【Chapter/11 消失と絆】その3
これは……?
ショウはその光景に唖然とする。
その時、ショウの目の前が大きな光に包まれる。
誰……?
そこには腰まである長い黒髪を持つ少女の姿があった。顔は黒い布で目隠しをされている。
辺りはなにもない草原。蝶も飛んでいる。多分、自分は死んだのだろう。ショウはそう思った。
「君の名前は?」
「へ? ああ、ショウ・テンナだよ」
「私は……渚っていうんだ。広陵中学の三年生。よろしく!」
「え、ナギサ? ……あ、ごめん」
その少女は渚と名乗った。よく見ればナギサによく似ている。
しかし、ここはどこだ?
分からない。ただ、天国でないのは確かだ。
「ねぇ、私のこと知っているよね」
「……ん、まぁ。もしかして下の名前はグレーデン?」
「んん、違うよ。下の名前なんて無い。渚だけ」
「ご、ごめん」
「生きたい? 死にたくない?」
「うん。死にたくないし生きたい。だけど……」
その時、ショウの目の前が真っ暗になった。
ここは……どこ?
辺りはビルや車があり、人々でにぎわっていた。夜のようで空には満月が浮かんでいる。しかし、その状況も轟音とともに変わった。人々は狂気の目をして逃げ惑う。なにが起こったのかショウには分からなかった。
しばらくすると上空に月をバックに人型の巨大な物体が現れる。
これは……白いアテナ?
その巨人は銀色の光を放ち辺りを包み込む。夜のはずの都会が一瞬にして朝に変わった。その光景はこの上なく不気味だ。
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
自然とショウの口から放たれた言葉は空に消え、白いアテナの背中に大きな羽が生える。その羽の大きさはショウの視界を越えるほどであった。
一瞬、ショウは白いアテナと目があう。
その奥には冷酷と狂気にまみれた瞳を持つ少年の姿が映っていた。少年はくすくすと笑い、そして言った。
「みんな死んじゃえばいいんだ! 僕を苦しめるものを全て! 消えろ全て! 跡形もなく! 渚を苦しめるもの全て!」
そして、少年の言うとおり全て消えた。ショウは一人、全てが塵と化したセカイを見ている。その奥には抱き合う少年と少女の姿、そして……。
白色のアテナがあった。
「あなたの得たものは何?」
少女は少年に呟く。
「絆さ……君との」
そう少年は呟くと再び抱き合った。
【次回予告】
夢から覚めた少年。
目覚めた所は知らない島。
ここはどこだ……?
少年の問いには誰も答えてくれない。
次回【Chapter/12 二人……独り……孤独?】