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俺は無段のかるた選手だったが、何年もクイーン候補の幼なじみとの練習に付き合ってたら、いつの間にか有段者相手に無双するどころか名人級の選手になっていた  作者: かるたー
俺は無段のかるた選手。初出場した高校選手権で無双して、無敵の現役女子高生クイーンにも勝利してしまう
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大会前日に見た光輝の夢

 この一週間、光輝(みつき)は相変わらず、自分のかるたが崩れていた。何かに悩んでるような、気負ってるような、そんな取り方だった。

 光輝は結姫(ゆき)の練習相手にふさわしい強さを身に付けるためにやや強度を加えた取りを試したが、それが空回りしていたのが自分でもわかっていた。

 ただ、あと、もうひとつで何かをつかめそう…………

 自分の強さだけでなく、自分が強くなることで結姫の成長の重荷になりたくない。この2週間、そんな、もどかしいものを感じながら試合をする日々を過ごした。

 一方の結姫もそんな光輝を見かねて、なんとかしようとしていた。ただ、正真正銘のA級となった光輝を相手に練習で強みを引き出すような取りをできるほどの余裕はなくなっていた。

 スランプに陥ってるといっても結姫の目から見て、すでに光輝は並のA級選手かそれ以上の強さはある。実際、試合の中でそういった面を随所に見せる。

 ただ、それがまだ安定しないのだ。この一週間、それを引き出せないもどかしさを結姫は感じていた。

 お互いもどかしさを感じつつの練習の日々だった。


 ***


 大会前日、光輝は日付が変わるかどうかあたりの時刻に眠りについた。

 この2週間ぐらいの感覚のズレによるスランプ、大会前による高揚で眠れるか不安だったが、良くも悪くも結姫とのかるたを取る日課が適度な疲労感を生み、すんなりとはいかなくとも目を閉じると、普段通り眠りにつくことができた。


 そして、光輝の目にはどこかのかるたの大会の会場の映像が映っていた。

 高校選手権に出場しているかのように感じられたが、普段よりも視点が低い気がする。

 大会に出場する直前の独特な緊張感に心拍数が高まり、そして、周囲から見られる四条悟元名人の息子という肩書のプレッシャーに圧し潰されそうになる。


「みーくん」


 そんな緊張感とプレッシャーの中、自分を呼ぶ何か懐かしい声、なにより暖かな感覚に包まれていた。


「ドキドキしてる?」


 声の主の女性は今の光輝にわかりやすいような表現で問いかける。


「う、うん…………」


 そう自信なく、消え入りそうな声で頷いた光輝の声はいつもより幼いと自分でも気づいた。


「お母さんもドキドキしてる」


「え? なんで、母さんが?」


「みーくんがこうやってかるたやってくれるのはうれしいし、すごい上手なのはわかってるけど、やっぱり、お父さんと比べられちゃうから…………」


 光輝の母親と思しき女性が沈痛な面持ちで声をかける。


「だから、みーくんが優勝すると、お母さん、すごくうれしいし、ホッとするの」


 自分よりも緊張してそうな母親の声を聞いた光輝はなんか緊張がほぐれたような気がした。


「うん。俺も優勝して、母さんが笑ってくれるとうれしいよ」


「そう、ありがとう。みーくん」


 そう言いながら、少し頭身の低い光輝の目線に合わせるようにしゃがみ込むと、光輝をやさしく抱き寄せ、あたたかく抱きしめる。


「でも、みーくん、忘れないでね。お母さんは強くて、勝ってるみーくんが好きなんじゃないの」


「母さん、俺が勝ってもうれしくない?」


「ううん。それ以上に勝ったらうれしそうにして、負けたら悔しそうにして、上手になろうと真剣に練習して、そうやってかるたを全力で楽しんでるみーくんを見るのが好きなの」


 幼い光輝には当時、この言葉の意味がわからず、ただ、母親に抱きしめられるまま、なんとなく頷いてた。


「だから、みーくんには私のためじゃなく、自分のためにかるたを取ってほしい。そうしてくれると、お母さんはもっとうれしいな」


 ぼんやりと映る母親の顔はよく見えなくても光輝はどんな顔をしていたのかよくわかっていた。

 不安そうに、心配そうに光輝のことを見ながらも誰よりもあたたかでやさしそうな笑顔を向けてくれている。光輝にとって一番の味方だったのだから。


 そんな懐かしい光景を夢の中で見た光輝が目を覚ますと、大会当日の朝を迎えた。

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