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ぼくたちは減量ができない

俺の名前はカズキ、ミートキングダム第一王子にして英雄「メタボリック」の称号を賜りし勇者だ。


ある日心筋梗塞で命を落とした俺は、友達が居なさそうで滑舌の悪い自称女神にダイエットをするよう強制され異世界「地球」の日本と言う国に飛ばされてしまう。


話数が進んでもなかなかダイエットが先に進まない事に苛立った女神ムネモシュネエウプロシュネテルプシュコラーは、俺のダイエットコーチに世紀末モヒ太郎を就任させたのだった。


「フシュー!フシュー!に、ニグぅ…!お前のニグを寄ゴセー!!」


「うっぎやあああああ!恐い恐い恐い恐いっ!!」


「腹のニグ切り取らゼローっ!!」


「意味わからん意味わからん意味わからん助けて〜!!」


人を追い回して追い詰めてナイフで腹の肉を切り取るのが趣味とか言う絶望的な性癖を持ったおっさんに追い回されてるこの状況は一体なんなんだ!?

俺は仮にも一国の王子だぞ!?


「てかお前っ!!敬語キャラじゃなかったっけ!?話変わりして設定忘れたの!?」


「フシュ……?」


あ、止まった。


「えーと…。」


ん、あれ?なんか固まってる?

よし今のうちに逃げ…


「…貴方の腹の肉を切らせなさーい!!フシュー!!」


普通に修正してきたあっ!

キャラクター普通に修正してきたあっ!

そして何事もなかったかのように追い掛けてきた!!


「お肉寄こしなサーイッ!!」


「いやああああああああああああっ〜〜」


30分後


「ぜぇ…!ぜぇ…!な、何とか逃げ切ったけど…も、もう無理…!!」


息も絶え絶えな俺に自称女神が微笑みかける。


「あらあら、良く生き残りましたね。もうてっきりトンカツになっているかと。」


「何言ってんの!?恐いんだけど!!」


「あら?世紀末モヒ太郎は天界では有名なはトンカツ屋の店主なのよ?毎日ランチタイムには長蛇の列が出来るのよ?」


「いや知らねーよ!…え?天界??アイツ天界の住人なの??てっきり魔界の魔物か何かだと…。」


「天界の住人と言うか、彼は大天使よ?食と英知を司る大天使。」


「はっ??大天使!??」


俺の中の天使の概念とイメージがドッタンバッタン大騒ぎして崩れ去った。


「大天使に追い回されるなんてある意味究極のVIP待遇じゃないですか。やりましたねマスター、さすが一国の王子さまですねww」


肩の上のナビゲーターさんが半笑いでおちょくってくる。


「ぐぬぬぅ…。しかし何だったんだ今の逃走中の体の不調は?速度は遅いし、少し走ると息は上がるし、汗はドバッドバ出るし、今も全然疲れが取れないし。心臓はバクバク言ってるし…。」


「ですからマスター、昨日ブタ小屋…トイレでも説明しましたが…」


コイツ今さらっとブタ小屋って言ったな。


「この世界には魔力が存在しないのですよ。マスターがミートキングダムで使用していた足を速くする魔法も、持久力を付ける魔法も、汗臭い匂いを消す魔法も、この国 日本では使えないのです。だから臭いのです。」


マジか…排泄魔法の【ベンヨサ=ラーバ】だけでは無く、速度魔法の【ハシレヨン=クロウ】や持久力魔法の【ブラック=シャチーク】も使えないとは…ん??


「待って!?…え?俺、臭いの?」


「まあぶっちゃけドブ臭いです。」


「いやいやいや!俺の汗が臭いわけないじゃん?ミートキングダムの女達は…キャーカズキ王子の体臭今日もフローラル〜とかカズキ王子の汗の匂いは早朝の新緑の様に清々しいでゴザル〜とか言ってベタベタしてきていたんだぞ??」


「それはマスターの国の住民の美的センスと言うか文化と言うか民度というか、もろもろがトチ狂っているからですね」


「人の国disり過ぎじゃない!?やめてくれない!?」


などと会話をしていてもいっこうに心臓のバクバクが治らない。

あーヤバイ、マジヤバイ、言葉にならない。


「とにかく!こんなメチャクチャなダイエットをしていたら心筋梗塞が発病する前に心臓になんらかの異常をきたして死んじまうわ!アホか!何か別の方法にしてくれよ無能ボンクラクソ女神!!」


余りの不条理に俺は思わず叫んだ。


「…は?」


あれ?

…無能ボンクラクソ女神がメチャクチャ睨んでる。

とても女神とは思えない有り得ない表情で睨んでる。

引くわ〜。


「えっと、何か他の方法は無いのかな〜?」


「…。」


無能ボンクラクソ女神呼ばわりしたのがよっぽど気に食わなかったのか完全に俺の呼び掛けを無視している。

おかしいな、真実しか言って無いのに。

滑舌も悪いし沸点も低いとか神としてマジでどうなんだコイツ。


「ふーんだ!」


うわぁ糞めんどくせえええぇ…


「プンプンだ!」


何言ってんだコイツ?


くそ、めんどくさいけど背に腹はかえられない。


「あー、えっと…優しくて慈悲深い女神様、哀れな私の為に何か良いアイディアを頂けませんか?」


自分でも顔が引きつっているのが解る。


「え?…えー、仕方ないなぁ。でもな〜、どうしようかな〜。」


あれ?なんかイキナリ顔を赤らめてウネウネし始めたよ?キモいな。

いやしかし、これは…。


「さっきの暴言は…えっとアレです。そう!照れ隠しです!美しい女神を目の前にして動揺した下賎な私の照れ隠しなのです!!」


「なーんだ!やっぱりそうだったんだ!そうよね、私の美しさを目の前にしたら皆んなそうなっちゃうよね!!」


あ、こいつチョロいわ。


「マスター。私にはマスターの心の声が聴こえている事をお忘れなく。」


「ファムさん、ややこしくなるから今は黙ってて下さい。後でアイス買ってやるから。」


「ハーゲンダッツですよ?ハーゲンダッツ以外は認めませんよ?」


「解った解ったホームランバー買ってやるから。」


「ハーゲンダッツっ!!…まあホームランバーも好きですが。」


「はい交渉成立な。」


などと話しているとチョロい女神が何やら張り切って目の前の空間を歪ませ始めた。


「コホン。では哀れなアナタの為に、慈悲深くて優しくて優雅で美しくて可愛い私が新たなダイエットコーチを呼んであげましょう。」


そこまでは言ってない!


「召喚!!」


目の前の空間が湾曲して人影が見え始める。


「フシュー。フシュー。」


ん?あれ?なんかリフレインを感じる。

嫌な予感しかしない。


「ブシャァアアアアアアアアッ!!」


長い胴体に長い尻尾、バリバリした鋼の鱗に爬虫類の顔。

口元からはコレまた長ーい舌ベロがレロレロしている。

ほらまたヤバイヤツ出て来ちゃったよ!!

嫌な予感的中だわ!!


「新しいダイエットコーチの 大天使メタトロンです。」


「大天使メタトロンとな!?どう見ても胴の長いデカイ爬虫類にしか見えないんですけど!?」


「胴だけにどう見ても…とはさすが一国の王子さまは言う事がウイットにとんでますねマスター。」


「いやダジャレじゃねーよ!?」


などと肩の上のナビ子のアレをアレしていると女神がドヤ顔で語り始めた。


「彼の趣味、特技は逃げ惑う獲物を追いかけ回してその鋼の鱗がひしめく胴体で巻き付き、苦悶の表情を浮かべている獲物の顔面をザラッザラの舌ベロで舐め回す事です。」


「なにそれ怖いわっ!!あと気持ち悪いっ!!大天使こんな奴ばっかなの!?」


「彼は天界でも唯一無二のモテ男ですよ?今度写真集が発売される予定です。」


「写真集!?」


「しかもフルヌード。」


「フルヌード!?いやもうこいつ既に全裸じゃねーかよ!!」


「いやウロコ着てますやん!」


「うわぁ!?急に喋った!!てか関西弁!?大天使メタトロン関西弁!?」


異世界人の俺が何で関西弁を知ってるの?とか野暮な事は言いっこナシでお願いします。


「おいコラワレッ!鋼のウロコギチッギチに巻きつけて顔面ぺろぺろ舐めたろか〜!」


うわぁエセ臭い!関西弁エセ臭い!


「あ、あともう1人のコーチは毎度お馴染みみんな大好き世紀末モヒ太郎ですよ。」


「フシュー!フシュー!」


「コイツもいるのかよ!!」


「それでは頑張って逃げて下さいね、よーいドンっ!」


「え!?うそ!?前回と同じオチかよ!!」


「いわゆる天丼ってやつですね。」


「おいーー!ふざけんなよ!!」


「あら?やっぱりカツ丼の方が良かったですか?」


「上手い事言ったつもりか!?」


「丼だけに?」


「もうええわ!!」


はたして、俺の運命や如何に!?


続く→

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