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人と守護獣の繋がり

 今日はためしに馬サイズになったペタンに乗って狩り小屋まで来て見た。

昨日より大分早く着いたので声を掛けて見る。


「ラガムさーん、いますかー?」


 声掛けに狩り小屋から少しぎしぎしという音がした後ドアが開いてラガムさんが顔を出した。

そして僕とペタンを見る顔には驚きの色を出していた。


「おま、ユート。もうお前の守護獣は乗れるようなサイズなのか!?」

「え、うん。どの位大きく成れるのか試したらペタンはもっと大きくもなれたよ」

「まじかよ。うーむ」

「どうしたの」

「ん。いやなんでもないぞ。それより今日は守護獣についての続きだ。中に入れ」

「はーい。ペタン、降りるね。降りたら小さくなって」


 僕たちに背を向けて狩り小屋の中に入って行くラガムさんを追って、僕はそっとペタンの背中から降りる。

そしてするするっと一抱えサイズになったペタンを腕に抱えて中に入って席に着く。

こうして今日のラガムさんの守護獣講座が始まった。


「今日教える事はすげぇ重要な事だ。絶対に忘れるな」


 なんだか凄く真面目な顔でラガムさんが僕の事を見据えてくる。

その様子に僕も思わず背筋が伸びる。

ラガムさんはとても大事な事を言おうとしてる気がする。


「守護獣は強い。俺達人間なんかより遥かにな。だがそんな守護獣にも弱みがある。解るか」

「え……ちょっと、解らないです」

「ああ、そうか。そういえばダムド爺さんが死んだ時、お前さんまだ2歳だったか」

「ダムド爺さんって?」

「お前の親父と同じ農夫のソルタの祖父でな、まぁ大往生だったんだが」


 ラガムさんが一旦言葉を切る。

ソルタおじさんのお祖父さんっていう事は、村的には曾お爺さんくらい?


「ダムド爺さんの守護獣は長い鼻に二本の牙、分厚い皮膚にでかい身体の象っていう動物の型だった。村周りの盲獣との戦いでも大活躍だった」

「盲獣……?」

「それはまた今度説明してやる。で、そんな強い守護獣だったんだが……お前、村でそんな守護獣みたことないだろう」

「えー、あ、うん」

「そりゃな、ダムド爺さんが死んだ時、一緒に天に召されたからだ」

「え」

「不思議におもわねえか。人間よりずっと強い守護獣が、なんで世の中に溢れないのか」

「それは……」


 考えた事もなかった。

ただなんとなく世界は守護獣だらけにならないって気分だけで、その理由まで考えた事なかった。


「守護獣はな、主人と生きて、死ぬ。良いか。お前が死ねばそのペタンも死ぬ。守護獣は強い、それこそ主人さえ無事なら不死身なんじゃないかってくらいな」

「そんなに強いの?」

「ああ、強い。守護騎兵団なんてのも、人間同士が戦うように思えるだろうが、実際はお互い守護獣を敵の主人の所に送り込みあってなす術もなく相討ちになるのを防ぐ為に、一番安全な守護獣と行動する為のもんだ」

「え、えぇー……僕てっきり守護獣とならんで戦う人達だと思ってた」

「ははは、名前だけ聞けばそう思うわな。でもまぁ実態はそんなもんだ」

「じゃあ、守護魔道師団は?」

「んー。あの人達の仕事はちょっと特殊なんだよな」

「特殊って、どんな風に?」

「それにはまず盲獣の話をせにゃならんのだ。盲獣っていうのはな、自然に生まれる主人のいない守護獣みたいな生き物だ」


 うん?主人がいない守護獣ってご飯どうするんだろう。

そこの辺りを聞くとラガムさんはまぁ落ち着けと話を区切って改めて話を始めた。


「盲獣は主人がいない、当然魔力をくれる相手がいないわけだ、そこでどうするかというと、土地の精気を喰らう」

「土地の……せいき?」

「土地の元気みたいなもんだな。これを喰われると土地に根付く木々や草花が枯れちまう。それを防ぐのが守護魔道師団の仕事よ」

「どんな風に防ぐの?」

「聞いた話じゃ、守護獣と一緒に盲獣のところまで出向いて魔力をやりとりして満足させて自然……主人を得られる生に送るってことだが、俺には良く解らんな」

「え、さっきちょっと盲獣の話出たときにこの村の近くにも出るっていったよね。それなのにやり方解らないの」

「ああ、俺達の盲獣への対処は至ってシンプル。守護獣でやっつける、だ」

「やっつけるって、殺しちゃうんだ。守護獣みたいな生き物なのに」

「まぁそうなるな。盲獣は殺すと何も残さず塵になる上に守護獣も手間取る相手だから誰もやりたがらん仕事だがな。お前のとこの親父のエリトなんかは草原の盲獣狩りの名手だぞ」

「へー……知らなかった」

「おっと、今日もちと関係無い方に話がとんじまったな」


 ぽりぽりと角ばった顎を掻くラガムさんだけど、僕は関係ないとは思わなかった。

盲獣と守護獣、似てるのに違う二つの獣の話は、凄く興味深かった。

特に、守護魔道師団の話は凄く気になった。

僕は魔道師団って、守護獣に乗りながら魔法で戦う人を想像してたけど、どうも違うみたい。


 魔法なんて、お金のある人しか覚える機会のない物だって解ってるけど。

僕は少し、ううん、この時初めてかなり魔法に興味を持った。

ただ村にいるだけなら、魔力が多いのだけが取り得の僕も魔法はいらないけど。

盲獣を安らかに自然に帰してあげるのに沢山の魔力が必要なら……僕は、それに自分の力が通用するのか、知りたい。

そう思った。


「あの、ラガムさん。僕が守護魔道師団に入るにはどうすればいいかな」

「ふむ……お前さんが守護魔道師団に、か?」

「うん!」

「はは!そりゃとりあえず守護獣についてちゃーんと勉強して、村長と親父さんに相談して許可が出てからの話だ!今は勉強だな!」

「え、えぇー……」

「ま、そうがっかりするな。何にでも順序ってものがあるんだよ。もしお前が魔道師団に入りたいなら、良く守護獣の事を知ってるのなんて基礎の中の基礎として求められる力だ。今はその力を付けろ」

「……はぁい」

「よし!なら今日の授業はここまで!昼飯食って後はその守護獣、ペタンと良く触れ合え!」

「解ったよ。じゃあ、授業ありがとうね、ラガムさん」

「おぅ。とりあえず基本は抑えたからな。明日から実際に守護獣に指示を出して、それを正しく理解させる練習を始めるぞ」

「はーい!」

「楽しそうだな。ま、守護獣とは楽しくやるのが一番だ。またな」

「うん、また明日、ガラムさん」


 守護獣の弱点は一緒に生まれた人、仲良くなれば心で話せる、色々明日が楽しくなる事は色々。

でも、僕の心を一番捉えたのは盲獣の事だった。

自然に生まれたのに、殺される為に産まれる様なのは、可哀想だ。

この日、僕の大きな目標が出来た。


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