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【Chapter/50 未来への咆哮】その2

「……やらせはしない……もう、誰も」


 ミナトはダブリスとシンクロ。意識はダブリスに移行している。肉体的疲労は感じるものの、まだ大丈夫なはずだ。ダブリスは機体に群がっているアヌヴィスを一掃すべく、全身の砲門を開き再びホーミングレーザーを放った。

 ホーミングレーザーは周囲の敵を一掃する。ダブリスはガイアに向かって突貫。しかし、ガイアの砲撃がダブリスの各部に被弾。


「……まだ、大丈夫!」


 ダブリスはガイアが放った粒子砲を、Aフィールドの展開によって防ぐ。しかし、反動で動けなくなってしまう。その隙に、ガイアのホーミングレーザーがダブリスの各部を貫く。ミナトは全身に鋭い痛みを感じる。


 サユリがいるの……サユリを守らなきゃ……いけないから。だから……だから私は……ッ!


 ダブリスの右腕が爆発する。ダブリスはその右腕の破片を左手で掴んで、ガイアに投げつける。ガイアはAフィールドを展開するが、右腕の破片の幾つかが、艦体に刺さる。そして、紅の炎が噴出す。


「……まだ……なの?」


 高エネルギー体を確認。また、あの閃光を撃つ気だ。ガイアの周囲が異様なプレッシャーに包まれる。ダブリスはなおも突貫中。ガイアの砲撃により、ダブリスは両足を吹き飛ばされる。

 だが、勢いは一向に衰えず、ガイアの超高圧粒子砲の発射口に突っ込む。縦に割れた、その奥が光を集めている。ここはガイアの艦体の中で一番脆い場所だ。しかし……。


「……ぐッ!」


 ガイアの発射口は閉まり始める。縦に押しつぶされるような感覚がミナトを襲う。両足を失い、左腕のみが健在の今、この圧力に耐え切れず、ダブリスの頭部を支える首が、今にも折れそうな鈍い音を奏でている。

 左腕も被弾箇所が多く、関節に力が行き届かない。全身のホーミングレーザーも展開可能なのは僅か一基。それも多分、ガイアの弱点には届かないであろう。残されたのはダブリスの頭部にある超圧縮粒子砲のみ。


「あなたは、何の為に戦っているの?」

「……声?」


 ミナトの耳に少女の声が聞こえた。ミナトは返答する。


「……このふねに大切な妹が乗っているから……彼女を守りたいから」

「妹? 守る?」


 ダブリスのエネルギー供給が止まった。機体は灰色に戻り、眼の光も消えていった。力を失い、ダブリスはガイアに押しつぶされていってしまう。そして、ガイアの発射口の光が閃光に変わりかける。


「……それが私の義務だと思うから。お父さんもそうしてきたから」

「分からない……何でそうなの?」

「……それに、ソウスケもリョウもシュウスケもいるから……そして、ショウの帰ってくる場所を創ってあげたいから……」

「誰なの? 彼らは?」

「…………友達よ」

「友達……?」

「そう……あなたには分からないでしょう?」

「分からない? どうしてそういうものを持ちたがるの、人間は?」

「……馬鹿な生き物だから……よ!」

「そうなの。ありがと。早く私を殺して。無機質な私が怖い。だから……」

「……悲しいわね」

「うんん。なんとも思わない」


 ダブリスの艦体は軋み始める。装甲が剥がれてゆく。ミナトの下半身から鮮血が噴出してきた。侵食現象だ。だが、痛みは感じない。もうこれで終わるから……すべて。


「……そうね。まだ、私はここにいる。負けられない!」


 ダブリスは鮮やかな水色の装甲を取り戻す。左手の関節神経も自己修復されてゆく。ダブリスは左手で機体を押している上部を上げる。そして、沈んでいた頭部を持ち上げて、発射口を睨む。眼は輝きを取り戻していた。

 ガイアの発射口の光が死神の閃光に変わる瞬間、ダブリスの頭部は四つに割れて、そこからX字型の粒子砲が放たれる。粒子砲は発射口を貫き、ガイアの艦体まで一直線に駆け抜ける。


「サヨナラ……友達……欲しかったな」

「……できるわよ、何処かで」


 最後、少女は笑っていた気がした。そして、少女の一日は終わり、彼女の一生も終わった。たった一発の閃光によって……。

 こうして、エルヴィス軍の総指揮官、アルベガス・ラグーンは殉職した。世界樹のコアもエターナリア級とインフィニティッド級による、粒子砲の一斉射によって破壊された。地球奪還作戦は無事にフェイズ3を終了。


 だが、しかし……。

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