師匠の強さ
「おい、起きろ!」
弟子入りした次の朝、俺は早朝から叩き起こされた。正直昨日のキメラとの戦闘で体だるいし、まだ寝ていたい。
しかし、俺の師匠であるシャリア=エルベルグには何を言っても意味無いだろう。昨日あったばかりなのにこの人の性格がだいたい分かってしまっているので恐ろしい。
「昨日の疲れが出てるのでまだ寝させてくれないか?」
ダメ元で俺は頼んでみる。案外許可してくれるかもしれないし…。
「あ?お前は私の弟子になったんだよな?なら師匠の命令は絶対だ。お前に拒否権はねえんだよ。」
と、女性らしからぬ口調で返答が帰ってきた。
「ひぇぇ、横暴だー。あとその口調直した方がいいのでは?」
「私はいいんだよこれで、それよりお前こそ治すべきだな。これから私には敬語を使え。いいな?」
「わかったよ。」
「わかりました、だろ?」
「わかりました!」
まさか敬語まで使わされるとは…この喋り方で今まで貫いてきたのに…。
フィリアも疲れていたのかぐっすり寝ている。正直羨ましい…。仕方ないと思い、外にでた。
「んじゃ、今日から晴也、お前の修行を始める。
だが、私は弟子を取ったことがない、だからやりすぎることがあるかもしれん、だが、仮にもわたしの弟子だ。まさかぶっ倒れるなんてことは無いよな?」
「善処します…。出来ればぶっ倒れないように調整してください。」
ぶっ倒れたら殺されそうだ。これは気合入れてかなければ…。
「うむ、こちらも善処しよう。まず、お前は筋力が足りないと思うので、筋トレから始めよう。
じゃあ、腕立て1万やれ。」
「おい!?調整する気ないだろ?最初から殺す気かよ!」
「おい、敬語使えって言っただろ?追加で1万な。」
「ごめんなさい、勘弁してください。死んでしまいます。」
「大丈夫、死にはしねえから。私の特製ポーションで治してやるよ。」
めっちゃ笑顔で言われた。美人なのだが、この人の笑顔からは恐怖しか感じない。まじで1万?きつすぎだろ…。
「冗談だよ、とりあえず1000回でいいぞ。」
「1000回で少なく感じるから不思議だ…。」
「あ、敬語使ってなかった分入れるから2000回な?」
「まじですか…。」
「んじゃ、私は趣味のポーション作りでもやってるから頑張れよ!サボったらわかってんだろうな?」
「はい!しっかり2000回やらせて貰います!」
この日、俺は何回もダウンしながら2000回やりきった。案の定ぶっ倒れた。
次の日、また師匠に起こされた。
「ほら、今日も筋トレな、1000回はじめろ。」
「体動かないんですが…。」
「仕方ねえなー、このポーション飲め。疲労回復の効果がある。」
こうして、無理やり疲労を吹き飛ばされ、今日も腕立て1000回やった。昨日に比べて回数もすくないし、疲労もなかった(ないことにされた)ので、午前中で終わった。フィリアは何してんのかなと見に行くと、師匠と共にポーションを作っていた。
ポーション作りを教わっているようだ。
「あ、晴也!お疲れ様。修行頑張ってね!」
「頑張るよ…。修行っていうか筋トレだけどね…。」
「1000回終わったのか、んじゃ後ろに見える山の昇り降り100往復な。あ、魔法は禁止な?行ってこい!」
「休ませてくれないんですか!?このままじゃまたぶっ倒れますよ!」
「ほら、ポーション飲め。」
「肉体は回復するけど精神的に来るんですよ…。」
「まずは、体力付けないと私の修行ついてけねえと思うんだがすぐにでも始めるか?お前がそんなに死にたがりだとは思わなかったぜ。」
「筋トレやらせていただきます!」
俺は手渡されたポーションを飲み干して、山登りに行った。山は足場が悪く、登るのに一苦労だったが何とか100往復出来た。家に戻った途端ぶっ倒れたけど…。
それで、こんな感じのことを1ヶ月毎日やったので、かなりの筋力がついた。マッチョってほどではないが肩と腕、足腰が発達した感じだ。
その間、フィリアはポーション作りをマスターしたようだ。
「やっと、修行始められるな。よく1ヶ月耐えたな、まあこれからが辛いんだがな。」
「今までより辛いんですか…。やりたくなくなって来たんですが…。」
「まあ、耐えろ!あと1つここで言っとくことがある。」
「なんですか?」
「私は剣士じゃなくて魔法剣士だ。だから魔法と剣、両方を教える。いいな?」
「魔法剣士!?魔法使えるんですか!?」
「普通の魔法剣士は様々な魔法を覚え、状況に応じて魔法を変えるんだが、私は珍しくてな、固有魔法持ちなんだ、「重力操作」って魔法使えるんだわ。ちなみにフィリアには先に教えといたから、わざわざ言いにいかなくてもいいぞ。」
「固有魔法持ちの魔法剣士って珍しいんですか?」
「ああ、基本固有魔法持ってるやつは少ないしな、持ってるやつでも魔法使いになるやつが多いんだ。」
「なるほど、では早速修行お願いします!」
何をするのか分からないが強くなりたい!そのためならなんだってしてやる!
「んじゃ、私と戦うぞ。」
ごめん、なんでもは言いすぎた。勝ち目がない戦いはしたくない。当たり前だろ?死にたくないからな…。
「勝てるわけないじゃないですか!師匠に!」
「勝つことが目的じゃねえよ、実践の中で力を付けるのが目的だ。本気でやるわけじゃねえから安心しとけ。」
「なるほど、本気じゃないなら大丈夫かも…。」
「んじゃ、かかってこい。一応安全のため木刀でやるけどな。」
「行きますよ!」
俺の固有魔法「促進」で移動速度を上げ、師匠に接近、そして、上段から木刀を振った。
その直後、俺は吹っ飛ばされていた。
「ごふっ…。」
何が起こったのか全く分からなかった。俺は気づけば10メートルくらい吹っ飛ばされて、大きな岩に背中から激突していた。
「あ、やべ、やりすぎた。」
そんな師匠の声が聞こえた直後、俺は意識を失った。
師匠との初めての修行から三日後、俺は目が覚めた。
「ぐ、痛みが…。」
全身が異様に痛い。そうか、師匠に吹っ飛ばされて…。
「晴也起きたんだね、良かったー。死んじゃったかと心配してたんだよ。」
とフィリアが声をかけてきた。
「なんとか生きてるよ…なんとかね…。」
「おお。起きたか。まじですまねえ、手加減苦手でな…。」
と、師匠が謝ってきた。いつもこのくらいの態度ならいいのに、と思いつつも師匠に質問した。
「あの時師匠は何したんですか?」
「ああ、私の固有魔法「重力操作」で木刀の重さを変えたんだよ。振っているあいだは重さを軽くして、剣と剣がぶつかる瞬間重くしたんだ。
だから超速度で振り下ろされた超重力刀がお前の体ごとぶっ飛ばしちまったんだ…。」
「すげぇ!そんなこと俺には出来ません。だから、教えてください。次は何をしたらいいのか。」
「なんだ、てっきり怒るかと思ってたのに。
許してくれんのか?」
「許すもなにも気を失ったのは俺の失態ですからね。」
「そうか。なら遠慮はしねえ。びしばしいくから覚悟しとけよ?ほら治癒のポーション飲んどけ。」
俺は渡されたポーションを飲み干した。
「じゃあ、修行お願いします」
「いや、その前に飯だろ、三日もなんも食べてないだろ?お前。」
「そうでした。あははは。」
そして俺はパンや、スープなど沢山食べた。
腹が減ってはなんとやらってやつだな。
「よし、今度は私は魔法を使わないからかかってこい。」
「はい!」
俺は三日前と同じように「促進」で距離をつめ、刀を振った…所までは覚えているんだ…。
「おかしいな、俺は師匠と修行してたはずだが。」
「すまん、またやっちまった…。」
「今度は何したんですか…。」
「私の固有スキル忘れてた…。
「「剣の使用時、身体能力超強化」」
だったわ。
「チートすぎません?」
今回で師匠のやばさを再確認した俺は、
この先やっていける気がしない…。と思った。
前回からかなり時間空きました。
忙しくて全然投稿できませんでしたが、なんとか出せました!
今回は師匠の能力紹介みたいな感じでしたねw
あと、召喚されてから時間が経っていなかったので1ヶ月経過させました。これから主人公が強くなっていくと思います。