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真のA級昇級へ、光輝の京都大会奮闘記①

 この日の試合会場は京都府宇治市の黄檗駅からほど近いお寺の修道場だ。その最寄り駅に降り立った光輝(みつき)結姫(ゆき)


「なんで、ゆき(ねえ)も来てるんだよ。ゆき(ねえ)は明日だろ?」


 この日の大会参加は光輝のみ。以前はA級からE級まで1日でやっていたが、昨今の競技者増加に伴って、今では日程を分けて行うところが多い。この京都宇治大会も土曜はB級、日曜がA級と分かれている。本来なら、結姫は来る必要がない日である。


「なんでって、初めて公認大会に出場するみーくんの付き添いに決まってるじゃない。いろいろ知らないみーくんにお姉ちゃんがなんでも教えてあげようってわけだよ」


 お姉ちゃん風を吹かしながら結姫は駅の改札を出て、南口と書かれた方向へずかずかと歩いていく。その姿を見つつ、光輝は改札を出たところで足を止める。


「そう言ってるところ悪いけど、ゆき姉」


「なーに?」


「会場、あっちだぞ」


 と、スマホの地図アプリに書かれたルート案内と北口の方を指して言うと、光輝はだまって一人で歩き出す。


「は、はい……」


 光輝を気持ちよくエスコートしようとしたものの、自分が方向音痴だったのを忘れて、気持ちが空回りしてしまう。結姫は意気消沈して、光輝の後を追っていった。

 光輝が地図通りに進むと、会場である研修道場と書かれた施設に到着。中に入ると、主催の京都嵐山会の人だろうか。運営の人が忙しなく動き、大会参加者がすでにジャージに着替えてたりと、結姫にとっては見慣れた光景だが、光輝はなにか懐かしさを覚えた。

 やはり、この前の総文祭の選考会とは規模が違う。さすがに高校生、大学生などの学生が多いが、小学生から社会人まで老若男女が参加している。ここにいる全員がA級昇級、優勝を目指す。そして、その資格があるのだ。

 同じ出場級ならば、性別年齢問わず、対等に勝負する。これぞ、競技かるたという世界だ。そして、二人は受付に行く。


「あ、若林さん、おはようございます」


「おはようございます……って、結姫ちゃん!? なんで? 今日、A級じゃないわよ。もしかして、日程、間違えた?」


「いやいや、今日は彼の付き添いで……」


 どうも、大学生と思しき、受付の女性は結姫の知り合いのようだ。結姫はそんな彼女の質問に苦笑いで答える。

 あぁ、やっぱりゆき姉って同年代にはドジっ子ってキャラで通ってるんだなぁと光輝は残念なものを見る目で二人のやり取りを見た。


「で、その彼の所属会と名前、出場級は?」


 気を取り直して、受付の若林が隣にいた光輝に尋ねる。


「あ、名前は四条光輝。光に輝くって書いてみつきです。B級で所属会はえーっと…………大阪明星会でいいんだよな?」


 と、光輝は結姫に確認するように言う。


「うん、そうだよ」


 若林が光輝の名前と所属会を聞いて、参加者のリストを確認する。「あった」とチェックを入れる。ちなみに参加費は前納制なのですでに支払っている。


「というか、なんで自分の所属会疑問形なのよ」


「いやー、ちょっと、彼、こういう大会出るの初めてだからね」


「いやいやいや! 初めて出るのにB級の大会ってどういうことよ?」


「まあ、ちょっと、かくかくしかじかでここで説明するのもね……ただ、会長のお墨付きだし、実力も私が保証するわ」


「おい、ゆき姉、プレッシャーかけること言うな」


「本当のことじゃない。いつも、私のこと、めちゃくちゃにしてるくせに!」


 と、結姫は自分の体を抱くように口にした。


「いぃ!? 結姫ちゃんと彼って、そういう関係なの?」


「おい、誤解を招く表現をするなよ」


 光輝が軽く注意すると、結姫が「てへ」と笑って誤魔化す。まだ、少女のあどけなさも残す結姫だが、光輝とのやり取りは同年代のそれと変わらない。


「たまにかるたで練習付き合ってもらってるだけですよ。その時に俺が束負けしたり、運命戦や僅差で勝ったりとかいろいろあって、対戦成績が乱れがちなんですよ」


「あー、かるたの話か。清楚でかわいい顔して、やることやってるなーとか思ってたけど、なんか、それも結姫ちゃんらしいわね」


 若林がそう言うと、彼女から参加賞を受け取り、光輝と結姫は選手控室へと移動する。そして、先ほどは恋人というよりは姉弟のような会話だなと気にも留めなかったが、その中にぶっ飛んだ事案があったのを思い返す。


「は? 結姫ちゃんに僅差で勝ち?」


 本日の受付を行った京都市立大学かるた会所属の若林菜々四段、出場級はA級。これまで、花山結姫とは公認大会、大学連盟で行う合宿などの練習を含めての戦績は3戦3敗。すべてが10枚差以上の束負けである。

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