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【Chapter/46 ファースト・アタック】その2

「ショウ・テンナ。不安ではないのか?」

「不安……なのかもしれません。ですけど、ナギサ自身が望んだことだから、俺が止めさせる権利はありませんよ」


 ショウはキョウジにそっと微笑んだ。もう四時間ほど経っている。外はどうなっているのだろうか、と

も考えてしまう。ここまで深いところだと、通信機器は全てイカれてしまっている。

 ダブリス級やヴァルキリー級は無事なのだろうか? いや、それよりも……すでに諸国連合艦隊は全滅しているかもしれない、という不安を抱いた方が良いのかもしれない。


「キョウジさんは何で、エルヴィスのスパイなんかをしていたんですか?」

「ああ、そうだな。リューレンって知っているか?」

「はい。たしか、地球奪還作戦の最高責任者だったような……」

「彼は私の師匠だ。俺は親に捨てられて、リューレンの元に引き取られた。彼は私を弟子にしてくれると言ってくださった」

「それで、あなたは……」

「剣術を習っていてな、彼から。ある日、エルヴィスの脅威について聞かされた。何もかも知っていたのだ、彼は。そして、私にマスティマを渡してくださった……。それを使って、エルヴィスに潜り込めと……」


 キョウジは近くのマスティマの方を見た。先の戦いでだいぶ、傷ついている。


「大丈夫でしょうか? みんな……」

「君の仲間のことはあまり知らないな。だが、そんな簡単にやられることは無いだろう。そう考えていないとな……」

「希望的観測ですね」

「そうでもしなければ、人は生きていけないからな」


 キョウジはそう言うとモノリスのほうを見つめた。




「ようやく……我々の悲願が達成される……。アルベガス一族の悲願だ。これこそが人類の救済。これこそが……新世界の誕生だ」


 アルベガスは旗艦であるフィンクス級から、世界樹を眺めて言った。世界樹は、エルヴィスの持つ、鍵によって目覚めた。議会場のような艦内。そこは異様な空気に包まれていた。

 誰もが、世界の救世主となり導く。彼らはそう考えているのだ。


「あとは騒がしいハエを叩くだけ……防衛ライン、固めておくように!」


 艦内にアルベガスの号令が響き渡った。




「……作戦開始時間まであと一時間よ? 持ち場についておかなきゃいけないじゃないの?」

「うんん、もう少ししたら行くわ」


 サユリはミナトの手を強く握りなおした。ミナトは少し微笑んでみせた。


「お父さん、もう駄目だろうな……悪性の腫瘍があって……現代の技術だと、こうやって延命措置をしているだけで精一杯。目も……もう開かないだろうって……」

「……悲しいの?」

「悲しいよ……だけど、いつまでも泣いてちゃダメ。そう、お父さんに言われたもの」

「……サユリ……言っておきたいことがあるの」

「へ? 何?」

「……私、ダブリス級のコアになってから歳をとっていないの。ナギサと同じように……。本当は十六歳」

「私の一つ上なんだ……大丈夫、そういうこと分かっているはずだから……。この戦いが終わってダブリス級の結晶石を潰せば、大人になれるんでしょ?」

「……終わったらね」

「大丈夫! ソウスケさんや、クロノさんが頑張ってくれるよ!」

「……うん!」

「じゃあ、そろそろ行ってくるね」


 そう言うとサユリは艦橋へ戻っていった。艦橋ではシュウスケとリョウが各部火器の最終調整を行っていた。アリューンは各艦との通信テストを行っている。サユリはオペレータ席に座って、一息つく。


「遅れてごめん! えーっと……」

「モニターの調整、頼むよ」


 シュウスケはサユリに指示した。しばらく作業を続けていると、シュウスケはサユリに話しかけた。


「なぁ、終わったら、三人でバンド組まない?」

「遠慮しとく……んん、考えとくわ」

「お前の歌、好きだからな。さぁーって! 仕事仕事!」

「あのさ! シュウスケ……」

「なに?」

「どうするの? この戦いが終わったら……やっぱりトウオウ高校に復学するの?」

「うーん、あの学校のセンコーはいけ好かない奴らばかりだからなァ……。でもやっぱり、復学すると思う……サユリはどうなんだ?」

「私は……まだどうとも決めていないわ」

「それで良いと思うよ……サユリはさ」


 シュウスケは横目でサユリを見ると、作業に戻った。しばらくすると、ダブリス級艦長であるソウスケが艦長席に座った。作戦開始まであと三分。ソウスケは席から立ち上がる。


「みんな、僕たちは勝つだっろう。何故ならば、僕たちには絆があるからだ! エルヴィスの奴らは、自分のエゴを戦いの士気に変えている。それも正しいのかもしれない。統一されたかに思う、彼らの気持ち。だが、それはバラバラだと、僕は思って……いや、確信している。だけど、僕たちは違う。皆、気持ちは一つだ。大切なもの……祖国、故郷、両親、兄弟、恋人、妻子、親友、それを守るために戦うのであろう! 僕にもある! だから、勝つんだ、僕たちは! この先、世界がどうなるなんて分かりゃしない! 分かることは一つだけだ。確実に僕たちは……勝つということだ!」


 ソウスケはモニターを見つめた。あと十秒。先の演説で分かった。皆、心は一つだと。エルヴィスの艦隊が見えてきた。ダブリス級のシステムを戦闘モードに移行する。


 アスナ、僕は変わってみせる。君を守れなかった償いを……してやる!


 そして、その刻がやってきた。午後六時十七分、作戦開始!

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