26 プラトニック・ラブ
「汝、新郎貴俊。あなーたは、新婦美咲を妻とし、
善きときも 悪きときも
富めるときも 貧しきときも
病める時も 健やかなる時も
共に歩み
愛をもって生涯支え合うコトを
誓いマスか?」
「はい」
「汝、新婦美咲。あなーたは、新郎貴俊を夫とし、
善きときも 悪きときも
富めるときも 貧しきときも
病める時も 健やかなる時も
共に歩み
愛をもって生涯支え合うコトを
誓いマスか?」
「はい」
美咲が答えた瞬間に抱き寄せたくなったが、それをすでに読んでいたらしい真吾に礼服の裾をつままれて動けなかった。
「それーでは、新郎と新婦の指輪の交換デース」
真吾がすいと前に出て、どこから出したのかリングピローを神父に渡す。
僕は美咲と向かい合い、ゆっくりと一歩前に踏み出してそのベールをつまむ。皮肉なことに、これは玲子との結婚式の前に練習したのが役に立った。美咲は頭を落とし、僕がベールを持ち上げて頭の向こうにそっと落とすまでじっとしている。
――いつか見た夢と重なる。
――あの、玲子との結婚式の日とも重なる。
でも、着信音に邪魔をされて目覚めることもなければ、片瀬さんが飛び込んでくることもない。
ベールの下から現れた美咲の顔は、生まれたての天使のようだった。
まぶしい。
美咲がグローブを外し、いつの間にか脇に控えていたハルカちゃんに渡す。
僕は神父から指輪を受け取り、美咲の左手を取った。
その細い薬指にそっと指輪を通す。
美咲も同じように神父から指輪を受け取り、僕の左手を取る。
そして、僕の左手にそっと指輪が通される…はずなのだが
――と、通らない。
手汗を大量にかきすぎたのがいけなかったのか
昨日ヤケ酒をしこたま飲んだのがいけなかったのか
サイズが間違っていたのか
とにかく、指輪は僕の薬指の第二間接より先には進まなかった。
真吾の「あちゃ」というつぶやきが聞こえる。
まぁいいだろう。抜け落ちさえしなければ。
僕はゆっくりと神父の方に向き直る。
美咲もそれに倣った。
「それでは、誓いのキスを―――」
神父が言い終わるか言い終わらないかの内に、僕は美咲の細い肩をそっと掴んでその唇にキスを落とした。
誓いのキスが二人にとって初めてのキスだなんて、鳥飼守もびっくりのプラトニック・ラブだ。




