【Chapter/5 冷酷な眼光】その2
それは突然だった。ショウがダブリス級に帰ろうとしたとき銃声が鳴り響いた。と同時に爆発音も。
辺りに煙が立ち込める。
近くだ。
その爆発の近くにナギサがいる。
ショウには分かった。これもオリンストの力だ。
ショウは鞄の中から銃を取り出した。いざというときに使えとヘーデがくれたヤツだ。まさかこんな時に役に立つとは……。
弾を装填し、ショウは銃声と爆発のあった所に向かった。
次々と爆発音がし、サイレンも鳴り響く。近くにいる兵士に聞くと中枢帝国によるテロらしい。
「ナギサは近くにいるはずなんだけど……」
ショウは近くにあったドアを開けた。鍵は閉まっていない。
次の瞬間、ショウの目の前に映った光景は鮮血の血に染まった事務机。そして、そこには頭を銃で撃たれた、この軍事基地で一番の権力者グラウスの亡骸が横たわっていた。
横には銃を構えたままのアマズの姿が。
「父さん! いったいこれはどういうことだよ!」
ショウは目を疑っていた。しかし、考えられないことではない。
「見ての通りだ! だが、これは正しいことだ! お前の出世道を開いてやったんだ……テロのドサクサに紛れてこいつを殺せば私はこの基地でナンバーワンの人物となる! そしてお前の将来も約束される!」
「黙れ! 人を殺しておいて! 俺はあんたを許さない!」
狂っている。テロのドサクサに紛れて殺人がばれないとでも思っているのか、アマズは?
答えはイエスだ。
頭がおかしくなっている。どうしたんだよ!
「分かってくれ……ではないとお前を撃つ!」
「くそっ!」
ショウは自分の方に銃を向けるアマズを見て、銃を構える。その銃口は実の父親に向けられていた。
「撃つぞ!」
アマズは引き金を引く。
銃弾は空を切ってショウの頬をかする。
本気だ。自分を殺そうとしている。
「今度、撃とうとしたら……」
ショウがそう呟いた時、またアマズは銃口をショウに向けた。
撃つしかないのか? 実の父親を……。
撃ちたくない! 撃ちたくないけど……どうしょうもないじゃないか!
嫌だ。撃つな! 撃つな! 撃つな!
でないと殺されるんだぞ! 実の息子に!
やめろよ! やめろよ! やめろよ!
しかし、アマズの人差し指は引き金を引こうとする。
「くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
刹那、ショウは引き金を引く。
その弾はアマズの頭に当たり、そこから鮮血の血が吹き出る。
実の父親は倒れた。その目は閉じていない。
「ショウ先輩!」
ナギサは引き金を引き呆然としているショウを見て言った。
「ナギサ……俺、取り返しのつかないことをやってしまった。人を殺してしまったよ……」
ショウは呟く。
乾いた声で。
「……今は外から敵が来ています。中枢帝国の奴らがこっちでテロを起こして……」
「分かったよ。俺一人の都合でみんなを死なせちゃダメだもんな……ナギサ、手を貸して」
「はい……ごめんなさい」
ショウは分からなくなっていた。これは自分が悪いのか?
正当防衛?
どちらにしても自分は人殺しだ。そんなの気づかなかった。人間を自分の銃で殺して初めて分かった。
人殺しだと……自分がオリンストに乗ってから。
「こい、白銀のオリンスト……」
人殺しはそう呟いた。