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俺は無段のかるた選手だったが、何年もクイーン候補の幼なじみとの練習に付き合ってたら、いつの間にか有段者相手に無双するどころか名人級の選手になっていた  作者: かるたー
俺は無段のかるた選手。初出場した高校選手権で無双して、無敵の現役女子高生クイーンにも勝利してしまう
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~プロローグ~ とある地方の少女の思い出とかるたをしているたったひとつの理由(前編)

 正直、あたしとかるたの出会いは最悪だった。

 始めたきっかけはパパとママに連れられた親子教室。そこでかるたの体験会があった。その講師を務めていた人がパパとママの長い付き合いの友人だった。

 パパは地元・山口県のとある大きな製鉄会社の社長をしており、その社長夫人であるママも夜まで家を空けることが多い。そういう環境のため、知り合いが運営するかるた会は子どもを預けられる環境として都合がよかったのか、こうしてなし崩し的にあたしの同意なしにいつの間にかかるたをやらされた。

 どうせなら、ダンスやアイドルのレッスンとかキラキラしたことがやりたかったけど、あたしには選択権はないようだった。これが小学校3年生ぐらいだったかな?

 ところがあたしはパパやママと違って、物覚えが悪かった。そのため、百首を覚えるのにも時間がかかり、場の50枚の札を暗記するのも最初はまったくできなかった。他の子どもたちはもちろん、下の学年にもバカにされるほど弱くて勝てなかったから、つまんなくていやだった。

 何度もパパとママにも「もうやめたい!」と泣き喚いたこともあった。正直に言うと、今でもかるた自体はそんなに好きじゃない。じゃあ、そんなあたしが今でもなんでかるたを続けてるのか。

 運命の出会いを果たしたのは小4の時に出た小・中学生大会。会場が滋賀県だからという理由でパパとママが大阪のUCJに連れて行ってくれるっていうから出場した。

 この頃にはようやく百首覚えたけど、決まり字もまだうろ覚え。ただ、一部の覚えた札だけは異様に速くて、それだけは得意だった。今もお世話になってる元クイーンのみっちゃんこと今原美都子さんにはその速さをとても褒められてた。

 かるたは好きじゃないけど、やめたいと思うほど嫌いではなくなっていた時期だった。そして、その時に1回戦で当たった相手が当時、天才小学生と言われていた四条くんだった。


――しじょうみつき


 この世代の小学生でこの名前を知らない人はいなかったと思う。特に将来、名人・クイーンを目指す子どもたちにとっては避けて通れないような存在。

 ただ、打倒・四条くんなんて目標を持つことが憚られるぐらい、四条くんの当時の強さは抜けていた。小学2年生以下以外は学年別にエントリーするこの大会で四条くんが同じ学年にいるのは他の子どもたちにとっては今、思うと絶望でしかない。極端な話、顔どころか名前を見るだけでもいやという人もいたらしい。

 でも、普段から負けっぱなしのあたしは四条くんと当たっても「どうせ、負けるし」と投げやりだったのでみんなが思う絶望感はなかった。希望もなかったけど。

 というか、その時は早く負けてUCJに遊びに行くことしか考えてなかった。

 そして、四条くんとの試合が始まる。その時、あたしは不思議な感覚に包まれた。

 もちろん、予想通り、四条くんが圧倒的な強さをあたしに対しても容赦なく見せる。でも、その1枚、1枚の取りが本当に綺麗で、札を取るだけじゃなく、空札に全く反応しない仕草、空札を回避する払いも含めて、強さだけでなく、とにかく所作が華麗で小学生離れしていた。


(すごい…………!!)


 あたしは試合をしながら、四条くんの取りを見て感嘆するしかなかった。それでいて、とても楽しそうに生き生きと取ってる。

 思わず、あたしの目には彼の右手には翼が生えて、羽根が舞い散るかのようにキラキラして見えた。

 あたしは不格好ながらもそのキラキラした右手を追うようにいつの間にか札を一生懸命に追っていた。初めて試合に集中したかもしれない。


「いにしえの~」


 パアンッ!!

 あたしは当時の小さな体と右手を懸命に伸ばして、四条くんの左下段にある「いに」の札を払い取った。自分でもこんな会心の取りは初めてといってもいい札だった。


「やった!!」


 たったの1枚を取って、あたしは思わず叫んだ。すると、四条くんは感心したような様子で、


「うわぁ、やられたー! あれ、どうやったら取れるんだろ……」


 なんて、ぶつぶつ言っていた。普段の練習でも同学年や下の学年の子たちからもバカにされたり、舐めプされたり、甘く見られてるあたしに対しても本気で相手してくれてる。

 それがうれしかった。

 この後、結局、1枚も取れなかったし、お手付きもあって25枚差であたしは敗れた。でも、自分なりに四条くんの取りに向かっていった試合はかるたをやってて初めて楽しいと思えた瞬間だった。

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