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あれ?なんかサイズが

 ……にーちゃん、おにーちゃんって声に僕は眠りから目を覚ます。


「おにーちゃん、しゅごじゅーのしっぽさわっていーい?」


 ミーナがゆさゆさと僕の肩を揺さぶってる。

もう少し寝たかったという言葉を飲み込んで僕は抱え込んでたペタンを見る。

なんだかおかしい気がする。


「なぁミーナ」

「なーにー?しっぽぉ」

「この子にはペタンって名前付けたからな。それともう一つ」

「なに?」

「ペタンってこんな大きかったっけ」


 僕が寝る前のペタンは一抱えの大きさだった。

とは言ってもそれはミーナみたいな小さな子供の手でも両手を使えば持ち上げられる程度の一抱え。

ソレが今じゃどうだろう。

ペタンは僕と一緒に乗ってたはずのベッドから降りて丸まって寝ていて、その体の長さはきっと5歳のミーナを追い越してる。

ちょっと僕でも今のペタンを抱える自信は無い。


「……おっきくなってる!」

「だよねー」

「うん。でもおにーちゃん、しっぽー」


 ミーナにとってはペタンの変化よりも尻尾らしい。

僕はペタンの耳の間から撫で始めて首周りをまさぐってペタンを起こす。

するとなに?というように僕を見上げるペタンにミーナに尻尾を触らせてもいいか聞いた。

そしたらペタンはふすんと鼻息をならした後、起き上がってふさふさの尻尾でミーナの足元を擦り始めた。


「わぁ!しっぽー!」


 ペタンのほうから尻尾を自分に向けてくれたのが嬉しいのか。

ミーナはキャッキャッと嬉しそうに尻尾を追いかける。

ペタンはそんなことして目が回らないのかなーという速さでその場でぐるぐる体を廻している。


 尻尾を追いかけているミーナを頼むね、とペタンに声を掛けてから、僕は今に出た。

そこでは居間から続いている台所で母さんが夕飯のパン支度をしてるのを見つけた。


「お母さん。今話をするのって大丈夫?」

「ん。いいわよ」

「あのさ、ペタン達守護獣はこっちの言葉をわかってるんだよね」

「そうよー」

「じゃあ、僕の方はペタンの言葉とか理解できるようにならないの?」


 僕の問いかけに、お母さんは力強くパンをこねながら答える。

その姿を照らす強い夕日はそろそろお父さん帰ってくるな、と感じさせた。


「ペタンだっけ、あの子とユートが本当に仲良くなったら解ると思うわ」

「ふーん……ペタンはミーナの相手もしてくれて良い子みたいだけど、どんな事言ってるのかなぁ」

「まぁ地道にね。とりあえずはあの子に遊ばれすぎて疲れないように助けに行ってあげなさい」

「うん。解った」


 お母さんの奨めどおり、子供部屋に戻ると四本の足をくたーっとひろげて寝転んで、ミーナが服が汚れるのも構わず尻尾を枕にしているのが目に入った。


「こらミーナ。ペタンぐったりしてるじゃないか」

「なんかね、きゅうにね、あたまフラフラしてぺたーってなっちゃったの」

「はぁ、追っかけすぎだよ。大丈夫かペタン」


 僕の声にくあーっとペタンは意外と元気な声で答える。

回りすぎて目が回っただけで疲れたわけじゃないのかな、と考えながら、僕もペタンの頭側にあぐらをかいて座る。

そしてミーナと遊んであげたペタンの毛並みを手で出来るだけ整えてやる。


「よしよし。よくミーナと遊んでくれたな。よくやったぞペタン」


 ペタンはふすっと一息つくと、気持ち良さそうに目を閉じる。

彼……彼女かもしれないペタンを見ていると、つい僕は口から言っても仕方ない事を呟いてしまった。


「お前いきなりおっきくなったけど大きくなりすぎるなよー。家の中入れなくなるからな」


 僕の言葉をどう思ったかは解らないけど、ペタンは倒していた耳をピンと立てた。

ミーナは僕の言葉に便乗するかと思ったら、尻尾の毛並みの柔らかさに負けて、昼寝した後だっていうのに目がトロンとしてた。

夢心地なミーナはとりあえず放っておくとして……多分服が埃塗れになってるのをお母さんに怒られるけど……僕はぺタンに意識を戻した。


「まぁ、ついうっかり大きくなりすぎるななんていったけど、あんまり気にしなくて良いよ。どんなになってもぺタンは僕の守護獣だからね」


 そう言った僕のペタンを撫でようとした手はぺロリと舐められた。

これは……気にするなってことなのかなぁ。

ああ、ペタンの言葉が解ればいいのに。


 その後はミーナが風邪を引かないようにベッドに運んで毛皮の掛け布団を掛けてやって。

意識が落ちない程度にペタンの傍に座って魔力を流してやって過ごした。

ペタンは凄いなぁ、流しても流しても魔力が吸い込まれて、限界が見えない。

守護獣に限界以上の魔力を流すと嫌がりだすはずだから、ペタンは結構な大食いって事になるのかな。


 しっかし、魔力のあげすぎで大きくなったかと思ったけど。

一向に大きくなる様子は無いなぁ。

そろそろ夕飯の後を考えて魔力流すのはあげるのはやめよう。


 魔力で大きくなるか調べるのに一区切りつけて、ペタンから手を離す。

と、ペタンが名残惜しそうに僕の手を甘がみする。

つるつるとした牙というにはちょっと迫力の足りない歯に手が挟まれてくすぐったい。




 そんな風に過ごした後の夕飯の時間。

お父さんも居る食卓で僕は明日からしばらく畑仕事を手伝えそうに無い事をお父さんに言った。

村長さんのほうからも、僕が守護獣の扱いを学ぶ事をお父さんに伝えていたようで、至って平静にお父さんは頷いた。

それで、いつも真面目なお父さんには珍しくちょっと冗談めかした事を言ったんだ。


「お父さんもお母さんも魔力だけは沢山あったから、ソレを注ぎ続けたら守護獣はあのサイズになったんだ。ユートの守護獣も家よりでかくなるかもな」


 そうなったらユートの守護獣も災厄避けの組入りだな、と笑うお父さんに、なんだかペタンが一気に大きくなった事は言えなかった。

何でだろう、ともやもやしながら食事を終わらせて、部屋に戻ると。

ペタンがまたミーナでも抱えられるサイズに戻っていた。

え?

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