【Chapter/46 ファースト・アタック】その3
地球奪還作戦が開始された。作戦概要は以下の通りだ。
フェイズ1・エルヴィスの先行部隊を殲滅。
フェイズ2・世界樹防衛部隊の攻撃回避しつつ、防衛ラインを中央突破。
フェイズ3・突破した戦艦が、世界樹のコアに向かって粒子砲を発射。
フェイズ4・世界樹の破壊を確認後、士気の低下した残存部隊を殲滅。
「諸国連合第三艦隊所属、ダブリス級。粒子砲の冷却準備! ミサイル、砲門、開け! ジークフリード発射用意!」
ダブリス級の両側に十七隻の戦艦が並んでいる。射程圏内まで、あと七百メートル。前方にはベリクス級十二隻とアヌヴィス七十八機。ダブリス級は側面のミサイル発射口を開ける。ジークフリードの砲門も開け、照準を前方のベリクス級に向ける。
射程圏内に……入ったッ!
「ミサイル……ってぇぇぇぇぇぇぇぇッ!」
ソウスケの号令とともにダブリス級を始めとする、戦艦から一斉にミサイルが射出された。無数のミサイルは敵艦隊に突貫。青い煙が美しい無数の弾道を描き、そして弾道は消えた。その瞬間、敵艦隊は焔に包まれた。しかし、ダブリス級から見えるのは、オレンジ色の爆風のみ。
「続いて、ジークフリード……発射ァッ! 時間差で粒子砲…………てぇぇぇぇぇぇぇぇッ!」
ダブリス級のジークフリードが火を放つ。先と同じように各艦も大砲を撃ちつくす。そして、瞬時に粒子砲を装填。発射。
しかし、半数以上の敵部隊は各艦の砲撃を回避。しかし、時間差でやってきた、巨大な粒子砲の光にはなす術もなく消えていくしかなかった。敵艦隊の三分の二は削がれた。
「クシャトリア、発進準備、いいな?」
「へいへい、いつでもドーゾっ!」
モニターにクロノの顔が映る。そして、クロノは親指を立てて、笑ってみせた。あえて、彼は敬礼をしなかったのだ。
「アリューン、帰ってきたら……」
「エッチィなことは嫌ですよ?」
「いてて……そう言われるとなぁ……」
「キスぐらいなら、良いですよ?」
「じゃあ、じっくり味あわせてもらうよ……帰ってきたらなァッ!」
「はい!」
ハンガーが開き、クシャトリアの機体の前にカタパルトが現れる。それにクシャトリアは足を掛けて……。
「クロノ・アージュ。蒼穹のクシャトリア……出るッ!」
勢い良く発進。そして、クロノは前方のアヌヴィス五機に照準を定めて―――ミサイルトリガーを引いく。クシャトリアの脚部ミサイルポッドから無数のミサイルが射出される。ミサイルは回避しようとするアヌヴィスの尻に、しつこく付きまとう。そして、互いの弾道を交差させてアヌヴィスの本体に突撃。アヌヴィス、ミサイル共に爆沈。
「やりぃ! これが愛の力……てかッ! 幸運の女神さんよ!」
クシャトリアは続いて両翼のアンカーを射出させて、七機のアヌヴィスに狙いを定める。
「七機……やってやるか!」
クシャトリアのアンカーは一機のアヌヴィスを捕らえる。アヌヴィスの本体に高圧電流が流れる。錯乱したアヌヴィスのパイロットはマシンガンのトリガーを、むやみやたらに連打する。
アンカーに捕らえられたアヌヴィスは、マシンガンを乱射。アンカーは推進力を上げて、近くのアヌヴィスにぶつける。結果、二機ともに爆散。
そして、クシャトリアは脚部ミサイルポッドを再度展開。ミサイルを撃ちつくす。ミサイルは四機のアヌヴィスを道連れに。しかし、残り一機は全てのミサイルを回避した。
「やるな……だがッ!」
残った一機のアヌヴィスは背後に違和感を感じる。それはクシャトリアのアンカーだった。クシャトリアのアンカーはアヌヴィスの本体を貫く。アヌヴィスからは燃料なのか、搭乗者の血液なのか分からないものが噴出し、宇宙空間に触れて球体状に形を変える。
そして、爆発。その煙の中から見えたのは鬼神だった。
「今日の俺はツいてるな……」
「クロノさん、フェイズ1……敵全艦隊撤退により完了。十分後にフェイズ2を開始します。クシャトリアは弾薬の補給をお願いします」
「分かった! クシャトリア、ダブリス級に着艦する」
クロノはクシャトリアのシステムを着艦モードに切り替える。前方に見えたのはエルヴィス軍の艦隊の残骸であった。そこには無数の亡骸が漂っているのであろう。
フェイズ1、完了。エターナリア級を中心とする艦隊は世界樹に向けて、前進中。世界樹を守るのは数百機ものアヌヴィスだ。果たして、それだけの数の中央を突破できるのだろうか?
【次回予告】
地球奪還作戦はフェイズ2に移行する。
そんな中、エルヴィスは四機のアテナを戦場に送り出す。
業火と遠雷と甲殻、そして……。
やはり、人類は永遠の平和を望むのであろうか?
次回【Chapter/47 セカンド・ブレイク】






