【Chapter/12 二人……独り……孤独?】その1
ショウは目が覚めた。そこは暗くてよく分からない所だ。しばらくすると遠くの方に明かりが見えた。通信機に付いている簡易ライトのようだ。
「んん〜ここは?」
ショウの呟きに誰かが答えた。
「分かりません……」
その声の主はナギサだ。
「分かりませんけど……どうやらどこかの洞窟のようです」
ナギサがそう言うとショウは立ち上がり、ポケットから通信機を出しライトを点け奥に向かおうとする。
「どこに行くんですか?」
「出口を探さなきゃ。このままだとダメだろ?」
「それは……そうですけど。危なくありませんか?」
「ここにいて飢え死にするよりはマシだろ?」
「ま、まぁそうですね」
そう言うとナギサもショウについていった。洞窟はそれほど大きくもなくすぐに出口が見つかる。ショウもナギサもその出口に向かって走っていく。
「ここは……島?」
ショウは唖然とした。どうして自分たちが島にいるのかが分からなかったからだ。あの後、ショウは意識を無くし、変な夢を見た。そして、気がつけば……洞窟の中。それでこれだ。
ダブリス級はどこだろう?
ショウは段々、不安になってきた。もしや、自分たちだけさっきの衝撃でで遠くに飛ばされてしまったのだろうか?
多分、イエスだ。
「とりあえずもっと地平線の見える場所に行こう。ダブリス級が見えるかもしれない。見えたらオリンストで向かおう」
「は……はい」
その時、ナギサのお腹がぐぅ〜と鳴いた。ナギサはここ二日間、満足に食事をしていない。
「お腹すいてる?」
「は、は……い」
「ちょっと待ってて。食べられるもの探してくるよ」
ショウはそう言うと辺りを見回し一本の木の下に走って向かう。そして、その木を力いっぱい蹴り飛ばすと上から緑色の木の実が大量に落ちてきた。
「ほら、これは『ガァムの実』って言ってちゃんと食べられる木の実だよ」
「ありが……とうございます」
ガァムの実の表面はザラザラとして肌触りは良いが、深緑の色が妙に毒々しい。味もお世辞にもおいしそうとは言えない。だが、栄養クンよりは数倍マシだ。しかし、ナギサには合わないらしく少し不快な表情をした後、覚悟を決めてごっくんと飲み込んだ。しかし、腹が減っているのかもう一個手に取りそれを繰り返した。
「これ、本当に大丈夫なんですか?」
「不味いらしいけど腹の足しにはなっただろう? 最近はダイエット食品の原料にもよく使われているからね。なんでも一個でも満腹感が得られるとか……まぁそれは無いと思うけどね」
「ダイエットになります……」
ナギサがそう言うとショウは更に奥へと歩いていった。
一方、ダブリス級の艦内では……。
「サユリ、ショウの居場所は分かった?」
「分かったわよ、シュウスケ。でも、そこに行くのに一日はかかるわ」
整備の作業で汗がびっしょりなシュウスケはホッとしたのか深いため息をした。周りではまだ整備班に人々が黙々と作業をしている。おかげで金属音や火花の散る音やらでうるさい。
「今回の戦いでショウのお母さん死んだんだってね。ショウは知っているのかな……」
「多分知っていると思う。だけど、ショウは戻ってくる。必ず」
「そうね……」
「大丈夫だ。あいつ、面倒なこと自分だけで背負っちゃうところはあるけど根性はある方なんだぜ! だから、必ず……戻ってくる!」
「ありがとね! よーし、オペレーターのシゴト頑張ってくる」
そう言うとサユリは艦橋に戻っていた。
「はぁ……向こうはこっちの位置を知っているのかな」
ショウは深くため息をして言った。
ここは、細かい砂がある海岸。海水浴には最適だ。あの後、水平線の見えるところについたショウたちは一度、通信機でダブリス級と交信しようとしたがここは電波が届きにくいらしく失敗した。聞こえるのはノイズだけだ。
それから約三時間が経った。
ナギサはすぅすぅと眠っている。しかし、ショウは眠たくても眠れなかった。いつダブリス級が見えるのか見張っておかなくてはならないからだ。
それにしても綺麗だな……。
ショウはナギサの寝顔を見てそう思った。しかし、右手首を見るとリストカットの跡がくっきりと見える。それを見たショウはなんとも言えない罪悪感に駆られた。
自分のせいなのか?
答えはイエスだ。
自分の感情をコントロールできなかった俺のせいだ。たとえそれが自分の本来の性格でなくとも実行したには自分に違いはない。
しばらくするとショウは睡魔に負けて夢に落ちた。
「はぁ〜あ」
ショウが起きたときにはもう朝だった。辺りは静か。怖いほど。近くにはまだ眠っているナギサが。しかし、すぐに起きた。
「朝……ですか?」
「う、うん。お腹空く?」
「い、いえいえ。もう大丈夫……」
その時、ナギサの腹の虫が再度鳴き出した。
「……じゃないです」
「じゃ、昨日のガァムの実を取ってくるよ。少し待ってて」
ショウはそう言うとまたガァムの実を取りに森のほうに向かっていった。