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エピローグ

 大盲獣が輪廻した後に残された大再生が起こった地域の管理者を誰にするか。

これが少し問題になった。

貴族様は皆乾いた不毛の土地から一転、肥沃な大地に変わったそこを自分の領地にしたがった。

だけど、僕はあの可哀想で幸せな大盲獣の残した土地が争いの場になるのは嫌だったので……。

信頼できる人間としてレミルトス様の名前を挙げさせてもらった。

肥沃な大地になったという事は、盲獣も新たに生まれやすくなったという事だ。

だから、その対処を良く知っているだろうレミルトス様を信用する事にした。


 この事は後で軽い嫌味……といっても、精々自由な人生がふいになったよと笑って突かれたくらいなんだから、受け止めるべき言葉を受け賜ったよ。

ついでに、人手が足りないから君も当然手を貸すよね、という要求で、数年僕は魔道師としては異例とも言える、土地付きになった。

まぁそれも新たに増えた領地をカバーする魔道師の順回路が決められて、魔道師と守護獣の血脈が再生した大地に流れ始めるまでの間だったけれど。


 その後は、僕はペタンと気軽な旅の空を歩いて、盲獣を輪廻させて、折りを見て故郷を訪ねる生活をしている。

寝床は基本的にペタンの小麦のような黄金の毛並みの中で、街には精灰を役所に届けて盲獣の討伐記録をつけてもらう時くらい。

ペタンも僕も、一時期は大再生の立て役者として騒ぎ立てられたけど……魔道師は平等、だからね。

国法よりも重いその掟に守れて、僕は1人のただの魔道師に戻った。


 ただ、他の国にも大盲獣とまでは行かなくても、手に負えず放置されていた盲獣を輪廻させて欲しいと要請が周ってきたり。

ほんの少し他の魔道師よりは国の間で融通される存在になったけど、それだけ。

世の中は平和で、盲獣達のような悲しい存在にもきちんと救いがある。

そんな幸福な世界の中で僕はいきていくのだ。




「お兄ちゃん、お帰り!」

「大きくなったねミーナ。守護獣は孵ったかな?」

「まだ。でも明日は私の15の誕生日だから絶対孵るよ」

「そっか……10歳の時は大変だったんだよね」

「もう!またその話!」

「いや、普段傍にいられないからさ。印象的な話ばっかり残るんだよね」

「ふんだ!どうせお兄ちゃんみたいに10歳で守護獣が孵ると思ってたバカな子ですよーだ!」

「そんな風に怒らないで。僕みたいな兄を持たせて、ミーナには苦労させるね」

「そうよ。ペタンとだってもっと遊びたいし……ねーペタン。ペタンも私と遊びたいよね」


 ミーナの言葉にペタンは既に接待モードを止めていて、ツーンと鼻先を逸らす。

それを見てミーナはますます頬を膨らませる。


「まぁまぁ。明日にはミーナにも守護獣が出来るんだからそんなに膨れない」

「ん……あの卵から孵った子、私がペタンにばっかり構ってたら怒るかな」

「そんなことにはならないよ。卵が孵れば、ミーナは自分の守護獣に夢中になるはずだよ」

「本当に?」


 ミーナの問いに僕が答えるより先に、ペタンがくぉん!と鳴く。

僕は念なんて受けないでも解る答えをミーナに伝える。


「当然。皆、持つ前は人の守護獣がとっても羨ましくても。自分の守護獣が孵れば誰もがその子に夢中になるんだ。僕がその良い例だよ」

「……お兄ちゃんも、他の人の守護獣羨ましかった?」

「うん。お父さんのエリトも、お母さんのニニルもとっても羨ましかった」

「でも、今は?」

「そりゃ当然、ペタンが一番だよ。僕はペタンが大好きだからね」

「ふーん。お熱いことだわ。ねぇお兄ちゃん」

「なんだい?」

「ペタンを可愛がるのもいいけど、お嫁さんを見つけてお父さん達を安心させてあげてね。もう良い大人なんだから」

「あちゃあ、それは耳が痛いね……努力します」

『ユートのお嫁さんは僕が認めた子じゃないとダメだから!絶対だからね!』

『ああ、うん。でもペタン、ちょっとは基準を下げてくれても……』

『だーめ、ユートにはさいっこうのお嫁さんを貰ってもらうの!』


 ちょっとミーナには聞かせられない念話をしながら、僕は曖昧な笑いを作った。

ここ数年は家に帰ると大体こんな感じだったりする。

そして、その後には大好きなお母さんのスープを食べて。

そろそろお父さんに、お母さんをなんで選んだのかを改めて聞いてみるのもいいかもしれない。

僕は守護獣の扱いに関しては結構な自信がもてたけど、女の子の事はさっぱりだからね。

でも、お父さんもあんまり女の人との付き合い上手じゃなさそうなんだよね……。

良い話が聞けたら御の字かも。


 こんな、気の抜けたことを考えられる日々を、幾年も重ねて僕とペタンは歩み続けたのだった。

お嫁さんを見つけられたかは、ペタンに聞いて欲しい。

これで僕の、ペタンと出会ってから、大盲獣を輪廻させるまでの話はお終い。

人生はまだまだ終わらないけれど、お話には一区切り、ということで。

お後がよろしいようだといいな。

かなり駆け足気味ですがユートとペタンの、大盲獣に触れてみたいという人生の旅路の話はここまでと相成りました。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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