食戟のミート 神の皿
俺の名前はカズキ、ミートキングダム第一王子にして英雄「メタボリック」の称号を賜りし勇者だ。
心筋梗塞で命を落とした俺は、友達が居なさそうで滑舌の悪い自称女神にダイエットをするよう強制され異世界「地球」の日本と言う国に飛ばされてしまう。
そんなある日、日本の医療機関に入院していた俺の前にリスナー募集で勝ち残ったキャラクター、豆腐料理人の刻み海苔 (名前) が立ち塞がり、俺に食決闘を仕掛けてきた。
なんか少年漫画の様なノリでバトルは進み、刻み海苔のスペシャリテが…ある意味猛威を奮ったりとかなんやかんや色々あり、ついに俺の料理の皿が皆の前に盛り付けされたのだった。
「さあ、おあがりよ。」
「…うわぁ、話跨ぎでまだ物真似してるんですか?そろそろ作者に松岡さんのファンからカミソリレターが来そうだからやめてくれますか?」
「やかましいわ!オリジナルだわ!これ俺のオリジナルだから!松岡君より前から言ってたから!!」
「はいはい。…で、コレは何なんですか?」
「ふふ、この料理は…」
勿体つけてから一気に蓋を開ける俺。
その瞬間、室内に匂いと言う旨味爆弾が炸裂する。
モワワワワー。
「天ぷらの何ちゃってアヒージョやんちゃ王族風だ。」
「なんて?」
「天ぷらの何ちゃってアヒージョやんちゃ王族風!!良いから早く喰えよ!」
「はいはい、わかりましたよ。」
なんか嫌々義務の様に俺の料理を口に運ぶ女神とナビゲート妖精さん。
ムカつくなぁ。
しかしそんな態度を取れるのは今の内だけだぜ?
「あーん。」
パクン。
刻み海苔を含む三人がオレのスペシャリテを口にした瞬間。
バシュバシューンビリビリビリビリバインバイーン!!!
三人の服が弾けと…んで居ない。
うん、あくまでイメージ。
しかしこのイメージは俺だけではなく奴らの脳内にも確実に描き出されているはずだ。
俺のスペシャリテにはそれだけの威力が有る。
「こ、コレは?この天ぷらは…!?」
「そう、そいつはバターだぜ。バター天だ。」
「ば、バターの天ぷら!?そんなバカな!バターなんて揚げたら熱でドロドロになってビチャビチャになってしまうわ!でもこのバター、衣の中で固形を保っている…何故?」
「その秘密は…冷凍さ。」
「そ、そうか!バターを超低温で冷凍することによって揚げても完全には溶けずに衣の内側で固形を保っているのね!」
「だがこの料理の秘密はそれだけじゃないぜ?アヒージョの油に天ぷらを浸してからもう一度食べてみな。」
ヒタヒタヒタ。
生唾を飲み込む音が聞こえる。
パクん。
「こ、コレは…このアヒージョ、オリーブオイルじゃあ無いわ!これは…まさか!?」
「そう、ソイツは溶けたバターだぜ!」
「バター!?バターの天ぷらをバターに浸して食べるなんて!!悪魔的っ!!まさに悪魔的発想!!」
「でもまって!このバター、ただのバターじゃあ無いわ…。この味の奥に感じるまろやかさは…何?」
「ふふ、そいつはマヨネーズさ!」
「マヨネーズ!?バター汁の中にさらにマヨネーズ!?」
「え!?じゃあこれバターを衣に包んでそれをバターとマヨネーズに浸して食べてるって事ですか!?カロリーにカロリーなすり付けて食べてるんですか!?」
「どうだい!俺のスペシャリテ【天ぷらの何ちゃってアヒージョやんちゃ王族風】の味は!?」
「味は!?じゃ無いです!!」
「ん?」
「何かもうとにかく脂っこい!あと塩っぱい!べちゃべちゃしてて何だかわからないですが身体に悪いことだけは解りました!」
「ふふ、最高の褒め言葉だな?」
「褒めてません!」
なんか部屋の隅の方でファムも嗚咽混じりの声を出して蹲っている。
よっぽど俺のスペシャリテが美味かったんだな。
てかアイツ俺の肩の上から離れられないんじゃあなかったっけ?
最近設定もフワッフワだな。
まったく。
「さて…肝心のお前の感想を聴こうか、味付け海苔よ。」
「刻み海苔よ!刻み海苔だけど…この一品を食べてしまったら、もう味付け海苔でも良いかなって気持ちになるわ。最高の一皿ね!」
「「え??」」
女神とファムが顔を見合わせる。
「バターにバターを掛け合わせると言う発想、そこにマヨネーズと言うどんな料理にでも合うマジカルウエポンを加える事により味の領域を神の世界へと昇華させている!」
「何を言ってるんですか!?」
「さらにこの衣から溢れ出る濃厚な香りは…」
「気付いたか。そう、その天ぷらは油ではなくバターで揚げているのさ!」
「どんだけバター使うんですかああーー!!」
叫ぶ女神。
そしてまた部屋の隅で嗚咽をあげて蹲るファム。
おいおい、盛り上がりすぎだろ?
「今ハッキリ解ったわ。私の料理に無くて貴方に在るもの…それは…塩分と脂質!」
「そうだ、要するに、カロリーさ!」
「…完敗…完敗だわ。」
「なんでよ!?」
「お粗末!!」
「全然似てない松岡禎丞のモノマネヤメロ!!」
こうして俺はミートキングダムからの来訪者、刻み海苔 (名前) を危なげも無く余裕で撃退したのだった。
続く→