めたぼボックス
俺の名前はカズキ、ミートキングダム第一王子にして英雄「メタボリック」の称号を賜りし勇者だ。
ある日心筋梗塞で命を落とした俺は友達が居なさそうで滑舌の悪い自称女神にダイエットをするよう強制され異世界「地球」の
しかも女妖精型異世界ナビゲートシステム「ファム・チャウ」にその一部始終を見られてしまい、、、俺は王子としての、いや、人間としての尊厳を一つ失ったのだった。
「ふう・・・スッキリしたぜぇ?さて。」
「何をワイルドに開き直っていい笑顔をしているのですかマスター?それとも新しい性癖に目覚めましたか?最低ですね。」
「辛辣!!言葉が辛辣!!」
「マスターの国ではメタボはもてはやされていたかもしれませんが、この国ではメタボに対する扱いはこんなものです。フォーマルスタンダードです。」
「ヒデェよ。・・・ふふ、しかしまあそんな事はどうでも良いのだよチャム・ファウ君」
「ファム・チャウです、版権引っかかるので間違えないで下さい。」
「おっとすまないなファムナントカ君。」
「何ですかその余裕有ります的な態度は?やはり美少女に排泄行為を見られて新しい性癖に目覚めましたかこの変態。」
「だから違う!そして口が悪い!、、、しかしまあそんな君とも、もうお別れだと思うと名残惜しいよ。」
「は?」
「あんな姿を見られてしまった以上、お前には消えてもらうぞ!本物の妖精ならば気がひけるが、お前はあの滑舌の悪い女神が俺に付けたナビゲーションシステム、生き物で無いのならば全く心が痛まん!喰らえっ!!」
意気揚々と肩の上をチマチマぱたぱた飛んでいる妖精型異世界ナビゲートシステムに摑みかかる俺。
飛び散る脂汗が今日もカッコイイぜ?
・・・しかし。
スカッ。
「あれ??」
俺の手はファムの身体をすり抜け空を掴んだ。
「え??な、何で??」
「私は女神【ムネモシュネエウプロシュネテルプシュコラー】様の神力で出来たいわばホログラフです。なので身体に触れる事は出来ませんよマスター。」
「ホログラフ?ま、幻みたいなもか?」
「なのでいくら私に攻撃しようとしても無駄です。幽霊に殴りかかっているようなものです。愚行極まりないです。アホ丸出しです。」
「ぐぬぬ、口が悪いにも程がある」
「しかし、全くの無駄骨だったとは言え、私を消そうとしたのはムカつくので罰を受けてもらいます。」
妖精型異世界ナビゲートシステムさんが俺を冷ややかな、射殺すような眼で睨みつけてきた。
「ひ、ひぃ!一体何を??」
「基本私には触れる事は出来ませんし、他の人は姿も声も聴くことは出来ないのですが、、、私が強く念じた時だけ「声」だけは周りに届けることができるんですよ。つまり、こーゆー事が出来るのです」
イヤな予感しかしない。
「キャーーーッ!助けてーーーッ!メタボの変態に襲われるぅーーッ!」
「ちょ!?まっ!?お前マジか!?」
「マジです。」
「やり方がエゲツないっ!!く、クソーーっ!」
「トイレだけに?」
「誰が上手いこと言えと!?と、とにかくココから出て逃げなくては有らぬ疑いを掛けられかねない!」
「いやいやあながち間違ったことは言ってませんよ?」
なにやら不服そうに反論してくるファムを無視して俺は必死に扉を押しあけようとする、が、
「あ、開かない!?なんで??」
わかった!このパターンはありがちな「押し扉と見せかけて横にスライドする奴」だな!
「せりゃあああああああ開かない!?!?」
まさか上に上がるタイプのレア扉か?
「うりゃあああああああ開かないっ!?!?何故だあああああああ開かないっ!!!」
「マスターマスター!」
「このクソ忙しい時になんだチャム!耳元で叫ぶなっ!!」
「ファムです!あとこの扉引くタイプ、つまり引き戸です。」
わーお
「なるほど盲点だったわ。しかしそうと解ればもうこっちのもんだ!うりゃあっ!」
ばい〜〜〜ん。
「え?」
「あ・・・。」
うーむ、もう一度。
「よいしょっと」
ばい〜〜〜〜ん。
「は、はら・・・腹の肉が邪魔で・・・」
「開きませんねマスター」
ち〜〜〜ん。
合掌。
その時である。
「オイ!さっきの叫び声聞こえたのこの個室じゃないか!?ドッタンバッタンバインバイン怪しい音が聞こえてるぞ!」
「はい、ココで〜す。た〜す〜け〜て〜。」
「うわぁコイツマジか!」
「マジです。油断大敵ですよマスター」
「クソッタレ〜!!」
「トイレだけに?」
「もうええわ!!」
こうして俺は、異世界の警察署に連行され、そこで転生後初日の夜を過ごすのだった。
続く→