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【Chapter/7 デブリ帯の死闘】その2

「後方より七隻の艦がこちらに向かっています」

「敵か?」

「おそらく……」


 ヘーデはリョウの言っていることを淡々と聞いている。艦橋内空気は徐々に重くなってきた。


「お父さん、敵なの?」


 サユリは不安げに聞いた。


「そうだ……。だが、幸いにも相手はこちらに気づいていない。ここはデブリ帯だ。あいてもレーダーを使えない状況だ。だが、ダブリス級は微かだが相手の熱源を確認できた。つまりそういうことだ」

「じゃあ、このまま敵に見つからないように逃げればいいのね!」

「こちらがフルスロットルで逃げたとしたら? 相手はこちらの存在に気づき追いかけてくる」

「でも、この艦の方が性能は上なんじゃ……」

「この艦が航行不能な艦を引張って航行しているのだ。それに相手はこちらの艦のスピードよりよっぽど速い新型兵器を出してくるだろう。この状態で何事もなく逃げ切れる確率は?」

「0・0000521783%ね」


 サユリはあきれながら答えた。


「さてどうやって見つからずに逃げ切るか……」


 ヘーデは重苦しい息を吐いた。ここ一週間、タバコを吸ってない(サユリに半強制的に喫煙を迫られた)のか、頭がモヤモヤする。


「その必要はないです……敵にもう見つかっているようですね」


 リョウの一言にヘーデはイスから立ち上がり叫んだ。


「コンディション・レット発令! 各自戦闘配置に着け! 敵は七隻の駆逐艦。そのうちの一隻は新型艦と思われる!」


 ヘーデの叫びと同時に艦内に警報音が鳴った。


 また命が散る……。


 ヘーデは憂鬱だ。


「Aフィールド展開用意! ササキ少尉、いまの等艦の座標は12―Z―アルファ……つまり、デブリ帯のど真ん中、ということです」

「サユリ……この状況どう思う?」

「最悪ね」


 サユリは人差し指を立て、笑って見せた。


「正解だ……収容されているレウス級一隻の状態は?」

「すべての火器がオフライン。ですが、エンジンはオンライン」

「そうか……」


 せめて火器が使えれば……。

 ヘーデはモニターを睨んだ。

 モニターには後方の七隻の敵艦と前方の三隻の敵艦、それに挟まれる形で一隻のダブリス級が孤立していた。


「オリンストは至急、戦闘体勢に入りダブリス級の右舷にて待機せよ!」

 たとえ、オリンストがいたとしても……状況が最悪なのは確実だ。




「ナギサ!」


 ショウは食堂にいたナギサを呼んだ。ナギサの口元にはミートソースがついている。どうやらスパゲティーを食べていたようだ。


「はい!」


 ナギサはショウの手に手を重ねた。


「こい、白銀のオリンスト!」




 オリンストはヘーデに言われたとおり、ダブリス級の右舷にて待機している。

 中のショウは暇だ。三時間以上、この体勢でいるのだから……。

 現在、敵艦隊とにらめっこ状態だ。先に動いた方が負け……ということもないが、よほど敵は慎重なのだろう。依然、ダブリス級から三十キロメートル先で攻撃体勢をとっている。

 ショウも最初のほうはナギサと喋っていたりで時間を潰せていた。しかし、ショウの腹の虫は約一時間前に牙を剥いた。


 夕飯が栄養クン一本だったのが悪かったのかなぁ……。

 答えは多分イエスだ。


 ショウは現在、ヘーデに渡された通信機をひたすら眺めている。ここ三十分。そろそろ、なにか連絡が入ってもいいはず。

 だが、入っていない。

 全然……。

 暇だからこうしてナギサとしりとりをしてる。


「ん〜ゴウガンナー初号機!」


 ナギサもゴウガンナーを知っていたようだ。


「き、ききき……金色!」

「ロウソク点火機!」

「ききききききき……キス!」

「スイカ割り機!」

「ききききききききききき………季節!」

「釣り機!」

「きききききききききききききききききき…………」


 まさに《き地獄》だ。


「おい、ショウか?」


 やっとヘーデから連絡がきた。


「こちらに向かって接近する物体がある。おそらくは昨日の奴だろう。気をつけろ!」

 オリンストの目の前にはイフリートがその鋭い眼光を光らせこちらに向かっている。

「きます!」


 ナギサがそう言った時、イフリートの胸部の粒子砲が輝きだした。

 オリンストは急いでAフィールドを展開し、その粒子砲を防ぐ。しかし、その一秒後イフリートはオリンストの目と鼻の先にいた。

 イフリートの動きが前よりも速い。前回は手加減してたというのか? ならば今回は本気……ということだ。


「くそっ! ナギサ、弓を使う!」

「はい!」


 オリンストの左腕に白銀の弓が現れる。グラディウス・アローだ。

 刹那、イフリートの右手の刀がオリンストに襲い掛かる。オリンストはそれを足のバーニアを吹かし間一髪に避けた。

 少し、オリンストは距離を取り、矢を連射する。イフリートはオリンストの周りを高速で移動し弓矢を避け、反撃の糸口を見つけようとしている。


「……」


 オリンストは一瞬、弓を引くのを止め胸部を開けそこからホーミングレーザーを放った。ホーミングレーザーは近くの瓦礫に当たり爆発し、煙を発生させる。

 ここはデブリ帯だ。弓を使う遠距離攻撃の得意なオリンストにとっては悪くないフィールドだ。

 姿の見えなくなったオリンストに困惑するイフリート。その瞬間、イフリートの後方に弓矢が放たれる音がした。

 振り向くイフリートだがそこには昔に撃墜されたグリムゾン級の残骸しかない。

 オリンストの放った矢はその残骸を貫き、イフリートの右肩に刺さる。

 それを見たオリンストは弓を解除し両手に光の剣を発生させ、姿を現しイフリートに切りかかる。


「これでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


 その時、ショウに誰かの声が聞こえた。

 ナギサと同い年ほどの少女の声。


「こんなところで、負けてらんないのよ!」


 少女の声はショウを困惑させる。


「誰だよ!」

「声……? あんたこそ誰よ!」

「俺は……」


 二つのアテナは戦いを止め互いに睨みあう。


「もういいわ。あなたは私を殺そうとしていた。なら私もあなたを殺す!」

「おい! まだ……」

「うるさいわ! あんたなんかに負けたらソウスケに合わす顔がないじゃないのよ!」


 先に動き出したのはイフリートの方だった。

 イフリートはオリンストから距離を取り、粒子砲を放つ。

 オリンストも胸部を開き、粒子砲を放つ。


「あんたなんかぁぁぁぁぁ!」

「この……わからずやがぁ!」


 デブリ帯の中、二つのアテナの粒子砲がぶつかり合い眼が痛くなるような光を放った。

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