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誓いのキスまで、あと3秒。

作者: 藤嶺 悟

「はい。誓います。」

 白く、清らかな部屋に響く、一生の愛を誓う言葉。


『あぁ、本当に結婚するんだ。』


 私は実際にこの日が来るまで、実感がなかった。

 田舎育ちで近所に暮らしてた私と君は、ずっと一緒だったよね。


 そうえばさ小学校の帰り、天気予報で夕方は大雨って言ってたのに、私が傘忘れたの覚えてる?

 君が大人用の傘持ってきてて、入れてくれたんだよね。それに君は優しいから、私が濡れないように傘さして、自分の肩濡らしてさ。


 中学生になってさ、お小遣い増えたからって夏休みにふたりで自転車乗って、駄菓子屋さんで大量にアイス買ったの覚えてる?

 親にバレないように急いで食べてさ、君はお腹壊してたよね。


 高校生になっても近所のN高にふたりで進学してさ、3年の体育祭覚えてる?

 借り物競走で君が一直線に私のとこ来てさ、手を引っ張っていったの。

 紙に書いてる文字見たら、『アクセサリー』って。

「誰が装飾品じゃっ!」ってリアクションしたら先生も笑ってクリアにするし。


 そんな君とは出会って、気付けば20年。

 お願いしてないのに、時は勝手に進むんだね。


 今、私はこんなに平常運転なのに、君は目の前で、真っ赤っか。

『全く、先が思いやられるなぁ。』


 そういえばさ、大人になって知ったよ。私がドジで忘れっぽいから、雨の日はわざと大きい傘を持ち歩いてたんだってね。私を濡らさないために。


 大人になって知ったよ。あの夏の日、君はあんなに楽しそうだったのに、本当は朝から体調が悪かったってさ。


 大人になって知ったよ。借り物競走のときどんな内容でも私にするって決めてたんだってね。私のリアクションがなんとかしてくれるって思うなんて、やっぱり君、どうかしてるよ。


 本当に、ふたりで馬鹿なことしたね。なんだかずっと兄弟みたいでさ。

 今までも幸せだったけどさ、幸せの絶頂って、今の瞬間のことを言うんだろうね。


 だからね、彼が死ぬまで、幸せにしてあげてね、お姉ちゃん。

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