【Chapter/47 セカンド・ブレイク】その1
「敵艦隊、先行部隊を撃破! 諸国連合と中枢帝国の同盟軍であると……」
「世界樹防衛部隊……固めておけ。なに、焦る必要はない。フィンクス級の護衛に甲殻のグラヴィドンを。敵艦隊の殲滅に業火のドラグルム、双璧のエルフェリードを送れ。深緑のガイアの起動準備、急げ!」
アルベガスは各艦に的確な指示を送る。フィンクス級の側面部から三つのカタパルトが展開されて、三機のアテナが出撃した。一機はフィンクス級の前方で止まり、二機は敵艦隊に向かってスラスターを展開。
―――甲殻のグラヴィドン―――
フィンクス級を護衛するのは四機のうちでガイアの次に防御力の高い、重装甲型アテナ。頭部は巨大な胸部に隠れており、スライド式のモノアイだ。装甲は生物の甲殻のように何枚も重ねられており、両肩の突き出した部分は竜の頭部のように見える。大きな太股を支えるのには少々不安が残るぐらいに、細い脚部。太股から突き出したスラスターのおかげで機動力も十分ある。
「さて……そろそろ終わりにしようか? 深緑のガイア……でな」
フィンクス級の背後にある巨大な影。深緑の装甲に包まれた戦艦。
―――深緑のガイア―――
戦艦の形状をしたそのアテナは、フィンクス級の三倍の全長であった。鋭く尖った先端部分。バーニアは後部のみ。艦橋やミサイルポッドは突き出しておらず、内部に格納されている。その性能は未知数。四機の中で唯一、オリジナルのアテナだ。エルヴィスが隠し持っていた巨大大量殺戮兵器。
「私はガイアに移る。移動用シャトルの準備をしろ」
「敵艦隊……なおも沈黙を保ったままです。あと十二分十七秒後にフェイズ2を開始します。それまでクシャトリアにて待機してください」
「こっちに来れないの?」
「仕事です! 仕事!」
「そうかい……」
クロノは少し不満げな顔をして、コックピットの右側に置いてあったブルーミントガムを口にした。弾薬の補給も済んだようだ。心なしか、機体が少し重たくなった気が、クロノにはした。
「クシャトリアに何か追加装備を付けたのか?」
「はい、機体の重量は重たくなるでしょうが、アーマードパックを装着させました。これで多少なら攻撃を受けても大丈夫です。あ、あと、背中に装備させたのはクリーナー弾頭ミサイルです」
「クリーナーだってぇ? 冗談はやめてくれよ……」
「いえ……おそらくフェイズ2とフェイズ3の間では、ろくに補給もできないでしょうから……」
「これで世界樹のコアを破壊しろって?」
「ちゃんと作戦概要書、読みました?」
「あ、ああ、少しは読んだな」
「少しじゃダメなんです! もおっ! えーっと、簡単に説明すると……世界樹のコアを守る装甲は二層構造になっています。これを破壊するには少なくともクリーナー二発を撃ち込まない限り、破壊はムリでしょう。そして、第二層も同じくそれぐらい……クリーナー一発は単純計算でいくと、粒子砲二十五発分に相当するエネルギーを持っています。だから、こうやって……なんです!」
「良く分からないな……まぁ、要は世界樹にこいつを撃ちこめば良いってことだろ? 簡単だ。やってやる!」
クロノはクシャトリアの機体チャックを行った。脚部ミサイルポッド、アンカー粒子砲、機関砲、メインシステムオールグリーン。万全だ。
クシャトリアの両翼には新たにジェットパックが装備されて、コックピット付近には強化装甲が灰色の張られている。クリーナー弾頭ミサイルは背中に二基、付いている。そこに何重にも装甲が重ねられていた。
「大丈夫ですよ、クリーナー弾頭ミサイルはロックを解除しない限り、爆発しない構造になっているので……御武運を……って、少々お堅いですね!」
「ああ、そういうのは「いってらっしゃい」でいいんだよ」
「じゃあ……いってらっしゃい、クロノ」
「分かった、いってくるよ……整備班、カタパルトの展開頼む! 早めに出て、機体を馴らしておきたいんだ」
クロノがそう言うとカタパルトが展開される。それに脚部レッグを固定して……出撃。
「蒼穹のクシャトリア、クロノ・アージュ……出る!」