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【Chapter/52 紅蓮の業火を纏う君へ】その1

「第十五レウス級、第三ジンリュウ級、ともに撃墜! 残りの艦隊もすべて孤立しています!」


 アリューンは恐怖に満ちた声で言った。


「ポイントブラボーの味方艦、すべて撃墜しました。護衛艦もすべて……」

「リョウ、ダブリス級の武装で使えるのは?」

「右側面のミサイルポッドとジークフリードがグリーンです。しかし、他は……いいえ、やりましょう!」

「ああ、ミサイル……一斉射ッ! ジークフリード……てぇぇぇぇッ!」


 ダブリス級の側面部のミサイルポッドが展開。無数のミサイルが射出される。それと同時にダブリス級の上部にあるジークフリード(高圧縮砲)の砲門が火を噴く。周りにいたリヴェンストを追い払う。だが、しかし。撃墜できたのは、たったの一機だった。


「第十二艦隊、全滅! 第十八艦隊、全滅! エターナリア級、航行不能になっています!」

「だめだ! もう!」

「あぁ……」


 艦橋に響く、悲鳴。これが戦争に負けるときなのだろうか? ソウスケはふとクラウドの言葉を思い出した。それは、ソウスケがサヴァイヴ級の艦長となって、間もない頃に言われた言葉だ。


―――戦争に勝つというのは、生き残ることだ。逆に、その戦争に自分の祖国が勝ったとしても、お前が死んでいれば、それはお前にとって敗北なのだ。それが戦争なのだ―――


 そうだ、生き残らなきゃいけないんだ! そう考えるが、どうすればいいのか分からない。考えるんだ! 頭を回せよ、ソウスケ・クサカッ!


 だが、良策も思い浮かばない。しかし、ソウスケは考えることをやめなかった。じっと、モニターを見つめていた。


「クロノさんッ!」


 ダブリス級の目の前で閃光駆けた。ガイアの爆発とともに、内部にいたグラヴィドンも誘爆したのだ。その爆風がクシャトリアを襲い、ダブリス級の艦隊に叩きつけられた。


「敵、アテナ、接近します!」


 シュウスケの叫びと同時にダブリス級の艦橋の目の前にリヴェンストが現れた。そして、胸部の発射口を開く。粒子砲を発射する気だ。艦橋が恐怖に駆られる。その時、ソウスケは考えることをやめた。

 諦めたのではなかった。もう、疲れたのだ。とうことは結局、諦めたということなのだろうか? いいや、ソウスケは最後の最後まで考えていたはずだ。だが、この瞬間、、ソウスケは自分の最後を確信したのだ。


「やらせるかぁぁぁぁぁッ!」


 クシャトリアはリヴェンストの放った粒子砲に突っ込んでゆく。閃光はクシャトリアに直撃。クシャトリアの装甲が溶解し始める。


「アリューン、大丈夫だよ。安心して」


 クロノは優しい声でアリューンに語りかけた。モニターには音声のみが伝わってきた。画面は既に灰色の横線が泳いでいるだけであった。


「俺は……ッ!」


 ソウスケは一人黙って、うつむいた。


 そうだ、僕は誰も守れないのか? いいや、最大限のことはしたはずだ。もうすぐ、僕たちも死ぬ。だから、もうどうしょうもないんだ。諦めるとかそういうことではなくて、これ以上、どう頑張っても前に進めない気がするんだ。

 もし、死んでアスナに会えたなら、馬鹿だと笑ってくれ。だけど、僕は今になって自信を持って、君に言えることがある。僕は全力で戦った、ってさ……。アスナ、もうすぐ会えるよな?


「うんん、ソウスケは頑張った。だから、あとは私に任せて」


 声が聞こえた。優しい、だけど、いつものように、子供っぽい声が。

 その時、ダブリス級の艦体から紅の光が差し、そして紅蓮の煙とともに一機のアテナがリヴェンストの前に現れた。クシャトリアを溶解していた粒子砲は紅の光によって、消え去った。

 現れたアテナは紅蓮のボディーをしていた。その姿はイフリートに似ているが、がっしりとした足があり、ボディーは若干スリムになっている。両手に焔刀を逆向きに持ち、堂々とした姿で立っていた。


―――無双のイフリート―――


「ソウスケは……やらせない!」


 確かに声が聞こえた。イフリートから聞こえる声。それはアスナの声。確かにそうだった。ソウスケは目を疑ったが、そこには確かにアスナがいた。結晶石に彼女の魂が残っていたのだ。微かに……それが覚醒。


「アスナ……」

「何、バカっつら見せてんのよ! ここにいるわ。あたしは……」


 イフリートは灼眼をリヴェンストの大群に向ける。紅蓮の焔を周囲に発生。イフリートを中心に渦を巻いている。その姿……まさに鬼神。

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