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LV194

「姫様襲撃事件」の影響で一時は休校となっていた学院も、二日後の今日にも再開の運びとなった。

 ――が、これでなにもかも普段通りとは、貴族の学院である限りはいかないらしくて、校内のあちこちに襲撃を警戒してか、警護の騎士たちが辺りを睥睨してまるで戦場のようである。

 普段はのどかな生徒たちもこの物々しさには、借りてきた猫のようにトボトボと道を見下ろしてたけど、騎士の目が届かない校内に入れば口をはばかることなく事件の噂話しでもちきりだ。

 大半は、学院のアイドルである姫様の身を案じる声だけど、なかには邪神レリアナ信仰への脅威やら、はたまた王党派や共和派の暗躍が~。と、ゴシップに踊るものが多くて嘆かわしいったらない。

 ……まったく、当事者でもない学校がこんなにも浮足立つとは。これなら復学しないで、さっさと春休みに入った方が平和だった気がするけどなー。




「確かにね~。皆して大騒ぎしすぎてるって言う気持ちはなんかわかるかも……」


 ボギーは嘆かわしい。とばかりにかぶりを振った。

 ランチタイムの食堂で、私とボギーはプリシス先輩の招きを受けた。そうなると交わす話題なんて、事件についてしかない。私も愚痴るネタだけは在庫処理に苦労するほど大量だからサバいておかないと。

 それはボギーも同じなのか「ここだけの話だけど~」と、急に声を潜めた。


「……なんか卒業式も中止になるかもしれないんだって」

「え、マジでっ!?」

「確からしいんだって……例年だと、始業式の時のように陛下が祝辞を告げにやってこられるみたいなの。それで、学院が生徒たちを含めた身の安全とか、警護が保証できないからって」

「……卒業する三回生さんたちは、さぞかし残念でしょうね。まぁ。まだ復学してもない姫様を思えば仕方ないことだけども……」


 朝から姫様心配で、隣の教室に出かけても、アルマたち侍女しか登校してなかったし。……それでも、この決定はなんだか色々と釈然としないけどねー。

 ボギーも同じ気持ちだったのか、それを無理やりに切り替えるように笑顔になった。


「ま、残念がってもしょーがないか。なにはともあれ、フレイも姫様も無事だったことを喜んだ方がよくない?」

「そうです。こうして平和に昼食を取れるのもフレイ様の献身のおかげです……アイゼン様は、怪我をして帰ってこられても、私にはなにも教えてはくださらないので。フレイ様の口からご事情を訊けて、ようやく気分が落ち着けました……」


 プリシス先輩は憂いたように呟くと、心ばかりの労いに「食後のお茶です」とカップを滑らせ、ボギーまでもが「辛かったでしょ?」と、犬を撫でこするように労ってくれた。……うぅっ、嬉しい! ふたりのやさしさに、骨になりかけた私はホロロ~ンと、涙が出そう!


「よしよし。タイヘンだったね。けど、いつも迷惑な巻き込まれ体質が、今回ばかりはいい方向に転んでくれたよね。ホント助かったわ」

「……微妙に褒めてるようで、こき下ろしてなくない?」

「そんなことないわよ。その巻き込まれ体質も、糖質制限したくらいじゃ変わらないし?もしかしたらフレイが周りの人の悪運を吸い集めてくれてるんだったら、むしろ周りにとってはその方がいっかなって」

「わたしゃ避雷針かよッ!?」


 いっかな。じゃねーよ。それだと私だけ不幸が押し寄せてくるんじゃんっ!?

「いつもありがとう」って、先輩までも拝むなッ!

 私は厄除け地蔵じゃない!?


「いえ。フレイ様にはタイヘン感謝をしておりますとも。マジメな話。姫様という跡継ぎがいなくなったら、後に引き起こされる混乱は予想がつきます故」

「……え、それってそんな大事でした? うわぁ、なんか今更に鳥肌がきたんですけど。それならフレイがドナドナされたことも、あたしたちの休日が潰されたのも、大したことじゃないよね」


 ボギーはサバサバした感じに結んだけど、その実、昨日は枕に突っ伏してブルーな様子だったのは秘密なのです。

 まぁ、ボギーも被害者といえば、被害者のひとりだしね。私が陛下にドナドナされてる間、どうもシャナンと一緒にトーマスさんの兄君の屋敷に駆けこんで、朝までずっと待機してたそうな。

 ンで、先に馬車で寮に帰りついた私が、ボギーのベッドで枕を高ーくして眠ってたのに「心配したんだからねーっ!?」と、ダイブしてきて危うくサバ折にされかけたのだから、やはり一番の被害者は私だと確信しております。


「……まぁ、皆が無事ならそれはそれでいいですけど。ホントに心から感謝してるぅ?」

「してるってばー。でも貴女のその怪我の理由を聞いたら、だれだって拍子抜けぐらいはするものじゃない?」

「……そう言われると、返す言葉がないです」


 巻き込まれたからとはいえ、私のドジ(テヘッ)から皆に無用な心配をかけたことは、胸が痛まないわけじゃないもの。

 今朝だって、わざわざ心二コラやヒューイが寮まで来て、心配してくれたのだ。それに私が足を引き摺ってるのにめざとく気づくと、


「ごめん気づかなくて、鞄を持つよ!」


 と、ありがたーい、心遣いまでくれて。

 私に残るボディダメージは主に筋肉痛なんだよ。と、懺悔したくなったのはだれにも言えない秘密です……え、シャナン? だれですかそのような冷血漢じみた名前のお方は? 私は存じあげませんわね。


「しかし、アイゼン先輩が都合よくルクレールの催しに参加してくださって助かりました。というか、一見した時はすわ別人か。と見違えましたよ」

「私もです。急遽パーティに参加する。と仰られた時には、青天の霹靂かと思いました。いつもはあのような会に誘われても、手紙を破り捨てるだけですのに」

「……へー」

「おかげで準備に苦労いたしました。その髪型でパーティに出るのは如何か、と具申しましてもスルーで……仕方なく主が就寝した時を狙ってシャキンと刈りましたら、翌日には大目玉をもらいました」


 プリシス先輩は、頂きの耳を抑えつつ小さく頭を下げた。

 そのきゃわゆさに、フフッ、と和んだけれども……アイゼン先輩のことは気になる~。なんでまたよりにもよって、事件の夜だけパーティに参加しようとしたのかなぁ。

 ……や、アイゼン先輩のことは、信じてますよ? 信じてますけど、その~、状況的には怪しさが満点というのか、黒いシルエットの犯人とダブるものがある。


「アイゼン様の活躍は侍女としてタイヘンに誇らしゅうございますが、机に溢れんばかりの花束やお手紙がありましたのは、さすがに私も想定外でありました」

「事件解決の功労者ですものね。先輩カッコイイし女子が殺到するの無理ないですって」


 凹んだ耳を指のひと撫ででほぐした先輩は、思い出したようにクールな顔をしかめると、それにボギーはクスッと笑った。


「ですが、主は今日も恒例のサボリでして。私が頂き物を持ちかえりましても、ちゃんとお目を通していただけるか気が重いのです」

「無下にされるのは他人のものでもヤですもの。ねー、フレイ?」

「……ソレをわたしに振ります?」

「……そういえば、先ほどから周りの視線がやかましいとは思っていましたが、フレイ様も同じお悩みを?」

「それが凄いんですよもうこの娘ったら! 次期”クィーンガード様”だって急に人気で。花束やお手紙もたっくさん貰って、ヒーロー扱いで!」


 親バカのように背を押し出してくるボギーに、私はゲンナリ顔を向けた。


「……淑やかな令嬢ぶって、ほほほっ、て愛想をふりまくのに骨が折れるのよ。あんま事件のことについて、おおっぴらに喋るな。って厳命されてるんですよ? それがミーハー気分で、事件のこと根掘り葉掘り聞かれまくるとか迷惑この上なしです」


 あいにく、私の摩耗した精神は、日常を求めているのです。決して登校してきた途端、ワーッと詰め寄られて、右向いても左向いても握手の手が伸びてきたり、半分潰れけたお花を押し付けられたり、とか。そういうホラーワールドではない。

 それに腕のグルグル巻きの包帯を見咎められて「お労しい!」と、同情されるのはちょっと……いや、かなり気が引ける。

 だって、腕の掠り傷は事件と関係なくこけただけだし? なんか自分のドジを晒すのも照れくさ過ぎるわ……。

 けど、私はショージキに皆さんに「いやぁ、転んだだけでして、たははっ」と、照れ笑って言ってるわけですよ! なのに、なぜ彼女らは、瞳のウルウル光線の出力を強めて、「お労しい!!」と、声量をあげるのは何故なんだ……?

 いや、困るんだよ話を大きくされちゃ!?



「えぇ~アイツが殊勲者とか嘘くさくねぇ?」

「だろ? あんな見せびらかしみたいに傷を治さねぇとか、マジないっしょ?」

「そうそ。モノホンの殊勲者なら、傷ぐらいちょちょいて魔術で治してもらうんじゃね?普通は~」



 ……感のいいガキは嫌いだよ――じゃなくて、そんな感のいいガキが居たら私は一巻の終わりだっ!

 よくあるでしょ? 高すぎる評価を貰ってた人が一転、ウソがばれた暁には奈落のドン底へと落ちるとか。

 ……私がウソをついてるワケもないし、正直に語ってるんだけども。広がりつつある根も葉もない噂の気高さが私を責め苛む茨となりえる!


「いえいえ、ご心配めされなくともよろしいです……フレイ様は「姫様に恐怖を感じさせてしまったっ!」という自責の念で、腕の傷を癒すことを固辞されたのです。いわば腕の傷は不甲斐ない自分への戒めとして、あえて残されていられてるのでありますです」

「え”ぇ”ッ!?」


 なに、その厚かましいまで私にだけ都合がよいウルトラ解釈!

 ……マジ使える!?

 詳しい話を聞かせて貰おうか。と私が椅子を引けば「あ、ありがとうございますです」とランチの乗ったトレーを抱えたアルマが、緩~い笑顔で座ったのでした。


「こんにちわフレイ様。姫様をお守りいただいたことを、タイヘン感謝しておりますわ。ミランダ女史を初め、王城に仕える侍女を代表して深く感謝を申し上げますです」

「あ、これはどうもご丁寧に……」


 そんな私たちの間に畏まった挨拶など不要だよー。そんなことより……詳しい話を聞かせて貰おうか。


「え、我ながら良い話しだな~。って、考え付いたんですけどいけませんでしたかぁ?」

「いけませんか? って……いぃっ、っくっ、つっっ、いけませんともっ!」


 言い切った私ナイス!?

 そうだよ。いくらみっともなくたって、そういう嘘にウソを塗り固めちゃダメ絶対ッ! と、私はガンとして告げたら、アルマはランチをパクつきながら、器用に身をよじりながら渋った。


「……えぇ~、でもぉ。皆様に「ここだけの話だけど~」っと、流布させておいたことがまるっきりの虚言になってしまいますしぃ」

「元からまるっきりの嘘でしょうがソレはッ!」


 てか、さっきの与太話をすでに広めてただとぉ!?

 どおりで、私が腕の傷のことをいっっくら弁解しても「いいんですよ、いいんですよ。そういう設定ですものねっ?」みたいに同情の目を向けられるわけだぁっ!?

 嘘を言う口はこの口かぁッ!

 と、アルマの頬を、両手でぐにーっ、と引っ張ってやったが、面の皮が厚いのか愛くるしい笑顔が欠片も崩れねぇ。なんたる侍女の鑑っ! と、驚嘆したらアルマはにへらっ、と続けた。


「えへっ、わたし褒められちゃいましたかぁ? でもぉ、噂については譲れないですよ?フレイ様には、ご納得していただけないと少し困るんですぅ」

「は、なんでよ?」

「人の口に戸は立てられない。とは言いましてもー、このまま生徒たちの間に、無責任な噂が広がれば、いつ醜聞の向きが王家に来るとも限りませんしぃ? そうなるとその生徒を消す――じゃなかった、噂を消すのが面倒ですよねぇ? ……なら、どうすればいいかわかりますかぁ?」


 キラキラっ、と瞳の強さに、私はなんとなく気圧されつつ、「ど、どうすんの?」と、おうむ返しに聞いたら、アルマはウフッ、と笑った。


「……なら、ウフッ、こちらで噂をコントロールしちゃえばいいんですよぉ! センセーショナルな話にしあげて拡散するのですぅ。熱量をおびで広がりだす話題に乗り遅れまいと、群衆の方から飛びついてきますからね! エヘッ。わたしはぁ、王家を醜聞で穢すようなことは、一ミリたりとも許す気はありませんからねー。群衆については、その口々に謳う噂をも手の内に収める……それが諜報の任務なのです!」

「……ちょっと、息巻いてなにスパイみたいな物騒こと言ってるのよ」


 ボギーの白い眼での突っ込み、右に同じくだ。

 いくら賢しぶっても、アルマの地はおとぼけ侍女だって皆知ってるし。だぁれもスパイだなんて信じないって……あははっ、でも、アルマもちょうど中二病の最中の年齢だし、陰謀とか悪の組織にカブれる時期なのかもね。

 私もスパイごっことか、やったものなぁ。意味もない文字列を暗号だ! と決めつけて解読に勤しんだり、だれかの後をコッソリとつけてみたり。

 ……私にもそんな時代があったなぁ。と、郷愁の思いに胸がせつなくもなったけれど、


「99%の真実のなかに、1%のウソを混ぜ込み、カウンターインテリジェンスの基本ですよねぇ」


 と、ドス黒く意気込むアルマをよくよく見返してみれば……はたして、昔の私はこんなにも黒かったかしら。と、現在と過去とを重なることができず、郷愁の思い出もアルマの頬を掴む手も、惜しむことなくそっと手放した。


「…………ねぇ、今日のアルマ……なんだか黒くない?」

「アルマ、怒ってるの?」

「え? べつに怒ってないですよぉ」


 私やボギーの疑りの目にアルマはあっけらかんとした顔で言った。

 ……ホントに?


「ただぁ、はらわたがぐつぐつと火鍋にかけたように煮えたぎってたり、なんの罪もないスライムの細胞を37564個ほどに引き千切りたくなる衝動に駆られるぐらいですから」

「紛れもなく怒ってる証拠だッ!?」


 アルマそれは愛じゃなく憎悪という感情よっ!?

 いったい温厚なアルマが、どうして、何故に切れるナイフに変身してしまったの!?


「一番の怒りの源は姫様を襲った犯人ですけどぉ。それ以上にぷんぷんなのは、姫様を不要に怖がらせた、我らの不甲斐なさにですよぉ」

「え、それで自分に怒ってるの? アルマってそんなマジメキャラだったっけ?」

「ボギー様まで混ぜっ返さないくださいよぉ。フレイ様やアイゼン様とか、王家に類しない方々に、姫様を救われるなんて対外的には恥なんですからー……まぁ、わたしはショージキ、姫様が無事なら、外様だろーが、魔物だろーが様をつけて感謝申し上げますけど。

 でもぉパーティ会場の警備が不十分だったのは、ルクレール様が軍務卿のハミルトン家に、要請を渋られたからなんですよぉ。頭を下げたくないからってそんな理由だけで!……一応は王家の身内であるのに、ことごとく役立たずでいらっしゃるとかぁ、凋落ぶりが情けなくなるのですうぅ!?」


 と、アルマはトレーに拳を叩きつけた……私ももっともだと思うけど、周りの人がビビッてるから。ちょっと落ち着いて、ね?

 私もかの家には、物申したいことは積もるほどだけど、巻き込まれ体質改善中の身だしいっくら頼りないしても、私のあらぬことを噂に広められても困るし。とNGを念押しをしたら「……は~い」と、渋々ながら頷いた。

 ……そうやって納得した素振りで裏でコソコソ~っと暗躍しようなら、オコだかんね。間食と軽口はトラブルの元!


「わかってますよぉ……でもでも、それでルクレール様がの陰口を叩かれてもわたしのせいじゃないですもん。テオドア様もジョシュア様も学院をお休みしてるのはー、もう婚約者レースから脱落したんだー。って。ふふっ」


 と、アルマは膨らませた頬の空気をプスーッ、と抜くように笑った。

 ……へー。テオドアだけじゃなく、ジョシュアまで休んでんだ。確かに「テオドア様は急な心痛を発症された」と、モーティス教諭が授業前には棒読み説明をしてたな。

 いくら厚顔無恥なジョシュアといえど、学院をズル休みしたのも「失態」を演じたという負い目があるのかもね。



 ……けど、考えてみれば、あの催しはいったい、誰得だったんだろか。

 寮生のお姉さま方には、少なくない実りがあったようだけど、襲撃された姫様は言うに及ばず、巻き込まれた私やボギーも休日を潰され、ルクレール家にいたってはただ評判を落としたあげく、ジョシュアの野望は完璧に潰えたでしょう。


 あろうことかパーティ場で姫様に暴言を吐きちらかし、襲撃事件にあっても、最後まで姫様のもとに現れないとか。これでは、不死鳥の羽をたばにしても、灰になった肉体の蘇生は無理かろうてな……。

 ……まったく「姫様を我が手に!」とか、怖れしらずな野望を抱くのは勝手だけどさー、それなら身を張るぐらいの気概はあってしかるべきだと思うのは高望み過ぎ?


 まぁ、いいでしょう。

 私も陛下の事情聴取の折に「失態」については、正確な報告をさせていただきました。先日の騎士団のしくじりとジョシュア君の華々しい入団とのあわせ技で、騎士団の鍛練が血反吐を吐きまくる厳しさになったとしても、それは私のあずかり知らぬ所ですわね?



「いずれにしましても、衰えたる古き家々の方には、いままで王家を支えてくださりましてどーもですぅ……け・ど。古き血やプライドだけに固執して、姫様を守るお仕事をサボるなんて万死に値しますよ……フフッ、足手まといにしかならない、彼らなんてポイです。ローウェル様やフレイ様といった、新たなる血はお招きして支えていただければ、これからも王家は健在であり続けますもの。ねー。フレイ様?」

「……え?」

「これからも姫様の”光”として支えてくださいませねー。わたしみたいな”裏”の者は、フレイ様みたいに表で目立ってくださればされるほど、安心して暗躍できるのですから」


 ね? と、アルマは瞳を覗き込むようにしながら、私の手をぎゅっと握った。

 ……え、えぇ? 姫様を支えろって。前みたいに、身を挺して守れって? いやいや、私のようなお菓子作りしか能のない役立たずに無茶ブリな。そんな期待されても……てか、そのウルウルの目力は、こ、断りづらっ!




「――軽々しく返事しちゃダメ」


 私がウルウルの圧力に窮していたら、横から矢のように鋭い声がした「せ、先輩っ!」と、情けなくもホッ、と答えれば、プリシス先輩はゆっくりとお茶をすすりながらアルマを涼やかな細目で窘めた。


「フレイ様の単純さに付け込むのはルール違反。なし崩し的な勧誘はダメ」

「……でもぉ」

「返事」

「は~い…………ちぇ、せっかく引き込めるチャンスだったのにぃ」


 な、なんか、ふたりの間で火花が散ってたような気がしたけど、ま、まぁ納得してくれたんなら、良かったわ。さて。長居し過ぎたし、愚痴るのもほどほどに解散しましょうか。と席を立ちあがりかけた私の袖を、だんまりをしてたボギーが「待った」と掴んだ。

 えっ?

 こんどはボギーなん?



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