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【Chapter/51 リバース・オリンスト】その2

 諸国連合と中枢帝国の同盟軍艦隊は残存エルヴィス部隊の掃討を行っている。戦況は同盟軍艦隊の優勢。戦闘する意味を無くし、士気の下がりきったエルヴィス部隊の動きはぎこちない。動きの止まったアヌヴィスもある。

 同盟軍の勝利は間近に迫っていた。三機のワンオフ機のアテナも消沈して、錯乱している。特にガイアの護衛をしていたグラヴィドンは一切、動こうとしていなかった。ガイアを守りきれなかった自分への罪悪感だろうか。

 敵の砲撃を受けることも無く。ガイアの残骸の中に身を潜めている。業火のドラグルムは錯乱し、片っ端から敵も味方も攻撃している。精神崩壊を起こしていると思われる。

 そんな中、ダブリス級は中破し、航行も不可能なまま味方艦の護衛を受けている。


「ミナト!」


 ソウスケは医務室に倒れているミナトに駆け寄り、抱きかかえた。サユリも遅れてやってくる。ミナトの下半身からは大量の出血。床が鮮血に染まりきっている。ソウスケはそれに目を向ける。そこには自分の焦燥に駆られた顔が映っていた。

 ミナトはソウスケの右手を握って、微笑んでみせた。


「……もうすぐ死んじゃうから……もう、無駄なことはやめて」

「しっかりしろよッ! まだ……まだ生きてやるべきことがあるだろう!」

「……お父さんももうすぐ死ぬ。一緒のところに行けるんだよ?」

「まだだ! おい! 応急処置の準備を!」


 ソウスケは近くで成す術も無く立ち尽くしていた軍医に指示を出した。


「しかし、現段階で浸食現象の処置方法はありません!」

「僕は知っている! 中枢帝国にいたころ、同じような症状を持った人間を処置するのを見たことがある! 中枢帝国の艦に回線を繋いでくれ! オンラインで処置を開始する!」

「医療免許はあるのですか!? 中枢帝国軍人になる前に取った!」

「は、はぁ……」

「ノウハウはあるはずだ! 早くッ!」

「はい!」


 そう言うと軍医は数名の看護婦を連れて、奥にある医療機器を取り出しにいった。サユリはソウスケに駆け寄って「私にも何かやれることはありませんか?」と訊いた。


「じゃあ、ベットの上に乗せるぞ。両手のほうを持ってくれ」

「分かりました……こうですか?」

「いくぞ……ッ!」


 ソウスケとサユリはミナトの体を持ち上げて、ベットに寝かせた。ベットの上のシーツが鮮血に染まるのも気にせず、ソウスケはミナトの脈を計る。


「まだ、生きているな」

「……でも、もうすぐ死ぬわ」

「生きてサユリに言わないといけないことがあるんだろ!?」

「……知ってたの?」

「ヘーデさんから聞いた。ミナトのことを自慢の娘って言ってたよ」


 ソウスケはミナトの耳元で呟く。


「……そう」


 その時、後方の部隊のルーベリッヒから通信が入った。


「ルーベリッヒ艦長、何かあったんですか?」

「大変だ! 今、後続の部隊が謎のアテナの大群の攻撃を……ッ!」


 一瞬、ノイズが入る。


「つ……通信が……途絶えるぞ! く……そ……あれは……前方にオリンストの大群が……」

「オリンスト? 何だってッ!?」

「くそ……が……ガァァァァァァァァァッ!」


 通信はルーベリッヒの断末魔とともに途切れた。大破したダブリス級の後方に閃光が駆けた。そして、轟音。




「あれ……は?」


 紅のエルフェリードの残骸を背にして、クシャトリアは世界樹の反対側を向いた。そこには、目の前の宇宙を覆いつくすほどのリヴェンストの大群があった。無限に近く感じられる。どこの所属なのかも分かっていない。


 ただ、敵だということは分かった。


「アリューン、あのアテナは何者だ?」

「分かりません……ただ、味方艦は彼らの攻撃を受けているようです」

「やっぱり敵かよ……ッ!」

「どうしましたか?」

「もう一機がダブリス級に向かっている! 本体はあっちだ!」


 ダブリス級に高速で移動するアテナ……蒼のエルフェリードだ。エルフェリードは巨大なスナイパーライフルでダブリス級を護衛しているレウス級に狙いを定める。

 その時、エルフェリードのスナイパーライフルは縦に両断された。それと同時に漆黒の残像が見えた。そして、エルフェリードの機体を縦一直線に一刀両断。そして、爆発。

 その黒煙から現れたアテナ。黒金のマスティマだ。味方の信号をクシャトリアに送っている。


「あいつ……味方なのか?」

「黒金のマスティマ、ダブリス級への回線コードを教えて欲しい」


 その声はキョウジだった。

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