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こちら日本国公衆便所前警察署

俺の名前はカズキ、ミートキングダム第一王子にして英雄「メタボリック」の称号を賜りし勇者だ。


ある日心筋梗塞で命を落とした俺は、友達が居なさそうで滑舌の悪い自称女神にダイエットをするよう強制され異世界「地球」の日本と言う国に飛ばされてしまう。


女妖精型異世界ナビゲートシステム「ファム・チャウ」に排便の一部始終を見られてしまった俺は、証拠隠滅のためにファムを握りつぶそうとする。

しかし反撃に会い異世界の警察に連行されてしまう。

こうして俺は異世界「日本」での最初の夜を警察署で過ごす事になったのだった。


「無実だ!虚偽だ!!陰謀だ!!!俺は何にもしていないぞっ!」


「しかし、確かに貴方の入っていた個室から女性の悲鳴が聞こえましたんですよね。」


このイカにもインテリを気取った様な眼鏡の女は、野隅(のずみ)巡査。あの忌々しい便所悲鳴事件の現場にたまたま居合わせたこの異世界日本の警察官だ。


無理やり便所をこじ開けられ、そのまま警察署に連行され、この取調室に入ってかれこれ1時間が経過した。


「じゃあ証拠は!?アンタが悲鳴を聞いたって言う女が居ないじゃあないか!?」


「物的な証拠は確かにありませんが、警察官である私、野隅が直接悲鳴を聞いているのである種現行犯逮捕です。」


「馬鹿なっ!?」


「まあ女性は私が駆け付ける前に自力で逃げたのでしょう。」


「これは不当逮捕だ!!」


「いいえ、キチンと手続きを踏んでの取り調べですよ。」


その時、俺の肩でブンブン小煩く飛んでいたファム・チャウが一言呟いた。


「メタボリックに人権は無いのですよマスター」


「は!?やかましいわっ!!」


思わず反論してしまった俺を目の前のメガネ女、野隅が睨みつける。


あ、しまった。


「やかましい?仮にも警察官である私に向かってやかましい、ですか?」


「あ、いや今のは」


「罪状に公務執行妨害も付け加えましょうか?」


「ご、ごめんなさい」


「ちなみに身分証はお持ちですか?」


「ん?そんなもの王子の俺が持っている訳無いだろう?」


「え?王子?」


「そう!聞いて驚けっ!我こそはミートキングダム第一王子カズキ、その人であるぞ!!」


「・・・もしかして薬物とかやってますか?」


「何でそうなる!?」


「・・・はぁ。」


呆れた様な下げずむ様な視線で溜息をつきながら俺を見下すメガネ女野隅。

しかし、それにしてもおかしい。

ミートキングダムの女達は毎日毎日俺の素晴らしい皮下脂肪バディを観て


「キャー!カズキ王子ポッチャリ系ぃ〜♡」


とか、


「イヤ〜んカズキ王子の顎肉ぷにカワ〜♫」


とか、


とにかくウザいくらいに持て囃して来ていたのに、何なんだこの女は!なぜ俺の魅力が通じないんだ!?見る目が無いのか?


「だからそれは貴方の国特有の狂った価値観ですよマスター。ハーゴン教団もビックリの破壊神崇拝暗黒宗教みたいなものです。あと私の姿は他者には見えないとご説明しましたよねマスター?物覚えが悪いんですか?アホですか?このミスターメタボリック。」


肩の上のナビゲーションシステムさんが、反論出来ないのをいい事にめちゃくちゃ煽って来る。


「チクショー、握りつぶしたい。」


「ほう、今度は脅迫ですか?」


あ、しまった。


「どうやら本物のアホみたいですねマスター。やはりカロリーを過剰に摂取する事に特化し過ぎて思考回路は劣化してしまったのでしょうか。可哀想に。」


「クソッー!!言わせておけばっ!!」


堪忍袋の尾が切れた俺は、肩の上のファムに摑みかかる。


「フンヌっ!フンヌヌっ!!チクショー!!!」


掴めども掴めども俺の手はファムをすり抜け空を切るばかりだ。

そう、コイツは立体映像。

本当にチクショーだよチクショー。

その時


ガタンッ!


景気の良い音を立てて眼鏡警察ガールが椅子から立ち上がり、こちらを睨みつけながら俺の額辺りを指差して叫んだ。


「な、何なんですか急に大暴れしてっ!ついに本性を表しましたね!!婦女暴行及び恐喝及び薬物使用及び公務執行妨害で逮捕しますっ!」


あ、しまった。


「あ、違う!違うぞ!今のは…そう、アレだ!わ、我が国の伝統的な民族舞踊的なアレでだな!!」


「問答無用です!!」


「やっぱアホですねマスター。」


「うるせー!」


「ああっ!また!!」


「もう嫌だあああああぁっ!!!」


誤解を解くのに5時間掛かりましたとさ。ちゃんちゃん。

続く→

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