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掃除

 俺は中に入り、電気をつける。


「数にして二十体ってところか」

 

 鐘の音に反応して襲い掛かってくるゾンビの首を日本刀で切り落としたが、一体の首を切り落としたところでまだまだ数はいる。

刀を背中にしまい、腰にあるデザートイーグルを構える。


「場所が悪いな......」


場所を入り口手前から奥の方に移動し、移動しながらゾンビどもの頭を撃ちぬいていく。

最後の一体を倒したのち、次に俺が考えたのはこいつらの後始末だった......


「キッチンに隠すか......」


俺は死んだゾンビどもをキッチンの奥に隠し、血はモップで拭き取れるところだけふき取り、何とか少女を連れてこれるほどにきれいにすることができた。


「待たせたな、入れるぞ。」


助手席側のドアを開けると、待ちくたびれたような顔をして少女が車から降りた。

車のエンジンを切り、俺と少女はレストランに入った。


「レストラン来たって......作るのは俺だろ?」

「お兄さん料理できるの?」


メニューを見ながら少女がそう言った。

自信がないが、どうしても彼女の前では強がりたい俺は、半袖なのにそれをまくる仕草をしてこう言った。


「シェフに任せな、お前が食いたいもんなんでも作ってやるよ。」


キッチンに行けば何かしらの作り方のマニュアルくらい乗ってると思う。

俺は軽く作れるであろうポテトフライを作ることにして、少女の方を見る。


「俺はポテトフライにするけど、お前は?」

「私は......オムライス!」


少女の要求に俺は頷き、キッチンに移動した。

キッチンに着いたところで俺は気づいてしまった。


――ガスが使えねぇ――


 ダメもとでガスコンロの元栓を開け、ひねってみるが、火が出ることはなく音もならなかった。

俺は頭を悩ませた。

料理はできない、が......少女を笑顔にさせてあげたい。


 キッチンを漁るとライターが至るところにあった。

そのライターをかき集め、また散らばっていたチラシや紙を集めてガスコンロの上に置いた。


「さぁ、これで着火だ。」


俺は燃えやすい紙に油をかけ、ライターを付ける。

するとその火は油に引火し、ついに紙を燃料にして燃え上がった。

火事になるかもしれないが、すぐ調理をすれば大丈夫だろう


「パパっと作るか。」


 俺はフライパンを使ってオムレツにケチャップライスを作り、皿の上に盛り付けた。

マニュアルのおかげですぐ作れたのはかなり助かった。


 フライヤーが使えないのでフライパンに油を注ぎ、熱くなってきたころに冷凍のフライドポテトを入れて揚げる。

いい色に仕上がったところでまたさらに盛り付け、次の難所に俺はぶち当たった。


――どう止めるか......火を......――


 俺はキッチンにあった消火器で燃え上がる炎を消すことにした。

消火器の煙を炎に当て続け、だんだん出にくくなり、ついにでなくなったタイミングで、同時に火が消えてくれた。


 一大事も何とか収束し、完成した料理を少女のいるテーブルに持っていく。

キッチンから香ってきたオムライスの匂いに腹を空かせていたのか、オムライスの入った皿をテーブルに置くや否や、スプーンを取り出したので、


「おい、いただきますしてからだ。」


 俺は軽く叱った。

しかし少女はスプーンを持ったまま、楽しみにしながら俺が席に着くのを待っている。


大体の準備も済ませ、俺も席に着いた。


「んじゃ、食うか。いただきます。」

「いただきます!!」


 久しぶりに食べたそのフライドポテトは、いままでレストランで食ってきたどのフライドポテトよりも美味かった。

自分で作ったからというのもあるのだろう。


少女の方を見ると、丁寧に、しかしとても美味そうに俺が作ったオムライスを食べていた。


「おいしい~!!ありがとうお兄さん!!」


目を閉じて笑顔で喜ぶ少女に、頬が緩む。


――久しぶりに、楽しいな――


ゾンビの殺戮とは違う、ほのぼのとした幸せが、そこにはあった。

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