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【Chapter/6 紅蓮の業火に咲く華】その2

 イフリートは右手の刀を振りかざす。オリンストも左手に光の剣を発生させ、それを受けと止めた。イフリートが振りかざしたもう一方の刀がオリンストに突き刺さる。

 ショウは左脇に激しい痛みを覚えた。

 イフリートは鍔迫り合いをしている右手に力を入れる。その瞬間、オリンストの左手は弾かれ、右胸部が無防備になった。


 やられる!


 オリンストは右足を大きく蹴り上げた。蹴られたイフリートの体はオリンストから離れる。その瞬間をオリンストは逃さなかった。

 左手の光の剣を最大限にまで長く、かつ濃く範囲に広げイフリートに向かい振りかざす。


「これで!」


 しかし、イフリートは下半身のバーニアを吹かし間一髪のところで避ける。

 ふと、ショウが目の前を見た時にはイフリートの姿は完全に視界から消えていた。

 刹那、ショウは背後に気配を感じる。


 周り込まれた!


「くそっ!」


 オリンストは姿勢を低くしイフリートの刀を避け、そして腰を右に一八〇度に回しイフリートを力いっぱい蹴った。

 致命傷にはならないものの、イフリートに微かな隙が生まれた。そこをオリンストは見逃さず、もう片方の左足でイフリートに蹴りを入れる。

 さらに大きな隙が生まれた。


「先輩、今です!」

「ああ!」


 オリンストは上半身のみを左に一八〇度回す。そして、両手から光の剣を発生させ丸裸のイフリートに向かって振りかざした。

 イフリートはAフィールドを展開するがこの距離では意味がない。

 それを悟ったのか、またもや下半身のバーニアを吹かし一回転した。ダメージこそ喰らったものの直撃よりはよっぽどマシだ。

 オリンストの視点からちょうど逆さまに見える角度でイフリートは下半身からミサイルをオリンストに向かって放つ。

 ミサイルは直撃。煙でオリンストの視界からイフリートが消える。

 その煙の中から一筋の残像が。

 イフリートはオリンストに急接近し胸部の粒子砲でオリンストの堅牢な装甲を溶かす。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 ショウの体を焼き焦げるような熱さが襲う。


「先輩! 弓を出してください!」

「え?」

「零距離射撃をしてください!」

「うん……」


 また、あの弓を使うのか……。

 ショウの中には焦りと同じぐらい恐怖があった。あの弓を使う自分が怖い。

あの自分は……人殺しの自分のような気がする。いや、そうだ。


「グラディウス・アロー……」


 光を放ち現れたのは白銀に輝く弓。それはオリンストの左腕に装着される。

 弓を構えたオリンストはゆっくりと弓を構える。

 イフリートはもう一度粒子砲を放つが装甲の溶解をものともせず、オリンストはイフリートの胸部に向けて光の矢を放つ。


 零距離射撃だ。


「……」


 イフリートは胸部に致命的なダメージを受け、逃げていく。


「……ふぅ」


 なんとか今回は敵を撃退したようだ。しかし、ショウは胸に痛みを感じた。さっきの粒子砲のせいだ。

 力なく、ショウは激しい痛みとともに操縦席から崩れ落ちた。


「先輩! 大丈夫ですか、先輩!」


 ショウの意識は無くなっていった。




 予想外だった。


 いや、予想できた。

 オリンストをなめてかかっていた自分が恥ずかしくなる。

 アスナはうつむき、なにも言わず下を見つめている。


「着艦用意! 着艦ルート正常!」


 整備班が赤い旗を振って着艦ポイントを教えてくれてる。

 イフリートはサヴァイブ級に少し乱暴ながらもちゃんと着艦できた。アスナにとっては珍しいことだ。


 調子が狂っている……。


 アスナは確信した。動揺しているのか? オリンストに負けた事を。

 認めたくないがそうであろう。


 認めたくないケド……。


「うっ……!」


 アスナはイフリートがサヴァイブ級に収容されると同時に鮮血の血を吐き、倒れた。

 イフリートから降りた時にアスナは強烈な痛みと吐き気が襲われたのだ。

目の前がぼやける……。

 ソウスケの顔がぼんやりと見える。幻覚?

 しかし、アスナが再び目を覚ました所は医務室だった。

 そこにははっきりとソウスケの顔が見える。


「なんで……いるのよ」


 アスナはプイッと頬を膨らまし体を横にした。


「そりゃあ、部下が体調を崩したら見舞いに行くのが、この艦の艦長を任された僕の役目だよ。アスナも無理するなよ」


 ……生意気に。


 アスナの頬は赤くなる。


 気づかれたら……嫌。


「水……持ってきなさい! のどが渇いているのよ!」


 アスナは怒鳴り叫んだ。


「分かったよ。お嬢様、大臣様、ご主人様」

「早く!」

「へいへい……」


 ソウスケはアスナに言われたとおりに冷水器から紙コップに水を汲みアスナに渡した。


「ありがと……うございます」


 アスナの頬がより一層赤くなる。


「よく言えました!」


 ソウスケのデコピンがアスナに炸裂する。


「うがぁ! 許せない! 私の顔になんてことをっ!」

「へへへ、まだまだ子供だな!」

「うがぁぁぁぁぁぁ! 許せん!」


 本当に私って子供なのかも。


 アスナは少し気が解れた感じが……いや、解れた。

 ソウスケのおかげで。

【次回予告】

 目を覚ました少年。

 再会した母親は……

 そんな中、ダブリス級はデブリ帯にて戦闘を行う。

 戦争の副産物、デブリ帯で……

次回【Chapter/7 デブリ帯の死闘】


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