旅先の村で
街を出た晴也とそれについて行くことになったヴェラは
山奥の村を目指していた。
この村を通らなければ次の街に着かないのだ。
思ったよりも山道が険しいので苦戦しているが、何故か魔物が出て来ないので助かっている。
「おいヴェラ、大丈夫か?疲れたなら休憩にするぞ?
治癒したとはいえ体力消耗してるだろ?」
「大丈夫だよ、僕も伊達に師匠の元で修行してないからね。体力には自信があるんだ。」
「なら良かったぜ。日が暮れるまでには村に着きたいな。にしても魔物が全然出てこないのは何故だ?」
「うん、それについては僕も不思議に思っていたんだ。
前ここに来た時にはヘルハウンドの群れがいたはずなんだよ。」
ヘルハウンドは狼のような獣で群れで行動する魔物らしい。師匠は教えてくれなかったけどアルドスが教えてくれた。ありがたい。
「とりあえず村に行って見たらなにか分かるかもな。」
「それもそうだね。」
こんなやり取りをしながら2人は山道を駆けていた。
3~4時間くらいだっただろうか。ついに村が見えてきた。
「晴也!あれは村じゃないか?」
「やっとついたかー。めちゃくちゃ大変だったな。暗くなる前に着けて良かったぜ。」
2人は村に入り、宿屋を探していたが、なにか違和感があることに気づいた。
「ヴェラ、村人の数が少なくないか?」
「おかしいよ、元々そこまで大きな村ではないにしても
この数は少なすぎる。」
「この村に何があったんだ?誰かに聞いてみるか。」
と言って辺りを見回してもいるのは女子供年寄りしかいないのだ。若い男はどこに行ったのだろうか。
すると、この村の長老らしき人が来てこう言った。
「旅の方よ。この村はもう終わりじゃ…早く旅立った方が良い。この山には凶悪なモンスターが住み着いてしまい、村の男衆が討伐に向かったのじゃが誰一人として戻って来ないのじゃ…。討伐に行かなかった者たちもこの村を去って出ていってしまった…。我ら年寄りや女子供はこの山を降りられるほど体力もなく、冒険者を雇おうにもあのモンスターが住み着いてから鉱石が取れなくなってしまいお金が作れなくなってしまったのじゃ。」
「酷いな…。それならそのモンスターの特徴を教えてください。俺たちが討伐してきますよ。」
「あ、勝手に僕も行くことになってる…。」
「すまんすまん。でも来てくれるだろ?」
「晴也に着いていくって決めたしね。行くよ。」
「ほ、ほんとですか?旅のお方。この村にはお礼できるほどの資金はありませんぞ。」
「俺がしたいからするんです。俺がしてもらったように人の役に立ちたいんです。」
「なんとお優しいお方なのか、この村の存続がかかっておりますゆえ、どうにかお願いしますのじゃ。」
「それでモンスターの特徴は?」
「でかい図体に翼が生え、牙が鋭く、手に剣を持っているらしいですじゃ。」
「…なるほど。」
と晴也が何か引っかかるようにうなずいた。
「そういうことか…。」
同様にヴェラも何か引っかかっているようだ。
「御二方、今日はそろそろ日が暮れるのでお休みになって明日にしたらどうですか?」
「ああ、そうさせてもらうよ。」
「そうだね、今日は疲れたしすぐに寝れそうだよ。」
そう言って2人は案内された宿屋に入り、床についた。
誰もが寝静まったであろう深夜に晴也とヴェラの部屋に入り込む影があった。その姿は異形で人型ではあるものの、顔はぐちゃぐちゃに潰れており、漆黒のローブを纏い、鎌のような暗器を手にしていた。そして、その暗器で晴也の背中を串刺しにしようとした瞬間。
その異形の怪物は宿屋の外まで吹き飛ばされた。
「 !?…………っっ。」
その怪物は何が起こったか分からなかった。ターゲットを殺そうとした瞬間に自分は吹き飛ばされたのだ。混乱もするだろう。立ち上がると、宿屋の方から足音が聞こえてきた。2人だ。よく見るとターゲットの2人がそこで待ち構えていた。
「ナゼシュウゲキガバレタンダ?」
怪物はこう質問するしか無かった。
すると、1人が口を開いてこう言った。
「お前言ったよな、昼間。討伐に行ったものは誰もが戻らなかったって。じゃあなんでそのモンスターの特徴を知ってるんだよ。」
「それに気づいた僕らはすでにこの村はモンスターに襲われ全滅していたことを理解したんだよ。」
「ナルホドナ、シラナイアイダニボロヲダシテタッテワケダ。ワタシノナハ 『ディゾルデ 』マオウサマカラ コノチヲキョテンニ ニンゲンノマチニセメイルヨウ メイジラレタノダ。ニンムスイコウノタメニシマツサセテモラウ。」
ディゾルデが手を掲げるとそれが合図だったかのように
アンデッドが出現した。
「やはり昼間の村人全員もモンスターだったか。数が多いな。」
「僕がアンデッドたちをやるから晴也はディゾルデとか言うやつをやってくれ。」
「おいおいこの数だぞ。1人で大丈夫か?」
「大丈夫。僕の『固有魔法』なら一掃できる。」
「ヴェラ、お前が固有魔法使えるなんて初めて聞いたぞ!?」
「そりゃ言ってないからね。とりあえず任せてよ!」
「頼んだ!」
そしてヴェラが固有魔法の名を叫ぶ
「『 影操作』!!」
ヴェラが手をアンデッドたちに向けると黒いなにかが周りに突如湧き出し、アンデッドたちを次々に串刺しにしていった。あれだけいたアンデッド達がもう半数になっていた。
「なんだそれすげえな。俺も負けてらんねえ。」
そう言って晴也は刀身に魔力を込めた。
『促進』の能力で切れ味の底上げ、『集束』の能力で刀に力と魔力を集めた。さらに身体能力を上げるために
『促進』で移動速度の強化。
一瞬だった。
強化された晴也の足は一瞬で間合いを詰め、強化された刀は首を一刀両断した。
反応することなくディゾルデの首は落とされた。
だが、ディゾルデはまだ生きているようだった。
「首落としたのに生きてんのか!?」
「フツウノセイブツナラバイマノデシンダダロウガワタシハカリニモマオウサマノテシタダ。カンタンニハシナナイ。」
するとディゾルデは3つの毒々しい球体のものを繰り出した。咄嗟の事だったのでガードが間に合わなかった。
それら全てが晴也に命中する。
「ソレハヒトツデモクラエバゼンシンニモウドクがメグルノダ。キサマハモウオワリダ!」
「晴也!」
残りのアンデッドを片付けたヴェラがそう叫ぶ。
「俺の『耐性』で毒は取得済みだ。問題ない。」
晴也の固有魔法の『耐性』はその名の通り耐性を付ける魔法だが取得にはいくつかの条件があるため、簡単には
会得できないが晴也の師匠のおかげで会得していたのだ。
「ドコニ ドクタイセイナンテマイナーナスキルモッテルヤツガイルンダヨ!」
「悲しいことにここにいるんだよ!畜生!というわけで貴様とはお別れだ。」
そう言って強化された刀は今度はディゾルデの体を細切れにした。
「マオウサマ…モウシワケゴザイマセン。」
と言ってディゾルデは消滅した。
「ふう、終わったか。」
「終わったね。お疲れ様。」
「ヴェラもお疲れだな。後でお前の固有魔法について教えてくれよ?」
「晴也も固有魔法を複数使ってたことについて説明してね?」
と言ってお互い笑いあった。
そして、2人は疲れからかその場で寝てしまった。
ディゾルデを倒したことにより魔王軍にマークされてしまったことも知らずに。
やべぇ…。書こうかこうと思ってそのまま引き伸ばしてたら7ヶ月経ってました。
更新ペース遅すぎるなー。完結までどのくらいかかるんだろ。多分完結するまでやめることはないだろうけど更新ペースは遅いだろうなー。次回もきっと遅い。
とりあえず今回は村での出来事を書きました。最初はありきたりな村が困ってるパターンで行こうと思ったのですが、なんか頭に浮かんだ実は村が既に…みたいな内容に変更しました。ヴェラの能力は前から考えていた。
『影操作』ですね、強いけどこれには制約がある能力なので説明できる展開になるまでお待ちください!
次回更新はいつになるかわかりませんが、気長にお待ちください!