安全地帯
俺は扉をノックした。
するとドアが重々しく開き、中から自衛隊のような人が出てくる。
「生存者か!」
「噛まれてねぇ。俺もな。」
それだけ言うと自衛隊の一人が扉を一度しめる。
そしてまた扉が開くと、自衛隊の人が俺たちを招いた。
「まだ生存者がいることに驚きだ。」
独り言のように呟くそいつをよそ目に、俺は壁の向こう側の世界を見て驚いた。
「まだ生きてる奴はこんなに...」
そこには生存者がまだ各々のしたいことをしていた。
ご飯を食べているもの、寝ているもの、家族と連絡を取ろうとしているもの....
「よく生きてここに来てくれた。歓迎しよう。」
自衛隊の中でも特に偉そうなやつが俺たちの前に来て、握手を求める。
「楽勝だ。先に言っとくが俺はここにとどまる予定はねぇ。」
そいつに言い放つと、自衛隊の間でざわめきが起こる。
「それはなぜかね」
当然のように偉そうなやつが俺に聞いてくる。
「簡単な話だ。ここより外の方が」
__楽しそうだからな__
にやついたのが自分でもわかった。
「代わりと言っちゃなんだが、こいつをここに頼みたい。赤の他人だ。」
そういって俺は少女の背中を押して少女を安全地帯に置いておくように頼む。
すると少女が俺の服の袖をつかみ、こっちを見つめてきた。
「やだ!お兄さんと離れたくない!あたしもついてく!」
どうやら完全になつかれたようで、一人でここに残ることを拒否した。
「では君たちの要件は?」
「少し、食料品を分けてくれねぇか」
そういうと自衛隊員は、食料品や衛生用品を準備し始めた....
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「悪いな、せいぜい頑張ってくれ。」
嫌味を混ぜながら俺は「あえて」安全地帯を後にした。
さっきも言ったように、安全地帯で胡坐をかくより、死体の上に座っていたいからだ。
それに少女がついてくるのは少し重荷だが、仕方ない
俺たちの両手にはしばらく持ちこたえられそうな量の食料と飲料、そしてティッシュやトイレットペーパーがある。
__ここがつぶれるのも時間の問題だな。__
はるか遠くから聞こえる、ゾンビどもの叫び声で、俺は何となく察した。
「困ったらまた来なさい!」
偉そうなやつが俺の背中に向かって言った。
「そりゃどうも。」
車に荷物を詰め込み、俺たちはその場を後にした。
「なぁ、どこに行きたい?」
ピクニックに来たかのように、少女に聞いてみた。
「んー、お洋服買いに行きたい!」
にこにこと笑いながら、俺を見てそう言う少女を見て、俺は車を走らせ始める。
「じゃあ、俺のとっておきの洋服屋に行くか。」
そうして、俺たちは完全に安全地帯を後にした。




