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欠陥魔法使い、捨てられる。

初めての作品です!

誤字脱字等あるかもですが温かい目で見守ってくれたらと思います。

「エス!回復が遅いぞ!」

「何よこれ!全然攻撃力変わらないじゃない!」

「魔法の発動はいつなんだ?早くしてくれ!」

今までの戦いで言われてきた言葉たちが頭を駆け巡るなか、俺はギルドの本部へ足を進めていた。

俺はこの魔王が支配する世界の中、魔王討伐最有力候補のパーティーにて「魔法使い」として今まで所属していた。

しかし、俺は攻撃魔法が使えない。

しかも、他の魔法も秀でているわけではない。

そんな俺のことを文句を言いつつ受け入れてくれているパーティーのメンバーには感謝をしている、特にパーティーリーダーの「勇者」ゲルダは昔からずっと俺と共に魔物の討伐任務をこなしていて、青年となった今でも同じパーティーに属させてもらっている。最近は討伐系の任務には同行できていないが、買い出しや宿の予約、荷物持ち等俺にできることはしてきたつもりだ。

珈琲の香りをほのかに感じる店の角を右に曲がると、少し掠れた酒の絵の描かれた看板が見えてきた。俺の目的地はその隣だ。たしか、酒場がギルドの本部の隣に建てられているのは新しく迎え入れられた新人の歓迎や高クラスの魔物討伐を達成した後の打ち上げとかで多くの来客が望めるからだと、そんなことをシルクが言っていたような。

シルクは設立したてのパーティーに、一番最初に加入してきた伴侶だ。

清らかな銀色の髪と、キラキラ光る青い瞳の困ったような上目遣い。

俺は一生懸命話す彼女の姿に一目惚れし、この感情は今も続いている。

昼間から騒ぐ声の絶えない酒場を横目に、ギルド本部のドアへ辿り着いた。

何度もペンキが塗りなおされたであろう木製のドアと、金色のドアノブが何度見ても懐かしく思う。

確か初めてここにやってきたときも同じ感じだった。親から12歳になった記念で買ってもらったばかりの杖を握りしめ、全身から汗を吹きだしながらパーティー結成の手続きをしにいったんだっけ。

そんで、俺以上に緊張してるゲルダはぴかぴかな剣を大事に持ちながらこう言ったんだっけ。

「なぁエス…俺汗びっしょり。」

今でも鮮明に覚えている。あどけない顔つきで心配そうに大きな扉を見上げるゲルダを。

それに対して俺は背丈よりも長い杖を慎重に握りながらこう言ったんだ。

「うん、俺も……たしか、ギルドに入るときこう言うんだよね。」

「ちゃんと、覚えてきたよね。」

「昨日二人で練習したもんね。」

「せーのっ」

「ラーゲルリに祝福を!こんにちは!」

扉を開くと一番手前のテーブルの席に座っていた勇者一行が一斉に俺を見た。

「遅いぞ。」

勇者は顔をしかめながらそう言い放った。

今は機嫌があまりよくないようだ。

「ごめん、走ってくればよかった。」

待たせたことに申し訳なさを感じつつ、いつもと違うみんなの様子に違和感を覚えずにはいられない。

普段から自信なさげの可愛い困り顔のシルクだが、今日は輪をかけて切ない顔つきになって目にはうるうる涙を溜めている。何かあったのだろうか、今度話を聞いてみようか。

そして戦士のケルビンは睨むようにこちらを見てくる。目つきが悪いのを度々ギルダに注意される彼だったが、これは普段の眼光とは明らかに異なるものだった。

ケルビンの隣に座っているエリンが弓のお手入れをしているのはいつものことだったが、今日は一段と話しかけないでほしいという圧を感じる。俺なにかやっちゃいました?

くわえて、ゲルダの隣には見知らぬ女性がいる。恰好から見るに役職は魔法使いであるが、このパーティーに魔法使いは俺が既にいるはずだ。

「単刀直入に言わせてもらう。」

空気を切り裂くかのように、ゲルダが口を開く。

みんなの雰囲気が僅かに重くなった。

「エス、お前は今日でパーティーを抜けてもらう」

一瞬、世界が真っ白になり、無音の空間と無色の視界が俺の周りに広がった。

耳鳴りさえする頭の中で、今言われたばかりの言葉だけが頭に大きく響いた。

軽いめまいに耐えながら、声を絞り出した。

「冗談だろう……?」

声が全員の耳に届いたかは分からないが、ケルビンは聞こえていたようで、俺の耳に残酷な言葉を焼き付けた。

「冗談なわけあるか、ずっと邪魔だったんだよ」

俺は邪魔な存在だった。その事実が受け入れられず、居ても立ってもいられず口を挟んだ。

「確かに、戦闘という面では俺は役に立てなかった、だがそれ以外の面では君たちを支えたはずだ、俺なりのやり方でパーティーに貢献しようとしたんだ」

突然、シルクが吹き出した。

肩を震わせ、笑っているようだ。

嘘だろ?シルクとはよく話し、ゲルダ以外のメンバーでは一番仲の良かったはずだが。

まさか、君もなのか?

「ぷぷっ…すみません、だって、びっくりしたんです。」

笑いをこらえつつ、さらに続ける。

「討伐任務の時、いつも邪魔どころか足引っ張っていたの気づきませんでした?攻撃魔法の使えない、回復魔法も伴侶の私に負けている。バフ魔法は効果が薄いし、最近私が覚えたもののほうがよっぽど使えます。言っときますけど私、もとは回復専門ですからね?しかも私は一応護身用に攻撃魔法も心得ているのですよ、それに戦闘以外の面で支えるって……」

さらに言葉を続けようとしているシルクをゲルダがなだめた。

ああ、これ以上最悪なことはあるのか?俺は最後の望みをかけてエリンに視線を送る。

一瞬だけ視線が交差したが、エリンは表情一つ変えずに呆れたような目で、俺を見た後またすぐに弓の手入れを始めた。

無機質に布と弓の擦れる音が俺の孤独感を助長させていた。

思わず震える足に力が入らなくなり、下半身が崩れ落ちていく。

俺にもう救いはないのか。

「て、ことでー。今度から君の代わりに私、ソシエールが魔法使いとしてこのパーティーに入らせてもらうのでー。」

見知らぬ女…ソシエールが身体をくねらせ、心底俺を馬鹿にしたような声色で告げる。

「君はもうここのパーティーには所属してませーん!さっさと出てってくださーい!」

ふざけたような、意地悪い声が俺にとどめを刺した。

自分でもこの出来事に気が狂ったようで、無駄だとわかっていながら最後の悪足掻きをするよう、今は息をするので精一杯な俺の喉から声を捻り出した。

「ゲルダ……あの時誓ったじゃないか」

ゲルダは俺と目線の高さを同じにしようとは微塵も思わぬようで、ただ依然とした佇まいで変わらぬ運命を俺に受け入れさせようとしてるようにも見えた。

「何を?」

昔の情景が思い浮かんでは今の状況と重なり合って消えていく。

あの日大きな太陽が優しく照らす草むらの、まばらに咲く花を見つめていた俺に、あおむけに寝転がって空をただ見つめる彼が突然話しかけた。

「なあ、魔王って誰にも倒されたことがないのか?」

答えのわかりきった疑問に、俺は軽く笑いながら物知りぶってこう答えた。

「そんなの、当たり前だよ。それに魔王の城は天空にあるから、辿り着けた人もほぼいないんだって。そもそも、もし倒されていなかったら魔王を倒すのを目指すパーティーもあんなにいないでしょ」

近くの森林を進む五人組を指差し、あれも魔王倒すパーティーかな?とかを言い合った。

他愛もないことを話し合っては、草のくすぐったさにけらけら笑ってふざけ合ったりしていたその時。

急にゲルダが思い立ったように目をきりっと見開いて俺のほうをまっすぐ見つめるから、どうした、と聞こうとしたら。

「俺らでパーティー組んで、二人で一緒に魔王を討伐しようぜ!」

前にも何度かしたことのあるやり取りではあったが、今回は真剣にそのことを誓うのだと、幼いながらに感じ取ったのを覚えている。

「俺が勇者で、お前が魔法使いだから、相性ピッタリだよ!」

あそこの森を進むパーティーのような存在に、俺もなれるのかな?

そんな考えが心の中であったが、俺は迷わず応えた。

「うん!絶対ね!絶対二人で魔王倒そうね!」

そう言うと、ゲルダは俺の覚悟を察したのか、どこか安心をにじませた表情で穏やかに微笑み、約束な!と言った。

「二人で魔王を討伐するって……!あの時誓ったじゃないか!」

俺が言葉を発しても、ゲルダは反応しないどころか何事もなかったかのように仲間と談笑をしている。

草むらなどない、冷たい床に手をつきながら俺は必死で呼吸と心を整えようとした。

暖かな希望の下で誓い合った夢と、裏切りと失望の混じった冷淡で無慈悲な事実。

それらが俺の心に僅かな光を思い出させながら、叶うことのなくなった夢で俺を苛む。

もうここに俺のいる必要も資格もなくなった。

足の感覚が崩れたまま戻らぬが、ゆっくり立ち上がる。

くすんで光るドアノブに手をかけ、何も言わぬまま出ていく。

もう誰も俺に視線を寄越すことはなかった。


外は異様に冷たく、風が肌を切り裂くようだった。

思い返せば、予兆は今まで見えていなかっただけでたくさんあったのではないのか。

シルクが言いかけたように、俺が今まで皆を支えていたと思っていた行動は、別に他の人も出来ることで、俺が行うことによって何か特別な意味を発揮するわけでもなかったのだ。

俺が今まであのパーティーに所属できていたのはただの奇跡に過ぎず、これまで俺がやってきたことすべて、何の助けにもなっていなくて、言うなれば自惚れた自己満足の成れの果てだったんだと思う。

力の入らない足を前に進め、過去を引きずる鉛の鎖に苦しみながらどこかへ歩き出す。

気分転換に散歩はうってつけだと思ったからだ。

どうしようもなく沈んだままの全身を前に進め、行く当てもなく街を散策する。

苦い珈琲の香りがまとわりつく。

一杯飲もうかと考えたがろくに討伐任務へ行っていない俺の懐には金貨はなく、銀貨が数枚と銅貨が六枚。

これだけでは、一日分の食事を賄うので精一杯だろう。明日からのことを考えて、俺は珈琲の余韻を振りほどいた。

一心不乱に足を進めながら、町の外れまで来て、ふと前を見れば何もないただ背の低い草が生えているだけの草原があった。

空はすっかり黒くなっていて、いったいどれだけ歩いたのだと考える間もなく草原に全身の体重を預けていた。

疲労感がどっと押し寄せてきて、ただ漠然とした疑問だけが俺の頭の中にあった。

明日からどうしよう?

俺は攻撃魔法が使えないため単独で任務をこなすことはできない、なのでパーティーを組む必要があるが、回復や強化すらも上手くできない俺を受け入れてくれるパーティはあるだろうか?あったとして、魔王討伐を志すパーティーが大半を占める今、変わらず俺はまた同じ末路を辿るのではないのか。

思考を巡らせてばかりいると悪い方向にばかり発展していく。

力なく目線を草に移すと、小さな青色が目に入った。

か弱くも確かに咲いている青い花を見て、俺の心から感情がふつふつ湧き上がってきた。

月を見上げると、さっきまでは見えなかった星々が夜空を彩っていた。

とりあえず、行動してみないとわからない。

息をすっと吸い込むと、澄んだ空気が全身に広がる。

悲しみが消え去った訳ではない、俺が攻撃魔法を使えない事実も変わらない。

だが、夢はまだある。

「俺が魔王を討伐するんだ」

月の光を浴びながら、俺は瞼を閉じた。

お読みいただきありがとうございました!!ストーリーの進むスピードは速いわけでもないですが、ゆったり更新を待ってくれればと思います。

それでは、また次回でお会いしましょう!

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