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ペタンの尻尾は八畳敷き?

 僕は今、ラガムさんについてもらって、ペタンに正しい指示を出す練習をしている所だ。


「ペタン、森に入って自分より小さい獲物を……」

「ダメだダメだ!お前の守護獣は自分で体格を変えられるだろうが!まずしっかりどんな大きさで森に入るかを指示してやらなきゃな、際限なくでかい獲物を取ろうとするぞ!」

「は、はい!ええと、じゃあペタン。僕の太ももくらいの高さになって、自分より小さい兎を狩ってくるんだ。盲獣と遭遇したら戻ってきて、ラガムさんの左足を二回、右脚で叩く。いいね?」

「ん、そんなもんだな。いいと思うぞ」

「よし、じゃあペタン、行け!」


 ペタンは僕の指示通りにその体の高さを僕の太ももまで高くして……それに連れて前後も伸びるけどそれは考えない……一目散に森の中に兎を狩りに飛び込んでいった。

それを見送ったラガムさんは頷くと僕に言った。


「やはりお前は筋がいいな。後半年も訓練したらもう俺の元を離れても大丈夫だな」

「あのさ、ラガムさん」

「ん?なんだ」

「守護魔道師団、僕には無理かな?」

「……俺みたいな田舎者には王都で勤める職業になれるかどうかまでは解らん」

「そう、ですか」


 僕は思わず暗い声を出してしまう。

胸の中は、やっぱり田舎に生まれたらずっと田舎で生きていくしかないのかなという気持ちで一杯だった。

だって、僕の家は僕がいないと畑を継ぐ人もいないし。

ミーナは女の子だから畑を継がせるのにはためらいがある。


 でも、僕はこのまま家を継ぐより、できれば守護魔道師団に入りたい。

ペタンと一緒に、盲獣を還す仕事がしてみたい。


 そんな事を思っている僕の心中を知ってか知らずかは解らないけど、ラガムさんは言った。


「まぁ、両親の説得も出来ない奴が盲獣とやり取りできるとは思えん。しっかり話し合え」


 ラガムさんの言う事は耳に痛い。

そうだよね、守護魔道師団は盲獣と通じ合って、気持ちよく次の生に向かってもらうお仕事。

僕もお父さんとお母さんと話し合ってちゃんとしないといけないよね。

いや、ミーナも交えて、かな。

家族の皆に、ちゃんと話そう。


 そんな風に考えてるとラガムさんが僕に向かって言葉を贈って来る。

その言葉は、ちょっとだけ僕を勇気付けてくれるものだった。


「まぁ、お前は才能がありそうだしな。なんなら俺も説得を手伝ってやるよ。でもそれはお前が説得して駄目だったらだぞ」


 言葉と共に、にやりといつもの人相が悪くなる笑みを浮かべて、ラガムさんは僕の頭を撫でた。

ちょっとだけ、気が楽になったかも?




 ラガムさんとの訓練とお昼が終わると、ここの所はずっとペタンを村の子供達、っていっても僕も含むんだけど。

皆と遊ばせる日々が続いてる。

ラガムさん曰く、コレも怪我をさせたりしないように指示を出す練習だっていうけど。

本当に効果あるのかな、なんて考えてたらミーナがおねだりをしてきた。


「おにーちゃん。ペタンおっきくしてぇ」

「どうして?十分大きくない?」


 ペタンは大きな犬くらいのサイズで駆けている。

それに集まる皆とあわせて村の広場も狭く感じるくらいだ。


「あのね、みんなでペタンのしっぽにのりたいの」

「えぇー、そんな事言ってもなぁ。そんな大きな尻尾にしたらペタンが大きくなりすぎるよ」

「おねがいぃ」

「うーん……できるかな?」


 ふと、ちょっと思いついた僕はペタンを呼び寄せて、追いかけっこをしていた皆に集まってもらった。

なんだなんだと言う皆に、ペタンから離れて輪を作ってもらうようにお願いする。

目新しい事が始まりそうだという事で、好奇心を刺激されたのか皆大人しくいう事を聞いてくれる。


 皆が十分離れたのを確認してから、ペタンにそっとお願いする。


「ペタン。尻尾だけ大きく出来ない?皆がしがみつけるくらいおっきく」


 僕の事を見上げたペタンは、一声くぉんと鳴くと、ぺったり地面に腹ばいになる。

そして、次の瞬間にはぼっと膨らんだ尻尾に、歓声が上がる。


「やったー!おっきいしっぽ!ふわふわしっぽ!」


 先陣を切って嬉しそうな叫びを上げながら柔らかい毛の海に飛び込むミーナ。

その後に他の皆も次々続いて思い思いに喜びの声を上げている。


「ん。良く出来たねペタン。ほら、魔力をあげるよ」


 手の先端に魔力を集めて、寝そべるペタンの顎の前に差し出す。

するとペタンはぺろぺろと僕の指先を舐めて魔力を持って行く。


「よしよし、ペタンは良い子だね」


 あんまり気の利いたことは言えないけど、僕のお願いを聞いてくれたペタンを褒める。

その気持ちが通じたのかは解らないけど、ペタンは舐めるだけじゃなくて甘噛みもしてくる。

しばらくそうして好きにさせていると、ペタンは甘噛みをやめて、僕にご主人様は尻尾で遊ばないの?というようにちょっと顔を傾けた。


「大丈夫。僕は毎晩ペタンと一緒だからね」


 そう、結局ペタンが一番一緒にいるのは僕なんだ。

だからちょっとくらい皆に尻尾を貸してあげるくらいは、ね。

ちなみにミーナは毎晩僕にペタンを貸してとお願いしてくるけど、自分の卵を抱かせて寝させてる。

ああ、ペタンのぬくさが楽しみだね。

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