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俺は無段のかるた選手だったが、何年もクイーン候補の幼なじみとの練習に付き合ってたら、いつの間にか有段者相手に無双するどころか名人級の選手になっていた  作者: かるたー
俺は無段のかるた選手。初出場した高校選手権で無双して、無敵の現役女子高生クイーンにも勝利してしまう
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光輝のA級デビュー高校選手権個人戦 聖地に到着

 記念すべき、A級デビュー戦という日にまさかのスランプ期が訪れたまま臨む大会というだけあって、前日まで光輝(みつき)結姫(ゆき)のメンタルは重たかった。

 だが、夢見がよかった光輝はどこか晴れやかな表情をしていた。

 さて、JRの大津京駅に降り立った光輝と結姫。もう一つ、私鉄が走ってて、こちらの方が近江神宮の近くへ行ってくれるが、なにせ運賃がバカ高いうえに時間がかかる。

 近江神宮まで少し距離はあるが、ここはJR一択である。北西へ1キロの道のりを歩いていくと、おそらく同好の者だろう。近江神宮へ向かうであろう制服を着た集団を何組か見かける。


「そういや、近江神宮、久しぶりだな」


「あ、そっか。私と一緒のチームで出た小学生地区団体戦の時以来?」


「あー、たぶん、そう。配信とかでは見てるから、久々な気はしなかったんだけど」


 途中、暑い道中だったが、そういう最近の近江神宮の話とかを結姫から聞く。

 名人・クイーン戦の試合会場にもなる勧学館の浦安の間はクラファンして、畳を修繕したので、かなり綺麗になったとか。

 あと、最近は某漫画の影響で聖地巡礼に来る人が後を絶たないらしく、インバウンドの影響で外国人観光客も多い。京都にも近い立地なので、立ち寄る外国人も多いのだ。

 その一方でうっそうとした社叢から通じる長い石段などは変わってない。ここか少し迂回して、坂道を上らないと近江神宮へはたどり着けない。


「ねぇ、せっかくだし、久しぶりにお参りしていかない?」


 長い石段を前にして、上に近江神宮の本殿へと続いているであろう朱色の楼門が見えたところで、結姫が光輝に問いかける。


「俺は神頼みっていうのは好きじゃないんだけどなぁ……」


 光輝は初詣も寒い、人混みが嫌、それなら家でゲームしたいという理由で行こうとしないタイプだ。


「神頼みなんかじゃなくて、私は神様に感謝したいのよ。こうして、近江神宮にみーくんとまた二人で来れたことを、ね」


「ゆき(ねえ)……」


「感謝したお返しにみーくんの悩みも神様が解消してくれるといいなって」


「なんじゃそりゃ」


 そういいながら、結姫は楼門へと続く石段を上っていく。もう、お参りは決定事項のようで、光輝も石段を上る結姫を追いかけていく。息を切らしながら、たどり着いたのは近江神宮の本殿……ではなく、境内にまず見えているのは外拝殿で本殿はその奥にある。大体の人が済ますお参りはこの外拝殿である。

 光輝と結姫も外拝殿でお参りをする。お参りの前に二人とも手水舎で柄杓を持ち、左手、右手の順に手を洗い、左手の掌に水を受けて、そこから口をすすぎ、左手を清める。そして、使用した柄杓の柄も清めて、元置いてあった場所に戻す。それを終えて、外拝殿の賽銭箱の前へ。二礼、二拍手の後に手を叩いて、神様へお願いごとを伝える。そして、お願いを伝え終えた後に一礼をしてお参りを終える。

 結姫はともかく、意外と光輝はめんどくさがりそうだが、こういう作法を律儀に守って行う。基本的に結姫の影響なのか、日本人として礼儀、文化を尊重しているのだ。そして、お参りを終えた二人は外拝殿、境内を後にして、勧学館へと向かう。


「みーくんは何をお願いしたの?」


「特にないよ。今日も健康に穏やかに過ごせますようにってだけだな」


「夢がないな~」


 そう言いつつも、結姫は光輝が表情が普段通りに戻っているのに気付いた。


「そういえば、みーくん、ちょっと元気出た? 昨日まではまだ悩んでるって感じだったのに」


「ん? あぁ、ちょっとね」


「なになに~? お姉ちゃんに言ってごらん?」


 少しからかうようなトーンで結姫がお姉さんぶって尋ねる。こういう態度の時はろくなことがないと光輝は黙っておこうと思ったが、


「今朝っていうか昨晩? 母さんの夢見たんだよ」


「月子さんが?」


 光輝の言葉を聞き、結姫がトーンを戻す。ちなみに結姫が発した「月子さん」という名はお察しの通り、光輝の母親の名前である。


「内容はあんまり覚えてないけど、もう今日かなって思うくらいにどこかのかるたの大会の会場にいて、その時のやり取りが懐かしくてさ」


 そう語る光輝の表情はとても穏やかに見えた。


「月子さん、いっつもみーくん以上に緊張しながら、試合見てたよね」


「そうそう。今の俺見たら、たぶん、あたふたしてるんだろうなって」


「あはは、なんか、それ、目に浮かぶなー」


 お互い小さい頃の思い出話に二人の頬が緩む。


「そういうの思い出してさ。もう、大会当日なんだから、焦ってもしょうがない。今、俺の持てる力を出すだけだなって。仮にそれができなくても、それを含めて今の俺の実力だし、そもそも今日がA級デビュー戦なんだし、と思ったら、なんか肩の力抜けたよ」


「そっかぁ。もしかしたら、月子さん、悩んでるみーくんを助けようとして夢に出てきてくれたのかもしれないね」


「あんまり、そういうオカルトチックなことは信じないんだけど、そうだったらうれしいな」


 心から毒気が抜けたような感じでしみじみと光輝が語る姿に結姫は安堵の表情を浮かべた。それを見て、もう大丈夫と確信した。


「ところでゆき姉はさっきのお参りの時、何をお願いしたんだよ?」


「こういうのは口に出したら、お願い叶わなくなるのがお約束でしょ~」


「なんだよ、そっちから聞いてきたくせに」


「うーん、そうねぇ。みーくんと同じような感じかな」


「なんだよ、そっちこそ夢がねえじゃねーか」


 光輝の返し文句にも「ふんふんふふ~ん♪」とご機嫌に鼻歌を歌いながら、軽い足取りで歩いていく結姫とそれを追いかける光輝。


(願わくば、みーくんがかるたをして幸せになれますように…………天智天皇さま、そして、月子さん、見守っていてくださいね!)


 ステップを踏みながら、湖国の空を見上げつつ、そんなことを改めて願うのだった。

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