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最弱魔法使い、現実を知る。

第二話です!今回も誤字脱字あるかもですがそこは温かい目で見ていただければと思います。

ふわっとひろがる太陽の香りに、走る二人の少年。

一方は笑顔で軽やかに、もう一方は息を切らしながら。

「勇者もだけど、魔法使いにだって体力は必要なんだぞ~!」

調子に乗った少年が、飛び跳ねながら走っていると、すてん、と音がして少年は転げた。

それを見てもう一人のほうはくすりと控えめに笑みをこぼし、笑いすぎて同じく転げる。

なんて微笑ましく、のどかで、優しい光景なんだと思う。

だが、急に空が暗くなり、いつの間にか二人の少年は青年になり、片方に四人ほどの仲間がいるが、もう片方には誰もいない。

かつて笑い合っていたはずの青年二人は、今や対極の位置にあった。

なぜこうなってしまったのか、いつから間違ってしまったのか。

思考がまたぐるぐる回り出し、目の前のすべてを真っ黒で包み込んでいく……

思わず目を開けた。

一番に青々しい草原と、小さな花が目に入った。

宿場のベッドでも、テントの中でもない。

気合を入れなおし、ぐっと立ち上がる。

軽く伸びをし、新しい朝の空気を吸った後、腹の虫が鳴きだした。

そういえば、昨日からひたすら歩き続けたから何も食べていないんだよな。

流石に朝飯分ぐらいの金はあるとは思うが……大体どれぐらいか、確認しておこう。

そう思い、懐の子袋を取り出そうとした。

ない。

朝起きたばかりで寝ぼけているだけだと思い、もう一度探してみた。

だが、そこには何もなかった。

肝が冷え、今度はしらみつぶしに、全身くまなく探した。

でも、何もなかった。

こんな不幸が続くことってあるのか?パーティーを追放され実質ニートとなった直後に、こんな仕打ちってどうなのか?ああ、あの時躊躇せず珈琲でもセットのケーキでも頂いておけばよかった。

街で歩いているときに落としたのか、知らずのうちに使ってしまっていたか、もしくは誰かに盗まれたか。

もともと荷物がかなり少ないこともあり、今持っているのは杖だけ、俺はまさに一文無しだ。

俺は町で空腹を満たすことをあきらめ、木の実でも探しに森林へ移動することにした。

ひたすら木が生い茂るだけの森。

俺単体では魔物に出会ってもどうすることもできないので、子供や役職のない人々がよく訪れるような街付近のところしか行くことができない。

そのせいか、まず木の実自体がない。

あったとしても、毒が含まれているか、ごく小さな若い実など、食べるのには適さないものばかりである。

ため息をつきながらとりあえず食べ物にありつくことだけを考え歩き続けていたら、町から離れる方の向きから走ってくる何かが居た。

もしかしたら食べ物を恵んでくれるかもしれない。

一片の期待を込めて、よく目を凝らして向かってくる何かを見続けた。

どんどん近づいてくる、人数は……三人?いや、一人と二匹だ、魔鬼二匹と、逃げている様子の黒髪の人間が一人。

止まることなく魔鬼と人間は近づいてくる。

そうこうしているうちに向こうも俺のことを見つけたようで、人間のほうが俺に向かって開口一番こう言った。

「助けて!命が狙われているんだ!」

と、軽い身のこなしでひらひら飛び跳ねながら俺の近くにやってきた。

その人間は、見たことのないものを羽織っており、中に着ているものの襟は左が前に来ており右はその内側にしまわれているようだ。

履いているのも珍奇で、足の裏だけを覆うわらでできた丸い板を紐で足に結んで括り付けたものである。

相当身軽なのか、俺の横に華麗なる着地を決めた。

厳つい見た目の魔鬼が地面が割れるほどのがなり声で叫んだ。

俺はあまりの恐怖に硬直していると、隣で人間がふふんと得意げに鼻を鳴らして口を開いた。

「さあ鬼さん!僕をとっ捕まえたいのなら、まずはこいつから倒しなさいな!」

突然助けを求めてきたと思ったら、俺を囮にして逃げようとしている。

嘘だろ?こんな不幸ばかり続くことってあるのか?

嵐のように押し寄せる様々な情報のおかげで、俺は混乱状態に陥り、そのせいで魔鬼の言葉に反応が遅れた。

もう片方の魔鬼がしびれを切らしてわめき出す。

顔を烈火の如く真っ赤にした二匹がほぼ同時に大きな斧を持ち上げ、肩に担いだ。

全身の血管が肌を裂く程浮き出ている、怒りが沸騰してもう我慢の限界みたいだ。

一体こいつは何をしでかしやがったんだ?

少し下の方へ目を配ると、隣のヤツと視線がぶつかった。

「えっと……ちょっとなんかあるかなーって魔鬼の縄張りでガサゴソしてたら見つかっちゃっただけなんだよね、はは」

「お前、盗賊なのかよ…」

口調は余裕そうだが、汗がダラダラたれているし、微妙に早口なので、おそらくこいつも俺と同じように

かなりピンチな状況なのだろう。

「ね、ねぇ、君魔法使いなんでしょ?杖持ってるし。僕をお助けあれよ!」

事情はともかく、とりあえずこの場をしのぐのが大優先。

いや、しのぐか逃げることぐらいしかできない。

期待と安堵が透けて見えるまなざしに向けて、申し訳ないがちゃんと真実を言う。

「いいけど、俺攻撃魔法使えないからな」

魔鬼の一匹が、俺らを捉えて斧を高く持ち上げた。

「え?」

次の瞬間、地面の土が大きくえぐられ破片が周囲へ弾け飛んだ。

俺もあいつも間一髪のところで避けることができたが、あと少しでも遅れていたならば、俺の体はあの土と同じようになっていただろう。

背筋が凍り付く、魔物と対峙するのは久々だ。

俺の背丈の二倍はある巨大な魔鬼だが、その分筋力も半端ない。

もう一匹が俺に突進してくるのを、すんでのところでかわす。

速い。

かなり無理な体制でかわしたため、背中から着地したあと受け身も取れず、大きく体制を崩してしまった。

魔鬼がそれを見逃すわけなく斧を振り回しながらもう一度こちらに突進をしてきた。

起き上がるのにも背中にあるままの大きな杖がかえって邪魔になり、足にうまく力が入らない。

このままでは、本当に殺されてしまう。

魔鬼が大きく斧を振り上げ、俺の頭に焦点を合わせ、走る勢いのまま振りかざした。

俺は目を閉じることしか出来なかった。

激しい地面の割れる音が、先ほどよりも近くで聞こえた。

宙をふわりと浮いている感覚がした。

「何してんの?立ち上がることすらできないの!?」

俺を抱えながら呆れと怒りが入り混じった鋭い口調で、そいつが叫んでいた。

こいつ、俺を助けてくれたのか?

「ありがとう」

心からの感謝を告げた。

そいつは顔だけ振り返り俺の目を見て軽くうなずくと、前に向き直し言葉を続けた。

「んで、攻撃魔法使えないってどういうこと?」

担がれて運ばれたまま後ろを見て魔鬼が遠のいていくのを確認し、答えた。

「そのままの意味だ、魔弾やフランベ、スライシャーとか、他のヤツに直接攻撃を加える魔法は使えない」

靴と地面の擦れる音を合図に、俺は背中から降りた。

体制を構え、魔法発動の準備をする。

「ふーん、じゃあさ、僕のことサポートしておくれよ。そっちの方が得意そうじゃん。」

あー、と声をこぼす。

魔鬼は俺らを見逃す気は無く、唸り声を上げながらこちらに向かってくる。

こちら側も戦闘の構えをする。

俺は杖を、隣は……小さな刀物を黒色で色彩豊かな花や蝶の模様が入った入れ物から取り出す。

「珍しい?八重坂屋製の特上魔狩小刀だよん」

くるくる回すよう弄んだ後、ぴたっと止めてしっかり握る。

魔鬼が勢いよく飛び出してきた。

片方が轟々と左右に斧を振り回し、もう片方は溜めて巨大な一撃を放とうとしている。

敵の死角を探しながらふわりと魔鬼の背中に回り込もうと、地面を蹴り大きく飛び上がって、俺に叫んだ。

「僕にバフでもかけて!僕が主戦力になって戦うから!」

振り回される斧を目でとらえ、かわすと風が肌をかすめた。

勢いよく斧を激しくぶん回したまま走った魔鬼は、木に斧が引っ掛かり暴れている。

油断せず溜めているほうに注意を払いつつ、さっきの魔鬼がこちらに来ないうちに、魔法を発動するんだ。

「ランぺイジュ」

攻撃力強化の魔法。

直ぐに、彼の持つ鋭い小刀と彼自身の体が淡い橙色の光を帯び、刃先が魔鬼の太い首に向かった。

魔鬼が気づくよりも前に、小柄を生かして背後へ回り込んだ小さな刃が電光石火で首を引き裂く。

「一意専心!」

しかし、刃は首の中心部より前で止まってしまった。

まずい、という表情と共に彼はこっちを見る。

俺は歯を食いしばる。やっぱり俺のバフ効果は薄い。

魔鬼は気づき、飛び込む体制で攻撃を仕掛けた無防備な彼の首を荒々しく掴み、振りかぶって地面に投げつける。

激しくせき込む彼は、呼吸を荒げている。

「お前……バフ…ほぼ意味……ないじゃんか」

そう言ったきり、倒れて動かなくなった。

おそらく失神したであろう彼に気を配りながら、二人の魔鬼を同時に相手しなければならなくなった。

かなりまずい状況となった。

今度は二体同時に突っ込んできたので、タイミングを見極め避ける。

一対一でも良くて互角の相手だ、二対一となるとあまりに分が悪すぎる。

二対の鬼は連携を取りながら、俺を挟んで逃げ場のないよう注意を払っている。

次々と風を切って俺を殺しに来る斧の波をかいくぐりながら、とりあえず距離を取ることだけを考えた。

この距離ではバリアも発動するまでに時間がかかりすぎて意味がないし、貼れたとして直ぐに割れてしまうだろう。だが、相手もだんだん俺の動きを熟知してきたのか、それとも俺の体力が削られてきたのか攻撃が俺の服や髪を削ぐようになってきた。

どうにかしなければ、俺の体力と魔鬼の体力じゃ訳が違う。

意を決して、攻撃をかばうのに使っていた杖を、二匹の間の僅かな隙間に投げ込んだ。

手から杖が離れた瞬間、杖とは反対側に駆け込む。二匹とも投げられた杖に気を取られてくれてるほんの一瞬のうちに、倒れている彼の方へ一目散に転がり込んだ。

急いで小柄な体を担ぎ、ここから逃げようと思い切り踏ん張った。

その時、急に下半身の力が崩れ落ちてしまった。さっきの攻防で体力がなくなってしまったのだ。

火事場の馬鹿力が抜けた後、俺は先ほどまでの動きが嘘のように這いつくばって移動するほかなくなった。

馬鹿なことをしてしまった、杖は俺とは反対方向に離れている。

仮に杖が近い位置にあったとして、魔法を使えるだけの力が残されているだろうか?俺の魔法一つで状況は変わるのか?その場しのぎにもならないだろう。

強烈な絶望感と焦燥感だけに突き動かされ、右手で彼の身体を引っ張りながら左手で地面を掴み少しづつ前に進む。

魔鬼の侮辱をにじませた笑い声が背中に突き刺さる。

地面は魔鬼の影が黒く暗く染み付いていて、逃げ場がもうどこにもないことが確かだった。

隣を見ると、小さな身体の少年が目を閉じている。

俺はこんなに小さく若い存在に助けてもらったというのに、俺は何もできていないどころか、足を引っ張っているだろう。

「おい……お前ら、こいつじゃなくて、俺からにしろ…食うならば……俺からだ」

最後の悪足掻きとして、辛うじて紡いだ言葉を投げかける。

言葉が通じたのかは分からないが、魔鬼二体はひどく侮辱的な目で俺を見下ろし、高らかに勝利の鳴き声を上げた。

とたんに、空気が変わった。

最初の一秒間は、誰もが気のせいだと信じていた。

だが、視界の端に映る違和感が、それにただ異議を唱えるようだった。

魔鬼の笑い声がなくなり、二体は後ろを振り返った。

違和感の正体を視界の中心にはっきり捉えた。

黒い華美なマントを羽織った老婆。

違和感が存在したまま、ただの”気のせい”に置き換わろうとしていた。

魔鬼が老婆から目を離し、再び俺に視線を向けると老婆の乾いた笑いがこだました。

「老いているとは、弱いということ……それは立派な、”先入観”だ。」

風の流れが完全に変わった。

お読みいただきありがとうございました!!!!

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