【Chapter/41 月面上の死闘】その2
マスティマはリューレンのいた展望台の前で膝を落とす。コックピットから現れたのはキョウジだった。キョウジは冷たい月面の土を踏み、展望台の中に向かった。そして、頭から鮮血を流して倒れているリューレンを見つけて、駆け寄った。しかし、キョウジはもう、諦めていた。
頭を銃で撃たれており、心臓もとうに止まっている。キョウジはリューレンの前で合唱をし、リューレン体で隠れていたノートパソコンを、見つける。通信用のノートパソコンを隠していたのだ。
「師匠……やっぱり……」
キョウジはそう言うと、リューレンの死体の方から目を逸らして、ノートパソコンの中からデータチップを取り出すと、それを地面に置く。そして、銃を取り出して、装填。データチップを撃つ。データチップは木端微塵になり、あたりに四散する。
「憂いな……いや、この世界を憂うとしようか、では」
キョウジはリューレンの死体に向かって一礼をして、その場を後にした。
「宇宙のハザマが目覚める前に、渚の行動を止めなければいけないな……」
そう呟き、展望台に向かって敬礼。
「二対一でも……負けるわけにはいかないんだよッ!」
ショウは激しく咆哮。そして、オリンストはそれに答えるように、マキナヴにぶつかり、吹き飛ばす。マキナヴが体勢を立て直す前に、オリンストは左手から光の剣を発生させて、マキナヴの胸部の装甲を切り裂く。
「ナギサッ! こんな奴、俺が!」
「違う! 私は彼女のことが分かるの! ずっと前の記憶も……何があったかっていうことも! でも、感じられないの! 一つになれないの!」
「どういうことだ!」
「分からない……記憶の中の《感情》が思い出せない!」
その時、後方からアグラヴァイが接近。両手持ちの大剣を振りかざす。それをオリンストは白刃取りをし、腰のレールガンを展開。発射。アグラヴァイの大剣は木端微塵に砕け散る。
アグラヴァイはオリンストから距離を取って、背中からもう一本の大剣を取り出して、オリンストに向かって構える。
「コックピットは狙わない……迷っているの? でも、なめるなぁぁぁッ!」
イリヤの叫びとともに、アグラヴァイは脚部のバーニアを展開。高速でオリンストに突貫。オリンストはそれを受け止めようとするが、弾かれる。そして、後方から来た分離状態のマキナヴの左腕レーザー刀が、オリンストの右腕を切り落とす。
「隙あり…………落ちろ!」
「ぐっ……まだ……」
そして、分離されていないマキナヴの右腕レーザー刀がオリンストの右腕に斬撃。オリンストの右腕は宙を舞う。その時、マキナヴとアグラヴァイに帰還命令が出る。月の侵攻は量産型に任せておけ、とのことだ。
「こんなタイミングで……」
「イリヤ、ついてきてくれる?」
「うん……渚のためならーーーついていくよ。どこまでも」
「ありがと」
マキナヴは月面に墜ちたオリンストを見下げ、向かう。既にパイロットの意識は無い。マキナヴはオリンストの前に落ち立つ。しばらくすると、オリンストは消えて、その場所にはナギサとショウが横たわっていた。
これが私……これが私なのね……やっと会えた。
そして、渚は降りてナギサの元へ向かい、脈を確かめる。生きているようだ。ナギサの右手は、ショウの左手を握っていた。イリヤもそこに降り立った。そして、渚と同じ顔のナギサに驚く。
「本当だったの……渚と同じ存在の人がいるって」
「そうよ……私の半分の存在。つまり、今の私は半分ってわけ。だけど、私の存在は半分でいいのよ。私には神名くんが好き、っていう感情があるけど、こいつには無い。腹立たしいけど、それが普通なのね」
「神名くんっていう人……友達になってくれるかな?」
「大丈夫、神名くんーーー優しいもん」
「うん! 私、運んでおくわ」
そう言うとイリヤはナギサをマキナヴの近くまで運んでいった。残った渚はうつ伏せになって気絶している、ショウの方を見下げる。右手でショウを表にする。
「こいつが……ショウ・テンナ。あんたのガールフレンド、貰っていくね」
そう言うと、渚はナギサを抱えて、マキナヴに乗り込んだ。
同時刻、ヴァルキリー級は敵と交戦中であった。オリンストの反応が消えた以上、月を捨てて地球へ向かうほか無かったのだ。
「エミル、拡散弾、追尾ミサイルで道を開くわよ!」
「分かったよーっ! 敵座標を確認、飛んでっけ!」
ヴァルキリー級の両サイドから二基の巨大な拡散弾が射出される。一秒間隔を開けて、無数の追尾ミサイルが射出。拡散弾は敵戦艦に命中。一隻を撃墜。追尾ミサイルは無数の鮮やかな弾道を描き、アヌヴィスに迫る。回避行動を取るアヌヴィスだが、後方から接近する追尾ミサイルに飲み込まれて、爆散。五機を撃破。
しかし、ヴァルキリー級を取り囲むアヌヴィスの、ミサイルの一斉射が襲い掛かる。ミサイルは滑らかな曲線を交わりながら、ヴァルキリー級に突貫。そして、爆発。
「エンジン部をやられました! 航行不能です!」
「緊急着陸用意するよ!」
「岩の間に隠れて! なるべく見つからないように!」
「近くにハンガーがあるよーっ! そこに逃げる?」
「本当に? 分かったわ、基地に着艦。整備班、損傷部を確認の上、緊急補修に取り掛かって!」
ミウの号令とともに、ヴァルキリー級はその沈む体を月面に擦らせて、ハンガーに逃げ込む。そして、砲台を後方に向けて、砲撃。ハンガーへの出入り口は瓦礫の山によって塞がれた。人が入れる隙間はできたものの、アテナの大きさが入ることはまずできない。
「ふぅ……ひとまずは逃げ切れたわね。整備班、急いで!」
【次回予告】
そして、命は終焉を迎えるであろう。
この世界に信じたものは一つだけだった。
少女は終焉の先に何を見るのか?
そして、女神は墜ちる。
次回【Chapter/42 命は流れる】