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お肉の王子様

この作品は埼玉県志木市のコミュニティーFMでオンエアされたラジオドラマを小説家したものです。

俺の名前はカズキ、ミートキングダムの第一王子にしてこの国の英雄だ。

歴代続く王家の中でも俺は特に優秀なメタボリックだ。

あ、メタボリックってのは体内に保有しているカロリーを魔力に変換して戦う勇者の事で、カロリー保有量が多ければ多いほど、つまりは体重が多ければ多いほど優秀な勇者なのだ。

平均体重が50キロ前後のこの国において、俺の体重は現在105キログラム。

驚異の100キロ越えを果たしているのだ。

この数値は歴代の王族の中でも、いや、歴代のミートキングダムのメタボリックの中でも例が無いほど高いのだ。

人呼んで「肉の化身」それが俺だ。

そして、


「きゃ~!カズキ王子よぉ!今日も肥えていらっしゃるわ~!」


「したたる汗が煌めいているわ~素敵ぃ~!!」


そして、この国において体重が多いと言う事は、女子に持てるのだ!


「やあやあカワイ子ちゃん達!今日もカロリー日和だね♪ナイスカロリー♪」


「キャー!しゃべったわー!カロリー消費したわー!」


「顎肉が揺れたわよ!ナイスカロリーだわぁー!!」


ご覧のとおりだ。


王子であり豊満な肉体を持つこの俺はミートキングダムのメタボリックとして順風満帆なモテライフを満喫していく、、、はずだった。

そう、あの日あの時あの瞬間までは。


「いやーモテたモテた。モテまくりで肉汁を啜る暇も有りませんなぁ!はっはっは!さーて今日も三時のオヤツ代わりに豚足でも齧りながら酒でものみますかね~。ん?ん??な、何か身体が、、、胸が苦しい…息がっ!息ができない!!心臓が…うぐっ」



こうして俺は突然の体調不良で意識を失ったのだった。



目が覚めると、そこには見たこともないような真っ白でただっぴろい空間が広がっていた。

そしてそのただっぴろい空間に一人ポツンと如何にも友達が居なさそうな活舌の悪そうな女が一人、こちらを見下すように見つめていた。


なんだこいつ?いや待てこいつよく見ると背中に羽が生えているぞ?そして頭には円形の物体がふわふわ浮いている。

まさかこいつ、、、変態か?


「私は変態ではありません。失礼な。」


「うわぁ心の中読まれた!?気持ち悪い!!」


「気持ち悪いのは貴方の体型です。」


「は?この豊満な肉体を気持ち悪い?はぁ・・・これだから変態は」


「私は変態では無いと言っているでしょう!私の名前はムネモシュネエウプロシュネテルプシュコラー。記憶と喜びと舞踊の女神です。」


「え?名前何て?ちょっと良く聞き取れなかったんだけど?」


「ムネモシュネエウプロシュネテルプシュコラーです。肉の化身カズキよ、あなたは死んだのです」


「は?体に悪いことなんて一つもしてないのに何で?」


「あなたの死因は動脈硬化による心筋梗塞、つまりメタボが原因なのです。」


「何?メタボリックは勇者に与えられし栄光の証だぞ!!」


「それはカロリーを魔力に変えられる貴方の居た世界でのみの特殊な価値観です。通常の世界では貴方のようなメタボは健康被害にあい活躍出来なくなるのです」


「そんなバカな!?」


「もちろん女の子にもモテません。」


「そんなバカな!?」


「あ、一部の特殊な趣味の方にはモテます。」


「そんなバカな!?」


「しかし優しい私は貴方にもう一度チャンスを与えましょう。異世界地球の日本という国に転生して今度こそメタボリックにならず、平均体重で過ごし、健康について考えを改めるのです。」


「え?ちょっと何を言ってるの解らないんだが??」


「さあ今こそ転生の時です!貴方の新たなる人生に野菜の多きことを!!」


自称女神の両手が眩く光り始める。

その光りは有無を言わせず俺の身体を包み込む。


「ちょ!?ま!?さ、最後にもう一度名前教えてくれ!!」


「ムネモシュネエウプロシュネテルプシュコラーです。」


いかん、状況も解らないし名前も覚えられない。


俺を包み込んだ光りはこちらの意思とは関係なく俺の意識を剥ぎ取っていく。

不思議な事に抗うことができない。

いや、抗う意思さえも飲み込まれているのか?


「うわぁあああぁあああぁああぁ〜」


我ながら良く解らないビブラートな悲鳴を響かせながら、俺の意識は遥か彼方へと収束され、消え失せた。


こうして俺、肉の化身ことミートキングダム第一王子カズキは、見知らぬ異世界「地球」に強制的に転生させられたのだった。


続く→


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