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俺は無段のかるた選手だったが、何年もクイーン候補の幼なじみとの練習に付き合ってたら、いつの間にか有段者相手に無双するどころか名人級の選手になっていた  作者: かるたー
俺は無段のかるた選手。初出場した高校選手権で無双して、無敵の現役女子高生クイーンにも勝利してしまう
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光輝のA級デビュー高校選手権個人戦③ 彼女との邂逅

 そんな波乱の開会式も終わり、早速、1回戦の組み合わせ抽選が始まる。A級の参加者は55名。不戦勝は9名と少なめだ。光輝(みつき)はその数少ない不戦を引き当てた。ちなみに目黒クイーンは1回戦目を引き当てたようである。中広間で結姫(ゆき)とリラックスムードでスマホをポチポチしながら過ごしていた光輝だったが、


「ちょっと、熱気にあたってくる」


 わかりやすく言うと、外に出てくるということである。光輝は暑さも弱いのだが、それ以上に冷房の風にも弱い。時にはこの暑さが快適になることもある。


「暑いから気を付けてね」


「おう、ちょっとあったまったら戻るよ」


 とはいえ、外に出るととてつもない熱気が押し寄せる。


「あっちー」


 この日の気温は34度。ただ、光輝は滋賀はまだ涼しいなと思えるほど、普段、住んでる場所の暑さが異常なのだと改めて気づいた。さらに木が茂ってる場所は日陰によって直射日光が遮られて、あの煩わしい暑さはない。

 スマホをいじりながら、近江神宮の木漏れ日の中を歩いてると……


「♪~~~」


 なにやら、女の子の歌声が聞こえる。光輝はその歌声の方へと足を向ける。


「ラーララー、ラ・ラ・ラー♪」


 その歌声の主は半そでの黒のポロシャツに紺色っぽいジャージを履き、長さは肩ぐらいまではあるロングヘアーで赤茶色っぽい少し明るめの髪色をした女の子。おそらく、高校選手権に出場している女子高生だろう。


「らーららー、らら?」


 光輝が近づいてきたことに気が付いたのか、その女子高生が歌うのを止めて光輝の方へ振り向く。


「あ、悪い。邪魔するつもりじゃなかったんだけど……」


 バツが悪そうな顔をして、光輝が言うと、


「いえいえ。ただ、あたしが勝手に歌ってただけ。そっかー、聞こえてたかー。セミの音がうるさいから聞こえてないと思ってたんだけど……」


「いや、丸聞こえだったけど……」


 確かにセミの声も大きいが、会話が聞き取れないほどではない。あれぐらいの声量なら、まあ聞こえる範囲だ。


「え、そうなの? 耳がいいんだねー。この歌は耳がいい人にしか聞こえないんですぜ、ダンナ?」


 彼女はあっけらかんとして、冗談めいたことまで言う。なんか、独特なペースを持った人だなと光輝は感じ取った。


「ところで、君はA級の人?」


「あ、あぁ、一応。今日がデビュー戦ってやつなんだけど……」


「へえ~、それはすごい! そのデビュー戦で少ない不戦勝を引いたってことかー。うん、ついてるね!」


「そうだなー。さっさと試合して場に慣れたいのもあったけど、試合数減るのは体力的に助かるからな」


「へえ~、まずは1勝ってならないんだ?」


「ん? まあ、やるからには負けたくないからな。現役のクイーンが参加しているようだけど、優勝する権利は俺にもあるはずだし」


「えー!! すごーい!!」


 彼女が光輝の手を両手で握って、ぶんぶんと上下に大げさに揺らして、目を輝かせつつ感嘆の声をあげる。光輝はその様子にびっくりする。


「普通、A級デビューするような人がそんな大げさなこと言わないよ~! あなた、本当に今日A級デビューするの? もう、何年もA級やってるんじゃない?」


「いや、マジで今日がA級デビューなんだよ」


 彼女のペースにすっかり乗せられ、面食らう光輝。そこで、握られていた彼女の柔らかな感触のする手を振りほどく。


(そっか。この人がそうか)


 光輝に手を振りほどかれた彼女は目の前にいる彼がこの日のお目当てだった選手だと直感した。


(しかし、こいつ、どっかで見た覚えがあるんだが……)


 目の前のよく見れば美人でかわいい同世代の女の子。そんな子が無邪気で好奇心に満ちた笑顔を自分に向けてくる。少しどぎまぎしながらも光輝はそう思案した。


「もしかして、自分もA級?」


 と、光輝が尋ねると、


「うん、そうだよー」


 さも当然であるかのように答える。


「名乗るほどの者ではないですがねー。でも、あたしはあなたを知っている!」


 彼女は澄ました顔をしながら、ビシッと人差し指を光輝の顔に向ける。


「ズバリ、大阪明星会の四条光輝くんだよね」


「え? なんで……」


 今日がA級戦デビューのB級上がりの自分のことを知っているとは本当に何者なんだ? と光輝は驚く。


「フヒヒ、それはですねー。高校選手権の個人戦がA級デビュー戦だっていう高校生なんて、この前の京都大会優勝した四条くんだけでしょ?」


「あー、なるほどな」


 光輝は納得した。すべての大会結果を見たわけではないが、他は大体、大学生か社会人の選手がB級優勝を決め、今大会に出場している高校生はすでにA級デビューしているといった選手が見受けられる。


「なんか、俺の名前も知られてるようだし、一応、名乗るほどの者ではないさんの名前と所属も聞いておこうか」


「ふふふっす。よくぞ聞いてくれました。あたしは山口県のことおいかるた会所属のA級選手。今回は桜光女学園高校で参加する一色千里ですっ!」


 ぶいっとVサインをつくる千里。


「山口からか。しかも、桜光女学園って昨日の団体戦は出場してなかったし、個人戦だけなのに遠いところをわざわざ…………一色さんもたいへ……」


「千里でいいよ」


「え?」


「せ・ん・り!」


 下の名前で呼べとばかりにぐいっと近づいてくる千里。同年代の女子に免疫のない光輝は少し後ずさる。


「で、でも、いきなり名前呼びとか…………」


「千里じゃなきゃ、やだよ?」


 なおも千里はムッとしながらも上目遣いをしつつ、ぐっと光輝に顔を寄せる。


「わ、わかったよ…………せ、千里」


 少しムッとしてても愛らしく整った顔立ちの迫力に観念した光輝はなんとか漏らした。


「はい、よくできましたー!」


 すると、千里は光輝から身を離して、パンっと手を叩いて言った。

 そんな千里に振り回され気味な光輝はただ、肩をすくめる。


「ねぇ? 今日、あたしと四条くん、当たりそうだよね?」


「おいおい、そんなフラグ立てるようなことやめろよ。それに俺がせ、千里と当たる前に負けるかもしれないぜ」


 光輝はまだ千里と下の名前で呼ぶのに抵抗があるようで、名前の部分は少し小声になった。


「いやー、これはあたしの勘なんだけど、四条くんはなんとなく約束を守ってくれる人だと思うからね」


 千里は踵を返して、ペロッと舌を出して言う。


「じゃあ、後でまた試合会場で。お互いがんばろうね」


「お、おぅ…………」


 タッタッタっと軽快なステップを踏むように勧学館の方へと戻る千里を見送る光輝はただ茫然とその場で立ち尽くした。

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