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昔話ってどのくらい信じればいいの?

 村の14歳以下の子供のまとめ役みたいなレシヌお姉ちゃんにミーナを預ける時、やっぱり驚かれた。

でもさすがにレシヌお姉ちゃんはお姉さんだから、早く村長のところに行くようにって送り出してくれた。

それで、村長さんの家でテーブルに着いて守護獣を見てもらってるんだけど。


「ううむ。確かにこれは守護獣なのかユート?」

「間違いないですよ。僕の卵からかえりました」

「ふーむ。残念だがユート。こりゃ守護獣じゃないかもしれん」

「え。なんでですか?」


 僕は村長さんが何を言っているか解らず呆然とする。

でも体はちゃんと動いて、村長さんから守護獣の狐を受け取った。

守護獣は僕に甘えるようにけぇんと鳴いた。


「実はな、ワシはその守護獣の外見に心当たりがある」

「それがなにか問題あるんですか村長」

「うむぅ、それがな、金毛に青い額の宝石……もしその宝石が仮面のようになるならば……」

「なるなら……?」


 村長のもったいぶった言い方の続きを待ちながら、守護獣のお腹をさくりさくりと擦ってやる。

それに反応してぱたぱたと脚を動かす守護獣が可愛い。名前なんてつけようかな。


「五百年前に世を荒らしまわったというギュラフォックスかもしれん」

「ギュラフォックス……?すいません。良く解らないです」

「昔語りにお前さんとこのお袋さんのテリーヌに聞かされたことはないか。勇者オランドルと聖守護獣アーケンの話を」

「えっと、人を守るはずの守護獣が飼い主の命令で国一つを食べつくして、勇者とその守護獣に倒されるって話ですよね」

「うむ。その話の敵が金毛の体毛に青い水晶の面で顔を覆う巨大な狐なのだ」

「ふーん。でもこの子には関係ないんじゃないですか?」

「そうかもしれんが……普通15で孵る卵が10の子供が孵したというのが引っかかる」


 むむっと、顔をしかめる村長にちょっと僕は呆れてた。

だって、五百年も前の話なんておとぎ話っていうか、よくそんな話を知ってるなーって感じしかしないし。

僕とこの守護獣には何か関係あるとは思えなかったから。

それよりも僕はとりあえず気になってることがあるんだ。


「それより村長。僕、守護獣をかえしちゃったんだけど、守護獣の扱いとか教えてもらえるの?」


 内心、結構わくわくしてるんだ。

守護獣かえした歳の子は皆揃って秘密ーっていうばっかりで全然教えてくれないし。

卵がかるのはそういう意味でも楽しみだったんだよね。

だから、ここで「お前の卵は変だから教えてやらん」とかいわれると凄い困る。


「んーむ。守護獣の扱い方を教えるのはいいんだがなぁ。お前の歳がなぁ」

「僕の歳だと問題あるの村長」

「実は守護獣を孵した後、難しいことというのはほとんどないんじゃ」

「そうなの?」

「んむ。だがな、守護獣にはしっかりした命令を与えてやらないといざという時に危ないのだ」

「それは、守護獣がですか?」

「守護獣の主もだ。もしお前さんが適当に、村の周囲五十メテル以内に入った者と戦えという大雑把な命令をだせば、五十メテルに入った者、皆に無差別に襲い掛かり場合によっては人を殺すなり、返り討ちにあうなりするだろう」

「ぼ、僕はそんな命令だしませんよ」

「まぁ聞け。出したらの話だ。どうだ、守護獣は危険にさらされ、そのような命令を出していたお前は罪人となる。知らぬというのは危険だろう」

「……はい」


 僕は思わず守護獣に視線を落とす。

この子が無差別に人を襲って殺されるところなんて見たくない。

だって僕の守護獣なのだ、僕とずっと過ごすことになる大切な存在なんだ。

誰だってそんな失い方はしたくないはずだし、当然僕も嫌だ。


「それが悩ましいのだがなぁ。お前を今年の孵り組に放り込んで大丈夫かということだ」

「15歳の人達に混ざって勉強するんですか?僕は構いませんけど」


 今年のこの村の15歳は二人、確か雑貨屋のペルンお兄さんと畑と木工の兼業をしてるボートさんの所のリヨンお兄さんだ。

その二人は今年の春先仲良く卵を孵してそれからずっと訓練してるはず、今はもう夏なんだけど……大丈夫かな。


「んむー。そこなんだなぁ。お前さんの守護獣の成長を待たねば訓練は始められぬが、主人であるお前さんが森歩きにどのていど耐えられるかというのも心配でなぁ」

「じゃあ、五年経ってアキラム達と一緒に訓練するようにしたほうがいいですか?」


 僕が現在のこの村で一番力が強い男の子の名前を挙げると、村長はまた唸りだした。

うーん、状況が妙なのはなんとなくわかるけど唸りすぎじゃないかな村長。


「それもお前の守護獣が育ちすぎて他の子とのつりあいがな……仕方ない、猟師のラガムには苦労をかけるがペルンとリヨンとは別にお前を指導させよう」

「なんだか悪いですね……」

「しかたなかろうよ。他に無難な落としどころが無いとあってはなぁ」


 ため息をついた村長さんは、まだ僕の守護獣が怪しげなものだと思っているのかな。

しばらく僕の守護獣をじっと見た後、はぁとため息をつくと仕方なさそうに言った。

さすがにその態度はちょっとカチンと来た。

けど僕がそれを表に出してもどうにもならないのでむっつりと口元をへの字にするだけにしておいた。


「おいおい、そんな不満そうな顔をするな。明日からラガムにお前さんの事も見るように言っておくから。今日はもう家に帰れ、な」


 なんだか言いくるめられてるような気がするけど、僕にはそれ以上どうしようもないので大人しく家に帰ることにした。

お世話になりましたと挨拶してから村長さんの家をでる。

うーん、家に帰れとは言われたけどお昼には早いし、お父さんの手伝いをしにいったらお昼で、僕は今日お弁当なんてもっていないという半端な時間だ。

どうしようかな。


 と、思っていたら守護獣が僕のズボンを咥えてひっぱった。

その様子は遊びたいという感じではなくて、何かなーと少し考えてから、あ、そういえばお昼時に近いんだったと思い出して、守護獣を抱え込む。

この子、お腹すいてるのかもしれない。


 だから卵に魔力を注ぎ込む時みたいな感覚で手に魔力を集めて口元にあてがってあげる。

守護獣への魔力の譲渡はなんとなくお昼時に村を周れば解るから、こんな感じかな?っていう風に。

すると守護獣は僕の手をぺろぺろ舐め始めた。

少しくすぐったいけど我慢して魔力を挙げ続ける。なんだか一回にごっそり魔力を持っていかれる感覚がするので気合を入れて手に魔力を込める。

それを何とか繰り返して、魔力だけならもう村一番といわれているのに結構な疲れを感じて僕が家に帰る頃にはお昼が出来ていた。

はぁ、なんでもいいからお腹一杯食べたいよ。

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