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 村に戻ってお昼を食べて、ペタンに魔力をあげて寝た後ミーナに捕まった。

どうにもペタンを連れて小さい子達で遊びたいらしい。


「おにーちゃん、ぺたんといっしょにきてぇ」


 と、ミーナなりにかわいこぶった声で頼み込んで来るのだ。

今までも僕に遊んでとせがんできた事はあったけど、ここまで甘い声、聞いたこと無いよ。

そんなにペタンの毛並みに魅了されたのかな。


 まぁ、一応今は村の仕事からは自由にしてもらえてるわけだし。

ペタンに小さい子に怪我をさせないように遊ぶ指示を出す練習と思えばいいかな。

そんな風に思って僕はミーナに、いいよ、と答えたのだった。

小さくしたペタンをミーナに抱え込まれちゃったけど。

ペタンはミーナが僕の妹だからか、それとも元から優しい性格なのか、噛み付く事は無い。


 そんなわけで、僕は以前のようにレシヌお姉ちゃんが纏める子供グループの所へ向かった。

ペタンを抱えてとてとてと子供達の輪の中に入って良くミーナを歓声が包む。

誰もが早く触りたい!という中で、僕はちょっと待ったを掛けえてペタンに指示を出す。


「いいかいペタン。ここに居る子は小さな子達だから、嫌な事をされても本気で噛むのは禁止。どうしてもいやなことがあったら僕のところにおいで。それ以外はまぁ、遊んであげて。お願いだよペタン」


 僕のこのお願いにペタンはくぉん!と鳴いてしゅたっとミーナの腕の中から降り立って、積極的に子供達の足の間をすり抜け始める。

ちっちゃい子達は鬼ごっこだと思ったのか、きゃいきゃいと騒ぎながらそのふわふわの尻尾を追う。

ちょっと年長の、僕ぐらいの子供達はそれぞれ声を掛け合ってペタンを腕の中に抱え込もうと追い込みを始める。

だけど小さな子も大きな子も混じっていて、助け合いとかちぐはぐで、ペタンはその隙をするりと潜り抜ける。

そして潜り抜けると皆を挑発するように尻尾をフリフリ、こんこん鳴いて皆を挑発するのだ。

皆あっという間にペタンに夢中だ。


 そんな中でも今年14に成ったばかりのレシヌお姉ちゃんはペタンよりも僕の方が気になるみたいだった。

いや、正確にはレシヌお姉ちゃんだけじゃなくて、守護獣が孵るのが近い13から14のお兄ちゃんお姉ちゃんグループかな。

そんな皆の質問のほとんど、どうやったら守護獣を早く孵せるか、だった。

それはレシヌお姉ちゃんも同じで、僕に色々と聞いてきた。


「ねぇユート。あの子が早生まれになる理由本当にわからない?」

「うーん。本当に解らないんだよ。孵った日に一番驚いたのは多分僕だし」

「なにか変わったことはしてなかったの?魔力を卵に注ぐ時とか」

「うーん。そんなのあるのかな。僕は皆と同じ様に早く孵りますようにって思いながら、毎日たっぷり魔力を注いでただけだし」

「じゃあずるい事なにもしてないのね?」

「ずるって……そんなのあったら僕が知りたいよ」

「ふーん。じゃあそれはそういう事にしておいて、と」

「うん」


 僕は質問から開放されると思ったんだけど、レシヌお姉ちゃんはそれだけで済ます気は無かったようだ。


「今ラガムさんに色々教えてもらってるのよね。どんな事教えてもらってるの?」

「んー。これは自分で実際に守護獣を孵してから聞いたほうが良いと思うから、ヒミツ」

「なんで?教えてくれても良いじゃない」

「ん、教えてもいいのかもしれないけど……やっぱりラガムさんの言う事を聞くのも、実際に守護獣を孵す前と後じゃ、全然実感が違うと思うな」

「なにそれ。守護獣持たないと話が解らないって言うの?」

「うんとさ、やっぱり守護獣って人によって違うからさ……実際に自分の守護獣が孵らないと細かい違いがあってダメなんじゃないかなーって」

「私はそうは思わないわ」

「えとさ、僕のペタンは狐型だけど、レシヌお姉ちゃんの守護獣が猫型で、ペタンよりもっと気まぐれだったらどうかな?同じ守護獣の話をするにしても中身が変わると思わない?」

「うーん。四足の動物だし同じじゃない?」

「いや、足の数じゃなくて守護獣の性格とか、そういう話」

「んんん、そういわれるとそんなような気も……皆はどう?」


 レシヌお姉ちゃんがリーダーとして色々聞いてたわけだけど、周りの皆もちょっと考え込んだ様子でそれぞれ視線を交し合っている。

これ以上聞かれても、本当に僕は守護獣を持つ感覚は卵を孵さないと解らないと思うのでどうしようもないので。

このまま諦めてくれると良いんだけど。


 そんな風に思って一息ついていると、今度はなにやら猫なで声でレシヌお姉ちゃんが言ってきた。


「じゃあ、その話はここで終わりにするけど……貴方と話してて私達全然あの子と遊んでないのよね」

「あの子って、ペタンの事?」

「そう!貴方が主人なんだから私達と遊ぶように言ってよぅ」

「いや、ちびっこ達が遊んでるんだからレシヌお姉ちゃんも混じってきなよ」

「やーよ。どたばた駆け回るなんて。私はあの毛並みをゆっくり堪能してみたいの」

「そこはお姉ちゃんなんだからさ、小さい子に合わせて……」

「小さくないからどたばたしたくないの、解りなさい」


 レシヌお姉ちゃんは普段は面倒見がいいんだけどなぁ。

時々こうやって理不尽になる。

コレが無ければ良いお姉ちゃんなんだけどなぁ。

と、思ったら集まってる年長組の中では女の子は皆頷いてる。

男の皆はそういうの気にしないみたいで、ちび達に混じってペタンを追いかけてるのに。

……これは、いう事聞かない方が良いのか悪いのか。


 きっと今からペタンを呼びつけたら追いかけっこをしてる子達皆を敵に廻すよね。

どうしよう。


 さぁさぁとお姉ちゃん達ににじりよられた結果僕が選んだのは……。


「おーい、ペタンも皆も疲れたでしょ。ちょっと井戸で水飲みながらゆっくりしようよ」


 なんてことを言って皆を集めた後、ペタンにこっそり女の子達に撫で回されてあげて、とお願いする道だった。

このお願いをした時、ペタンは何かを催促するように僕の手をぺろぺろ舐めたんだけど。

夕飯の後の魔力のおねだり、だよね。

はぁ、仕方ないか。

皆に囲まれてもみくちゃにされるのはペタンだもんね。

お願いする側としては断れないおねだりだね。


 そうして、井戸端で僕ら子供達は夕飯の時間。

日が落ちるまでペタンを思う存分撫でて、揉んで、かいぐりまわして過ごしたのだった。


 次の日の朝は、ちょっと起きるのが辛かったのは仕方ないよね……。

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