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桜の蕾

作者: ドラマー10

『銀河』


僕の名前である。


今はまだ小学校6年という小ささでありながら恋をしている。


『舞』


僕の好きな人であり初恋の人である。


僕と舞は小学校が違う。


だが僕は舞のことを好きである。


当然舞は僕のことを知っている。


でもしゃべることなんてめったになかった。


だから舞の頭には僕なんてまだほとんどいなかった。


出会いは1年半前にさかのぼる・・・






僕はある塾に通っていた。


いつもテストの結果は2番とかなりのできだった。


でもいつも2番だった。


そして僕は思った・・


「ここにいたら2番のままだ!違うところで新しいやり方を探す!」


そしてその塾をやめ別の塾に通った。


その塾にはクラスが2つあった。


SクラスとAクラス。


僕はSクラスに入った。


そして出会った・・彼女『舞』と・・


彼女は僕が入塾したとき隣の席だった。


だけどまだ僕はそのときは意識なんてしてなかった・・・


そして塾で大きな変動が起きた。


クラスが6個に増えたのだ。


そして僕はクラス2になった。


クラス2には元クラスSの中でもそこそこの人がいくクラスだった。


そしてクラス2で唯一クラスSから一緒だった人・・


それが舞だった。


舞は「なんやうちらだけはめられたみたいやなぁ。でも、よかったわぁ銀(僕のあだ名)で。


二人でガンバろな」と言って笑った。


その時僕はその笑顔にひきつけられつつあった。でも、やっぱりただの友達なので休み時間は男子同士でしゃべっていた。


そのまま時は過ぎていった。






小6も終わりに近づいてきた。


卒業式の練習が増えて、みんなちょっと緊張気味だった。


でも、中学になったら隣の小学校もいっしょになるから楽しみだった。


そして、卒業式がやってきた。


卒業という大きな関門をひとつ突破したと同時に中学という新しい関門に入る。


その感覚がどっと押し寄せてくる。


緊張していたのが周りからでもわかったらしい。


「おいおい、こんなんで緊張とはお前らしくないやん」


そう言ってくれたのは結局小学校で全部クラスがいっしょだった「鈴太れいた」だった。


鈴太はここぞという時にいつも緊張してしまう俺をいつも励ましてくれた。


「まぁ、楽しいことだけ考えていこうや。彼女とかぁ(笑」


鈴太は小学校でも結構もてる男だった。


俺が知ってるだけでも鈴太のことを好きなやつは6人いた。


でも、鈴太は前に


「中学行ったら考えるけど今は別に好きな人なんかいらんで」


と、言っていた。


正直鈴太がうらやましかった。


鈴太はきっと中学について楽しいことばっかりが頭に浮かんでいるのだろう。


俺だってただ悩んでいたわけじゃない。


舞とおんなじ中学になるから少しは喜んでいた。


「今は舞のことだけ考えよう」


そう心の中でつぶやいた・・・






中学にはいった。


入学式が体育館で行われる前にクラス分けがあった。


「鈴太や健二、竜也とかみんな一緒でありますように・・・あと・・いや、なにより舞もおなじでありますように・・」


そう願ってクラス分けの表を見た。


1組・・・・・・・ない

2,3,4,5,6・・ない


・・・ということは!


全部で7クラスと聞いていたので胸がわくわくしてたまらなかった。


いそいで7組の表をみた。


・・・天原健二・・・岡崎銀河、

金田竜也・・・嵯峨原舞、・・・・・前園鈴太・・・・・・・・・・


やった。


みんな一緒だった。


うれしさのあまり飛び上がりそうになった。


入学式の時もうれしすぎて校長の話が一切頭に入ってこなかった。


そしてついに教室に上がるときがきた。


さすがに隣にはなれなかったけど舞はそう遠い席ではなかった。


斜め前だった。


教室でもずっと舞を見ていた。


「帰るか」そう言ったのは鈴太だった。


俺と鈴太は家がすごく近くいつも一緒に帰っていた。





「なぁ、鈴太。おまえいい娘見つけた?」


と聞いてみた。


「そうやなぁ。前田とか結構かわいかったよなぁ・・うーーーん、あとは・・横山かなぁ」


「そっか前田かぁ。おまえレベル高いの狙うなぁ。」


「すぐに落として見せるで!!なんてな」


といってピースした。


冗談だったんだろうけどこの時の鈴太はすごくうらやましかった。


「俺もいつかは舞を落としてみせる。」


そう心の中で誓った。


でも、この時の俺はまだまだ甘かった・・・・


中学生活もそろそろ1ヶ月がたとうとしていた。


部活動もバスケット部に入部が決定し順調に行く・・・・はずだった。


楽しいはずの毎日。


面白いはずの毎日。


そんな頭の中をめぐっていた物はもう今はなかった。


席は近いのにまだ中学に入って1度も舞としゃべっていない。


さらに今時の中学生の割に携帯を持っていない。


舞は携帯をもっていた。


自分の周りのやつらでも舞のアドを知ってるやつがちらほら見え出した。


「はぁ、なにやってんだろぅ、俺」


そんな事ばかりが頭に浮かんだ。


「銀、部活行こうぜ」


そう言ってきたのは鈴太だった。


鈴太を含め小学校の頃からの付き合いのやつは9人もバスケ部にはいっていた。


まだ3年が引退していないので1年は外で走るだけだ。


でも、今の面白くも楽しくもない世界で唯一楽しくいられる場所。


それが、部活だった。


そして、次第に部活に取り込まれていくこととなった・・・8月にさしかかり部活動でも大きなイベントがあった。


3年が引退した。


2年中心の部活が始まると思っていたが、予想外の発言を顧問がした。


「悪いけど勝つためやったら2年落として1年入れることもあんで。使えんやつは切り捨てる。


使えるやつはどんどん使う。その辺、しっかり理解しとけよ。」


そう言って顧問は練習を始めるように命じた。


練習中に何人か呼び出されて怒られていた。


「きっとあの人たちは落とされるんだ。」


そう思っていた。


でも、その後予想外の出来事がおきる。


「前園、岡崎、ちょっと来い。」


ドキッとした。


心臓がおかしくなりそうだった。


自分ではそれなりにうまい方だとおもっていた。


でも、呼び出されてしまった。


終わった。


そう思った。


顧問に注意されてすぐに練習にもどった。


でも、そんな暗い自分はすぐに消えることとなった。





練習後顧問は


「体育館はそんなにでかないんや。今から呼ぶやつ以外これから外練や。えっと金本・後藤・


中野・・・・・・・・岡崎・前園。以上。」


え・・・


今・・なんて・・??


「やったやん銀!俺ら中やってよ。」


その時は頭が真っ白になっていた。


でもすぐに気がついた。


「そういえば・・・・・さっき注意された人みんな入ってる。」


あれはいらないから注意したんじゃなかった。


いるからこそ注意したのだった。


これまでにない心の底から沸き起こる得体の知れない興奮。


これからの中学生活が光って見えている・・・気がした。


そう、あくまで光っていたのはその部分だけだった・・・・


夏休みも終わりに差し掛かった頃、俺は鈴太達3人と合計4人で遊びに行っていた。


健二「もう、夏休みも終わりかぁ。」


竜也「男気しかなかったなぁ(笑。」


鈴太「それは、お前らの話やろ。」


そう、鈴太には彼女ができた。


名前は横山佳奈。


入学式の日に鈴太が狙っていた女の子の一人である。


鈴太「お前ら好きなやつとかおらんのかい?」


健二「いねぇ。もっとましなやつおらんのかなぁ。」


竜也「それはおんねんけどな、でもメールしてへんしなぁ。なんかいまいち関わりが


ないっちゅーかなぁ」


俺「ちょっと待てよ。おるって初耳やねんけど!」


竜也「ああ。だって隠しとったもん。」


健二「言えや。」


竜也「俺の好きな人は・・・・・嵯峨原・・・・・・」


上手く聞き取れなかった。


俺「なんて?」


もう一度聞きなおした。


竜也「だからぁ、嵯峨原と部活でペアくんどる小泉!何回も言わすな。」


正直焦った。


俺は別にルックスがいいわけじゃない。


でも、なぜか俺の周りの友達は学年でもトップ10には入るイケメンばかりだ。


正直かぶったら勝ち目はない。


竜也「焦ったろ銀!まぁわかっとって聞き取りにくく言ってんけど。」


俺「は?」


竜也「隠さんでええって。お前嵯峨原の事好きなんやろ。」


俺「鈴太ぁぁ!!ばらしたな!!」


鈴太「まさか。お前見とったら誰でもわかるわ。気づいてへんのはこの中にはおらんやろ。」


健二「そうそう。おまえいっつも目が嵯峨原の方にいってるからな」


俺「マジで?」


なんか知らないけど周りから見るとすごいばれていたらしい。


ちょっと恥ずかしくなって下に顔を向けた。


鈴太「でも、早めにねらわな危ないで。なんにせよあいつ携帯もっとる男子のほとんどとメー


ルしとるからなぁ。」


俺「うるさぁぁい。おれのことは俺が何とかするわ。」


明らかに取り乱していた。


でも、自分でもわかっていた。


今の自分には何の力もない事が・・9月も中旬になり体育祭が近づいてきた。


俺は体育祭には騎馬戦の選手として出る事になっていた。


メンバーは当然いつもの4人。


舞は女子障害物競走にでるようだ。


舞は運動神経がいいのにどうしても100Mには出たくないと言っていたらしい。


理由はわからないけどもったいないと思った。



そして体育祭の日が来た。


自分を奈落の底に突き落とす日が・・・・・・





騎馬戦の時がきた。


俺は一番身長が高いという理由で上をやらされた。


でも、全体的に高い騎馬に乗ったので一段と目立つ騎馬になってしまった。


でも、その分の期待には十分応える事ができた。


全体戦では一騎で向こうのチームの半分を倒した。


一騎打ちでは負けなしで優勝した。


クラスの観覧席に戻ると


「すごいやんあんたら」


「見直したわ。いっつもとは大違い」


とか言われた。


でもなぜか舞は他の競技に目を奪われていた。


その競技は・・男子100M


そして聞きたくない一言を耳にする・・


Aさん「舞ちゃぁん。桜本君の事みすぎぃ。」


舞「え?いや、そんな、・・・もぅうっさいねん。みんなあっち行っちゃえ。」


Sさん「またまたぁ。てれやなんだからぁ。」




体のすべての感覚が消えた。


思考回路だけがフルで活動し、嫌が応にも答えを引き出した。


舞は「翔(桜本のあだ名)」が好き。


実は翔とはすごく仲がいい。


翔はバスケ部でも来季キャプテンとされるぐらい上手くて、顔もいい。


そして俺の頭はひとつの答えを導き出した。




・・・・・・もぅあきらめろ。他の人をあたれ・・・と。



なぜか知らないけど、俺は走っていた。


きっとあの場所にはいたくなかったんだろう。


走った。


とにかく走った。


誰もいないところに・・


そしていつの間にか誰もいない体育館に一人でいた。


俺はしゃがみ込み体育館の隅でうずくまって一粒のしずくを目からこぼした・・


声こそ出なかったものの、泣きじゃくる音は静かな体育館には大きすぎる音だった。



でも、すぐに泣き止んだ。


理由はわからないけど、体が勝手に動いていた。


ダム、ダム・・・・・パスッ


何故かそのボールはいつもより重く感じた。


でも・・その分暖かい気もした。


「どうした?」


鈴太が来た。


「急に走り出したからびっくりしたわ。何でバスケしとん?」


「急にトイレに行きたくなって・・。で、なんかリング見たらバスケしたなってん。」


明らかに見苦しい言い訳だった。


でも


「そっか。ならいいや。ついでやし俺もしていこぉ」


と言ってバスケをしだした。


二人で1対1をした。


その時俺は鈴太に誓った


「俺はバスケにかけるで」


でも、鈴太はすぐに俺の事を見抜いていた。


「それはやる気か?それともただの逃げか?」


・・・・



・・・・


言葉に詰まった・・


でも答えは出た


「今は逃げ場所かもしれん。でも、それをやる気に変える。それだけは誓ったる。」


「よぉ言った!!だったらそのやる気を見してもらおか!!」


そっからの1対1は壮絶なものになった。


二人とも体育祭の出番はもう無いから時を忘れ戦い続けた。


かれこれ1時間はやった・・・


パスッ・・・ダム、ダム、ダム・・・


俺のスリーが決まった。


そこで二人とも倒れ尽きた。


「そんだけ出来たらほんきやな。がんばろな!」


「あぁ。まかしとけ!もう誰にも負けん!!」


そう、今は恋敵であっても、そうじゃなくなっても「翔」には負けない。


そう誓った・・・前の自分はもういない


今の俺にはもうバスケしか見えていなかった。


舞という大きな存在が心から完全に消えたわけではないけど、バスケはそれよりも大きな範囲


で俺の心を埋めていた。


そして、2学期も終わり3学期に入ろうとしていた時の事だった。


何気ない事で携帯を買ってもらえる事となった。


実は2学期の期末テストで3教科で学年で1番を取ったのだ。


社会と英語はだめだったけど残りの3つで100点に近い点数を取れたからちょっとお願いしてみたのだ。


どうやら最近携帯を息子に持たせるという事で周りのお母さん方と相談していたらしい。


そしてその携帯は俺の人生に大きな変化をもたらす事となる。





3学期に入りその携帯にもいろいろアドが入りだした。


鈴太にはまだまだ及ばないけど女子のアドも結構入ってる。


その中に舞の名前は無いけど竜也が恋をしている・・・・


今や竜也の恋人である小泉の名前があった。


そして3学期に入って「3年生を送る会」という会を行った次の日に信じられないニュースが飛


び込んできた。


それは小泉のメールからだった。


「なぁ、ザッキー(俺の新しいあだな)。今好きな人おる?」


「今はおらんなぁ・・。しいて言うならボール?(笑」


「実はなぁ、相談したい事があんねん。


前にさぁ、佳奈ちゃん(小泉の友達)が鈴太に振られた時にめっちゃ相談に乗って励ましてあげたって聞


いてんけどさぁ、舞がなぁ、翔に振られたらしくてさぁ・・・


うちが何言っても聞いてくれへんねん(泣


舞とは仲いいんやろ。


ちょっと相談にのったってくれへん?」


正直かなり迷った。


実は鈴太や翔に振られたやつの相談に乗った事はもう10回近い。


自分が振ったやつはそんなにいないけどきっと誰かに相談してるんだろう。


だから普通だったら乗ってあげたい。


でも、まだ・・・・・・・ほんの少し、ほんの少しの事なんだけど舞を忘れられずにいた。


舞の相談に乗ってる時に自分の心に眠っていたものがまた目を覚ますかも知れない。


そうなったら、せっかく鈴太に誓ったのが無駄になる。


『ピーンポーン』


・・・・・・・・「銀河。鈴太君よ。」


何故か知らないけど鈴太が家にきた。


そして鈴太はなんの表情も見せないまま近くの公園に俺を連れて行った。


「なぁ銀。ちょいと目ぇつぶれ。」


「はぁ?何でだよ?」


「いいから!!!」


なんか少しキレぎみだった。


・・・


・・・


バゴッ。


「いってぇな!!何すんだよ!!」


「ふざけんな!何で相談に乗ってやらねぇんだよ!・・・小泉からメールが来たよ。お前相談に乗ってく


れるかって聞かれた後から返事返してないそうじゃねぇか。


何でだよ。


いつも通りのってやれよ。」


「乗れないよ・・。俺はあいつよりもバスケをとったんだ!お前に誓ったんだよ!!」


バゴッ。


「それがふざけんなっつってんだよ!


何が誓っただ!


お前相談に乗ってやれないって事はまだ引きずってんじゃん!


結局逃げたままなんだろぅがよぉ!!」


「わかったような口聞くなよ!!


お前に何がわかるんだよ!!


忘れようとしても忘れられないんだよ!!!


この気持ちがお前にわかんのかよ!!アァ!!」


「やっぱそうなんだろ。


忘れられないんだろ。


だったら素直に言えばいいじゃん。


本人の目の前で堂々と言えばいいじゃん。


好きなもんはしょうがねぇよ。


舞にしっかり話してけじめつけろよ・・・」


「でも、あいつは今、翔に振られたばっかで・・」


「だからなんなんだよ。


お前があいつを好きなのに翔が関係あるのかよ。


これはお前と舞の問題だろ。


だったらちゃんと面向かって一発決めてこいよ!」


そう言って鈴太は公園を去っていった。


俺はすぐに小泉にメールを打った。


「その相談乗った!


舞は俺が何とかする!!


舞のアドと住所教えてくれ!」


「わかった。


舞の事、よろしくな!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


すぐに舞にメールを打った。


「今からお前の家に行く。


どうしても言わなきゃならない事があるし、みんなから舞を託された。


あと10分したら家の前に出てきてくれ。」


はじめは出てくるかどうか不安だった。


でも、舞は出てきてくれる。


何故かそう信じる事が出来た。


そして舞の家に着いた。


舞は玄関に座っていた。


舞の顔は少し暗がりの中でもわかるくらい目がはれていた。


「舞、聞いたよ。


翔の事・・・残念だったな。」


「残念じゃすまないの!!


もぅ、うち、どぉしたらええかわからへんゎ。」


うっ、うっ、うっ・・・


「なぁ舞。


話したい事あるか?」


舞は首を横に振った。


「そっか。


でもな、俺はたぶんまだ舞はなんか話したい事が心につまっとると思うねん。


ちゃう?」


舞は首を振らなかった。


「大丈夫。


舞がしゃべりたくなったら言ってくれ。


それまでこうして隣におったる。」


舞は首を縦にふった。





どのくらい時間がたっただろうか。


よくわからないけどもう周りは暗くなっていた。


そして、舞はゆっくり口を開いた。


「あのな、うっ・・


あのなっ」


「ゆっくりでええって。


落ち着いて。


な。」


「ふぅ」


舞は静かに深呼吸をした。


そしてゆっくり話し始めた。


「うちなぁ、翔の事かなり前から好きやってん。


確か小6の終わり位。


翔がうちにむかってな、


このクラスおもんない。


お前おらんかったら最悪の6年生生活やったって、ゆーてくれてん。


うちな、すっごい嬉かってん。


でな、その後卒業してすぐ翔のアド聞いて、何とか関係作っていこーとしてん。


でもな、それだけやったらあかんと思って鈴太君に相談してん。


銀は携帯持ってないからうちも相談できんかってん。


んでな、鈴太君が無理して間取り持ってくれてんけどな、翔が全然相手してくれんからな、うち思い切っ


て聞いてみてん。うちの事どう思とるかとうちが翔の事どう思とるか。


そしたらな、翔な、


悪いけどお前には興味無いって即答されてな、


もぅその時は何が何かわからんくなってな、すぐに家帰って部屋閉じこもって・・・


学校も今日いけんでさぁ・・・


そしたら今日コイちゃん(小泉)からメールきてな、相談してん。」


「そっか・・・・


うん、言ってくれてありがとぉ。


んでな、今はどう思とん?」


「もぅええわ。なんか気が抜けてしんどい。


ちょっと間んは一人でおる。」


「わかった。


それが舞の出した答えやな。


でもな、そんなに簡単に踏ん切りつけてええんかなぁ。


少なくとも俺はめっちゃ後悔した。


簡単に踏ん切りつけてもろくな事ないで。」


「でも、・・・・自分ではめっちゃってゆーとったけど、たぶんそうでもなかったんかなぁ。」


「そう思うんやったらもぅこの事については何も言わん。・・・。お願いがあんねんけどさ、今からちょ


っと時間くれへん?」


「うーーーん、まぁええよ。話聞いてくれたんやし。」


そして1回深呼吸をした後、今度は俺が口を開いた。


「俺な、小4のときさぁ、一目ぼれした奴がおってな、


そいつとは、それなりにしゃべったりしていい感じやってん。


でも、中学にはいったらその関係が一気に壊れてさぁ、


もぅその時はほんまに嫌になった。


でも、そいつのことやっぱり諦められんくてなぁ、


しゃべれんなりに想い続けとってん。


そしたら知らん間に周りは彼女が出来ていってさ、でも自分には好きな人がおるから平気やってごまかし


とってん。


でもそいつに好きな人がおる事知ってもーてん。


それも、俺の友達。


しかもどれをとっても俺より上のイケメン君。


正直諦めたらどんなに楽か、そればっかり思い浮かんだ。


それでもやっぱホンマの好きって諦められへんもんやったわ。


でもそれに気づくのに鈴太や小泉の力借りなあかんかった。


あいつらが気づかしてくれてん。


だから俺は決めてん。


自分の思いを全部ぶつけるって。」


「銀は強いなぁ。でも、何でそんな話をうちに?」


「今言ったやろ。


好きな人に全部話すって。」


「え?


それ・・・うちの事?」


「そうや。


さらに聞いてほしい事がある。


俺は・・・お前がずっと好きやった。


それは一回も途切れた事は無い。


でも今俺がしゃべっとんは告白やない。


これは俺の意思表明であって、まだ告白はできひん。


確かに今すぐにでも告白したい。


でも今ここでバスケよりも大事な物を作ったら俺がどうしても勝たなあかんやつに勝てんくなるし、鈴太


にもバスケにかけるって約束した。


だから、引退するまで待っといてほしい。


その時が来たら何があっても告白する。


たとえお前に彼女が出来とっても言う。


それはここに誓う。」


・・・・・・・・・


「ちょっと待ってな。急な事やから・・・」


「とりあえず今日はもう帰ろ。そろそろ時間帯もやばいわ。親に心配かけたないしな。」


「うん。わかった。」


そう言って舞はゆっくり家に戻っていった。


家に帰る途中、一人ベンチに座って考え込んだ。


これでよかったのか?


このタイミングで言うと舞に余計な負担がかかるのはわかっていた。


自分のやった事が本当に正しかったのか、それは自分の力ではわからなかった。


只、舞に想いを伝えずに後悔する事だけは避ける事ができた。


それだけは確かだった。


それだけが確かだった。


でも、確かなのはそれだけだった・・・



家についてもそれしか考えれなかった。


そして静かな部屋にメロディーが流れた。


舞からのメールだった。


「明日、もう一回会いたい。家これる?」


「わかった。明日は部活休やからいつでもいけるで。いつ行ったらいい?」


「出来るだけ早く。10時くらいには会いたい。」


「じゃあ10時に行くわ。」


「了解。待ってる・・」


絵文字1つない寂しいメールだった。


でも、絵文字が無い方がよかった。


その分真剣さを物語っていた。


電気を消して真っ暗な状態。


なのに目は、はっきりと開いたまま。


布団に入りながら、一人、明けない夜を過ごした・・・






朝日が窓から差し込む


部屋にあるテレビに反射し目に当たる


眩しさのあまり目をつぶる


閉じた目はすごく重かった


眠れなかったからか、まぶしかったのか、現実から逃げたかったからか、


それはわからなかったけど


ただ、その時はすごくおもかったんだ・・・





朝9時


約束の時間まで後1時間。


舞の家までは自転車で10分で着くから15分前に到着予定とすると、


あと30分したら家を出る事になる。


すでに髪型はセットし終わりご飯も食べ終わっていた。


家を出るまでの30分は今までの舞との思い出を思い出すのには短すぎた。


9時30分になり家を出た。


ゆっくり走っているはずなのに気がつけば舞の家はすぐ目の前だった。


家に着き、緊張する自分をどうにかしようと足を押さえたり深呼吸をしたりした。


すると後ろから声が聞こえた。


「銀って以外に緊張するタイプなんや。」


舞だった。


「ごめんなぁ、びっくりさせて。


銀がどんな感じで家に来るかきになってさぁ。」


その時に見せた笑顔は、俺が一目ぼれした時の笑顔にそっくりだった。


そして舞は俺の隣に座り、話し出した。


「うちって鈍感なんかなぁ?


いろいろ考えてんけど、やっぱりここまで好きになってもらえるなんて幸せやで。


銀とは小学校の頃からの知り合いやのにうちいっつも銀に助けてもらってばっかりやん。


なぁ銀、なんでうちなん?」


「・・・・・・・・・だって一緒におって楽しかってんもん。それに・・・可愛いし。」


二人とも真っ赤になった。


「銀はおもろい事言うなぁ。


今度はうちの決意聞いてくれる?」


「うん。」


「うちはある人を待たしてる。


うちは何があってもその人の意思に答えたい。


うちみたいな人を愛し続けてくれてるその人になんとしてもお返ししたい。


それにその時が来るまで愛し続ける事でその人がうちに抱いていた心を理解したい。


銀、部活がんばれ!!


何の心配もいらん。


銀がうちに話す時がくるまでうちも待つ。


今は部活にかけてもええで。」


涙が出そうになった。


ここに来るまでに一体どれだけの時間を費やしたのだろう。


どれだけの人を巻き込み、どれだけつらい目にあっただろう。


でも、今は違う。


一握りの幸せをつかむにはこの代償は軽いものなのかもしれない。


そして舞はこう付け加えた。


「うちらは付き合ってないけど、お互い愛し合ってる。


絶対に忘れんとってな。」


「大丈夫や!


俺には自信がある!!」


そう言って笑いあった。


もう冬も終わり春が見え始めている1日の出来事だった。









あの春の日の出来事から、約1年がたった。


まだ舞は彼女にはなっていない。


でも、一緒に遊びに行ったり、帰ったり、喋ったりしている。


部活も最後の試合まで1週間をきっていた。


そして、ある日の帰り道の事だった。


その日は舞と二人で帰っていた。


「もうそろそろ部活も終わるんかなぁ。」


「弱気やなぁ。キャプテンがそんなんじゃぁ誰もついてこんでぇ」


今俺はバスケ部でキャプテンをやっている。


はじめは翔がキャプテンになる予定だったが、あの日以来の猛練習でキャプテンを勝ち取る事ができたの


だった。


最後の総体の相手は前の大会もその前も1位の中学。


いっつも1回戦負けの俺達のかなう相手じゃない。


「なぁ、やっぱり奇跡おこさな勝てんよなぁ。


でも勝ちたいなぁ。」


「うちも応援にいったるからがんばって!!」


「やれるだけやってみるか!!」




二人で歩いている道


桜の木が二人を祝福するように花びらを散らせつかせる


そんな中に見つけたふたつの蕾


それはまるで花開くその日を心待ちにしているようだった。



そう、それはまるで花開く二人を夢見る俺と舞のようだった。




舞、いつか二人で「彼女です」「彼氏です」って言えるようになろうな・・・・・・





                     完

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― 新着の感想 ―
[一言]  構成が若干時系列になっているので少し単調なイメージを受けました。もうちょいなんとかならないのかなぁと。  
[一言] 読ませていただきました 本当にスラスラっと読める作品でした。 文の作りもいいなぁとか思いながら読んでました… とてもいい小説でした!!
[一言] すごい良かったです!サラサラ読めて、なんか気持ちがすっきりしました!
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