世紀末ダイエットリーダー伝もひい!
俺の名前はカズキ、ミートキングダム第一王子にして英雄「メタボリック」の称号を賜りし勇者だ。
ある日心筋梗塞で命を落とした俺は、友達が居なさそうで滑舌の悪い自称女神にダイエットをするよう強制され異世界「地球」の日本と言う国に飛ばされてしまう。
転生先の便所で女妖精型異世界ナビゲートシステム「ファム・チャウ」と言い争っていた俺はあらぬ誤解を受け日本の警察署に連行され、長い長い取り調べを受けたのだった。
「酷い目にあった。なんで一国の王子であるこの俺が警察で取り調べなどを受けなければならないのだ!!」
「それは貴方のメタボリックな出で立ちが怪しくておかしくて、加えて言えば言動も怪しくておかしいからですよマスター。」
「なんだとー!!」
「まあ一番怪しくておかしいのは思考回路なんですけどね。」
「チクショー!!こちらから手を出せないと思って好き放題言いやがって!!だいたい誰のせいでこんな目にあったと思ってんだ!?」
その時、ファム・チャウの身体から小刻みに振動し ジリリリリ〜ン ジリリリリ〜ンと言う昔の黒電話の様な音が鳴り響いた。
「え?え!?何!?何なの!??怖いんだけど!!」
「女神様からの着信です。女神様からの着信です。」
女神、、、恐らく俺をこの世界に転生させた滑舌の悪いアイツ…ムネモシュネエウプロシュネテルプシュコラーの事だと思うが………
「なにこのシステム?え?着信!?何?お前通話機能も有るの!?」
「お繋ぎします。お繋ぎします。」
問答無用で話を進められた。
それにしともなんなんだよこの着信音とか、あともろもろのセンス。まああの女神っぽいっちゃー女神っぽいけど。
「おおカズキよ、メタボで死んでしまうとは情けない。」
「え〜〜?第一声ソレぇ〜!?」
「しかも一向にダイエットする気が無いとは情けない。」
「いやまだ1日しかたって無いよ!なんやかんやもう五話だけどまだ転生して一日だよ!!」
「不甲斐なくて情けないソナタにこの私、ムネモシュネエウプロシュネテルプシュコラーが試練を与えましょう。」
うーむ、文章上はきっちり書かれていて解りづらいかもしれないが、実際は相変わらず滑舌が悪くて何言ってるのか良く解らない。
…特に名前。
「言っておきますが、半年以内にある程度痩せないと貴方はまたあの悲劇の過ちを繰り返すことになりますよ?」
「へ?あ、あの悲劇の過ちって、まさか…。」
「ぶっちゃけ心筋梗塞で死にます。」
「は!?」
「私は別に貴方を健康体にして生き返らせたわけではありません。貴方の身体の状態を半年前まで巻き戻して異世界へ転生させたのです。」
ちょっと何を言っているのか解らない。
「ですので半年、正確に言うと184日以内にある程度痩せて健康体にならないと心筋梗塞が再発して、、、」
「さ、再発して、、、?」
「ご臨終でーす。」
「ご臨終でーす。じゃないわボケ!何できっちり治してくれないのさ!?」
あの死に際の苦しみと痛みは今でも鮮明に覚えている。
出来れば二度と味わいたくない。
「女神…神とは人間を甘やかして堕落させる為の存在では無く、律して自立させ成長させる存在なのですよ。」
「なんかまともな事言ってるが、人間は甘やかさないのに自分の滑舌の甘さは放置ですか?」
「今すぐご臨終させましょうか?」
「酷くない?パワハラじゃない?神のパワハラってそれもはやカミハラじゃない?訴えたい!」
「流石にそれはネーミングセンスを疑いますマスター。」
「うわぁ!?急に喋るなファム!!ビックリして心臓止まりかけたわ!」
「いやいや、止まるのは半年後ですよマスター」
「やかましいわ!上手い事言うな!」
「はいはい夫婦漫才はそのぐらいにして」
「「誰が夫婦だ (ですか)!ヤメろ (やめて下さい)!!」」
珍しく肩の上をフワフワしているナビさんと意見が一致した。
「とにかく!繰り返しになりますが貴方の寿命は184日ですからね、嫌よ(184)!死ぬのはイヤヨって覚えてね♫」
「上手いこと言ったつもりか!いちいちムカつくなぁ。」
「ゴホンっ!まあ、このまま放置していては貴方は多分また悲劇を繰り返す事になりますから、優しくて偉大なこの私が、貴方の為にダイエットコーチを送り込んで差し上げます。」
優しくて偉大な人はこの場に1人たりとも居ない気がするが、命が惜しいので黙っておくことにする。
「…て、ん?ダイエットコーチ??」
「はい、ダイエットコーチです。」
自称女神がそう言うや否や、俺の目の前の空間が湾曲してそこから人影が現れた。
年齢は50歳位の中年男、上半身裸で肌には髑髏やら蛇やら蜘蛛やら英単語やら、とにかくよくわからないタトゥーが散りばめられ、髪型はモヒカン。
首からは太っとい鎖をジャラジャラ下げ、その先端にはトゲトゲした丸い玉が付いている。
痛くないのか?そのトゲトゲ玉?
さらに両手にはそれぞれサバイバルナイフ的な物を所有し、片方のナイフをペロペロ舐めながら
「フシュー…フシュー…」
と謎の声を発している。
何だコイツ??
「どこから突っ込んで良いか解らないが、良くこんな絵に描いたような奴がいたな?」
「紹介するわ。ダイエットコーチの【世紀末モヒ太郎】さんよ。」
「ハイまず名前!!名前に突っ込もうか!?そんな名前のやつ居るか!!!」
「あ、いや本名です」
「敬語!?世紀末モヒ太郎敬語使うの!?フシューフシュー言ってたのに!?」
「彼は凄いわよ」
「いやもう凄いのはわかったよ!見た目と名前と敬語でお腹いっぱい!」
「聴いて驚きなさい!」
「いやこっちの話も聴いて?無視しないで?」
「彼の趣味、特技は、ひたすら人を追い回して追い込んで捕まえてハラの肉をナイフでかっさばく事なのよ!」
「いや怖えーわ!!てかあんた仮にも女神だよね!?何てヤツを派遣してんの!!」
「さあ、彼から見事30分逃げ切って見せなさい!!よーい…スタートぅ!!」
は?
…え??
なんじゃこの展開!?
「フシュー!フシュー!!」
間髪入れずに世紀末モヒ太郎がナイフを振りかざしながら躍り掛かって来る。
「うぎゃああああああああっ!?怖い怖い怖い怖いっ!マジで怖いんですけどぉっ!!!」
「見事逃げ切れれば…まあ少しは痩せるんじゃないかしら?頑張るのですよ、カズキ。」
「テメェ!フザケンナよ〜チクショー!!ぎゃあああああああ助けてえええええ…」
こうして俺の地獄のダイエット生活は半ば強制的に幕を開けたのだった。
続く→