remon candy
キーン・コーン・カーン・コーン
「キーーン・コ~ン・カ~~~ン・コ~~~ン」
ジジジジ・・・・
マリの口はチャイムの音と共に開かれて、閉じる。
マリはふと窓を開けて顔をひょいっと突き出し、元気な声を出して学校を出て行く生徒達を
ただただ見送る。
「寒っ!」
前の席に座っているコウタが背中を丸め、大きな声でいったものだから
マリはしぶしぶ窓を閉める。
コウタは丸めた背中をそのまま前に倒し、机に顔をべったりくっつけて
気だるそうに・・・。そう。まるで起こされて不機嫌な猫のように
「あぁー。帰りたくネ~。外でたくね~!!」
「でも、ずっと残ってたらもっと寒くなるよ。」
マリはさめた声でコウタに言いながら、顔を机にべったりくっつけた。
マリとコウタは、一つの机を境に向き合い座って、いつも放課後を過ごす。
春も
夏も
秋も
冬も
ずっと二人はこんな調子で、放課後をゆうゆうと過ごすのだ。
別に付き合ったりもしてないのに、二人はいつも一緒。
マリの頭の横にはコウタの頭がある。
コウタの頭の横にはマリの頭がある。
コウタがあくびをすると
2秒後にはマリもあくびをしてしまう。
二人の距離はそんな感じ。
二人だけの教室
ゆったりとした時間が流れる。
クラブ活動中の野球部の熱い声や
バレー部の気合が入った声
吹奏楽部のお世辞にも上手いといえない音色が教室には流れ込む。
そして何時ものように、取り留めのない会話が始まるのだ。
夕日が二人を照らし終えようとしたとき、コウタが口を開けた。
「帰る?」
「嫌」
「んーー。」
マリは目を瞑ったままコウタの質問に答えた。ただ今日はこのままでいたかったのだ。
コウタはまた口を開けた。
「元気だせよ」
「・・・」
「世界は広いぞー。男なんてごまんといんだからさー。」
「・・・うざぁ・・・」
太陽は西へと動いて教室はいつのまにか暗くなってしまった。
外灯が一つまた一つ灯り始めている。
二人の声が消えて教室は静かになった。
さっきまで色んな音が聞こえていたのに
ぱたりと静になってしまた。
二人以外にもこの学校には沢山の人間がいるというのに
まるで、二人だけしかこの建物にはいないかのような静けさがあった。
コウタがゆっくりと顔を机から上げた。
「泣くなら、もっと泣いていいぞ。」
「・・・・」
コウタは右手をマリの頭において言った。
マリの頭は震えていた。
コウタは席を立って教室をでる。
マリは外灯の光を見つめる。
いつも見る外灯より綺麗でなんだか特をした気がしていたときにコウタの声が聞こえた。
「ほれ」
渡されたのはトイレットペーパー
マリは受け取って、鼻をかむ。
チーン・ブッって音がして笑い声達が辺りを包む
「帰る?」
コウタが言った。
「うん。ペーパー、サンキュー」
「いえいえ。どーいたしまして。」
二人は教室を後に学校を出た。
「マリ」
「何?」
「飴くう?」
「うん。」
コウタは右ポケットから飴を取り出して、マリの右手に落とす。
マリはその飴を口に入れカラコロいわせ、空を見上げてみる。
「ん?!すっぱぁ!」
「レモン味ですから」
レモン味の飴は何時だってすっぱいけど俺は好き。
コウタはふとそう思ってマリを見た。
「マリ。」
「ん?」
「お前ってレモン見たいだな」
「はぁ?何言ってんの??」
「そのまんまだよー。すっぱいすっぱいって事」
レモン味の飴は何時だってすっぱい。
けど俺は知っている。
本当はやさしい甘さがあるってこと。
だから俺は君が大好き。