光輝のA級デビュー高校選手権個人戦⑤ 2回戦の組み合わせ決定
そして、2回戦の組み合わせ抽選が始まる。
「組み合わせ、決めまーす! 誰かカード切りたい人いますかー?」
受付にいる若林菜々が参加者の名前の入ったカードの束を掲げて言う。
「ハーイ! あたし、やりたいでーす!」
手を左右にぶんぶん振りながら申し出たのは千里だ。それを見た光輝は「元気のいいやつだな」とつぶやいた。一方でカードの束を若林から受け取った千里は光輝の方を見て、ニヤリとする。
「四条くんと当たれるよう、思いを込めてよ~~~~くシャッフルしておくから」
「だから、変なフラグ立てんな」
千里の言葉通りカードをたっぷりとシャッフルして、若林に返した。
それを受け取った若林がカードを並べていく。16カード32人分、組み合わせが決まっていく。目黒クイーンと当たった人は周りからご愁傷様という目で見られていた。
ちなみに光輝と千里はというと、結果から言うと2回戦では当たらなかった。
「うーん、残念だよう」
シクシクとわざとらしく泣き真似をしながら、試合会場である浦安の間へと向かう千里。
「そんなに俺と当たりたいかねー」
「うん! だって、今日、そのために来たと思ってるぐらい、さっき会った時、なんかビビビッ! って来たの! これはあたしのシックスセンスが何か告げてる!」
「たはは、まいったなー。なんか、いろいろハードル上げられてるんだけど」
ちなみに光輝は静岡・二木学園の獅子崎里華子という選手が相手になった。
まだ組み合わせを見てる受付の方から、なにやら騒がしい面々がいる。
「里華子様、この四条という人。この前の京都大会でA級に上がったばかりだそうですわ!」
「それならば、里華子様の相手ではありませんわね!」
「ウフフ、当然ですわ! 二木の城郭といわれるわたくしのかるたをたっぷりと味わっていただいてよ!」
すると、取り巻きっぽい女子生徒が「キャー!」と黄色い声援をあげる。
それをあきれたような呆気に取られた様子で眺める結姫、そんな喧騒には無関心で特に気にすることない様子の千里だが、周りは「また始まったよ」という反応だ。
というのも静岡の二木学園(女子高)は前日の団体戦でも優勝こそ逃したが、毎年、好成績をあげている名門だ。獅子崎里華子はその名門で主将を務めるエース。後輩から慕われ、取り巻きができるほど持て囃されるぐらいの力はあるのだ。
この中じゃA級の実績はまったくないのは光輝自身がわかっている。舐められるのも無理はないよなと、そんなことを自嘲するような顔をした光輝に千里が声をかける。
「ねえ、四条くん。あたしね、四条くんと当たるまで負けるつもりないから」
穏やかな顔に対して、目は決意にあふれていた。
「お互い、がんばろうね」
「ああ」
千里からの「四条くんなら、絶対に勝てるよ」というセリフにも聞こえた光輝への激励に光輝は静かに頷いて、席へついた。
***
一方、組み合わせ表が置かれたテーブル。この日も運営役に駆り出された若林のもとに結姫が近寄る。
「ふーん、みーくんは二木の獅子崎さんとか~」
先ほど、勝利宣言に等しいセリフを試合前に豪語した金髪お嬢様風の女子高生にややモヤっとはする結姫だったが、若林は「うーん」と唸りながら、
「でも、四条くん。いやな相手と当たったなとは思うよ」
「若林さん、知ってるんですか? よく聞く名前ですけど、私はイメージしか知らなくて」
「うん、学生選手権で当たったことある。結姫ちゃんも二木のかるたは知ってるでしょう?」
「あー、すごく手の低い守りがるたですよね」
「そう。それに加えて、獅子崎さんって守りかるたでも攻めれるから、本当に厄介。あれ、初見だと難しいのよね。そして、ついたあだ名が“二木の城郭”だってさ」
「うーん、初戦で立ち上がり心配だけど、その手のタイプは仕込んでるし、みーくんならカモだと思うから、大丈夫かな」
「へ?」
結姫のややきつめの言葉に若林はあっけにとられたように声を発した。




