでいっぱいだ。

 そして、奥には一体の巨人が跪いていた。その巨人は十字架に張られている。それはまるで第二市文明の頃のイエス・キリストの最期を髣髴させる姿だ。その巨人は白い……アテナだ。


「はやく、ここから、だ、して。あば、れ、させて、よ」

「そうしないと?」

「きもちわるいから」

「嫌なのか? ここにいるのが」

「だいっきらい。はやくきもちいいことさせ、て」

「もうすぐ、ここから出られるよ。オリンストが目覚めたらしいしね」

「お……りんすとがめざめた? ほんとーに?」

「ああ、そうだよ」


 男がそう言うと少女は息を荒くし、そして言った。


「まっててね。しょうくん。やさしいしょうくん。そして……もうひとりのわーたーしー」




―――Tо Be Next Stage―――

【次回予告】

 エンジンを損傷したダブリス級。

 ただ、海面を浮かぶその姿。

 そこに援軍の新型艦が現れる。

 しかし、そのクルーたちは……。

 次回【Chapter/14 第十七独立機動艦隊結成】

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